25 町歩き③
なぜかモブ太にストーカーされているため、いっそのこと向こうを利用することにした。
「いくつか聞いても良いですか?」
「へへっ姐さんの頼みなら」
「先ほど早く取らないからと言ってましたが、どういうことですか?」
「殺した相手のドロップはソイツが死んでから一分間は殺した奴に優先権が与えられるんスよ。だからオレはその仕様を利用してコソ泥をしてるっス」
「大切そうな情報なのに攻略サイトに載ってなかったなあ……」
仕立屋の話よりも優先すべきように思えるけど。そう疑問に思っていると、「すぐに回収しろとは書いてあったはずっスから自分で気づけって言いたいんだと思うっス。後はライバル増加を防ぎたい勢力が消している……なんて噂もあるっス」と教えてくれた。疑いを込めつつ彼を見ると、「俺じゃないっス」と首を勢いよく振った。
「Asahiが極悪非道な理由も知りたいです。彼は戦闘狂な一面もありますが親切な人ですよ」
「親切……? はっ善に目覚めたという噂は本当……いや、元寇ではいつも通りだったな……っスね」
彼は「一つに絞れないっス」と頭を悩ませていた。
「大雑把に言えば人の不幸を喜ぶところ……くらいは普通として、このゲームではAsahiに関係する祭り――レイドとかイベントが何回か起きているっていうのもあるっス」
「レイド?」
「大人数で強力なボスを倒す……みたいな? 感じっス」
「Asahi、強かったなあ……」
私が思い出しながら言うと、「あんたはそれに勝ったよな?」という目で見られたような気がする。勝てたからといって私が彼よりも強いとは限らないのである。最初の時は私の実力を測っていたような気がするし、その後絡んでくる時も本気でやっていないように感じているし……。本気っぽかったのは元寇の時だけだったような気がする。もちろん、他の時も手を抜いているって訳ではなさそうだけど……。
「目立っているプレイヤーの宿命っス。姐さんも噂が流れる程度には有名っスから、変なことをしたら変な二つ名をつけられちゃうっス」
「有名? 私が……?」
それはないと否定したら、先ほど以上に強く否定された。そこそこ強いプレイヤーだと認識されているって解釈で良いのかな? Asahiとの決闘には観客がかなり居たから。
雑談しつつ歩いているとまた仕立屋の子を見つけた。今度は屋根の上に何かが乗ってしまったらしく、必死に手を伸ばしていた。
「姐さん、ここは男キャラの俺が――」
壁を蹴って屋根の上に乗り、物を取って彼女に渡す。モブ太が何か言っていたような気がしたけれど、もう一回言わないってことは重要じゃないだろうからいいか。




