7 問題児①
「お前たち三人に任務を言い渡す」
誤認逮捕から数日後、店を見ていたら突然六波羅探題の上司のもとへワープした。三人と言われて周りを見ると、見覚えのある女性と見覚えのない男性がいた。
「御破さん、ですか?」
「ええ。ですがごめんなさい。あなたのことを知りませんの。会ったことはありまして?」
「いいえ、この前ベストオブヨシツネを見たので……」
「あら、そうでしたの」
映像で見たときと同じような口調だった。今のところ、普通に良い人そう。
「私語を慎め。お前ら問題児をあいうえおかきの身にもなれ」
御破さん、問題児だった……! 私の問題児扱いは多分誤認逮捕時の一連の流れだと思う。だから決して、普段の行いが悪いわけではないはず……。
「今回は潜入調査だ。くれぐれも勝手な行動はしないように」
彼はおそらく私に釘を刺すと地図をあいうえおかきさんに渡し、奥へ消えていった。
「ご存知かもしれませんが、改めて自己紹介を」
「喧嘩なら買うぞ」
「売っていないものを買わないでくださいまし。私は御破。武器は刀ですけれど、素手でも戦える方だと思っております」
「俺はあいうえおかき。普通に剣士だ。長いからおかきと呼んでくれ」
「通称くけこですわ」
「黙れ通称お嬢」
二人は元から知り合いなのだろう、煽り合いに躊躇がない。
「私は夜霧、薙刀使いです。よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」
「よろしく。さて、さっさとやるぞ。ここが今回のターゲットだ」
おかきさんは机の上に地図を広げ、ターゲットの場所な赤い丸を書いた。そこは京都の中心から離れていて、悪巧みにうってつけに見える。
「貴族ではなさそうですわ」
「だな。武士でこの屋敷の規模は強行突破は無理そうだ」
「潜入調査は苦手なのですが……」
おかきさんは御破さんを鼻で笑うと「指示にさえ従えば問題ない」と言った。問題児と呼ばれた私たちを率いるように言われていたから、六波羅探題になってから長いのだろう。心強い。
「ところで、何で問題児認定されたんだ? ただ特殊ルートを進むだけじゃそうはならないはずだ」
特殊ルートというのは入る時の試験で最高評価を出すと入る上司に嫌われ難しい任務を押し付けられるルート――つまり私が進んだものだ。ちなみに血塗れ事件の依頼は偵察して帰ってくるだけでもクリアだったらしい。おそらくそちらが正規ルートだろう。
「私は逮捕されてしまって……」
「気に食わない髭面をぶん殴りましたわ!」
「潜入任務に適してないやらかしだな!? 嫌がらせだな!? せめて殲滅任務とかにしてくれ!」
おかきさんは私たちの行いを聞き、頭を抱えてしまった。御破さんは強いし、私も戦いには自信がある方だから殲滅ならむしろ得意そうなチームだなとぼんやりと思った。




