12 遠駆け②
弓使いの首はあっさりと取れた。持ち帰っても仕方がないためそこら辺に置いておき、ケインの方へ向かいながら索敵する。何人かの矢の刺さった死体が転がっていた。それらは全てプレイヤーのようだったが、この人たちもこの弓使いの襲われたのかもしれない。私はたまたま気が付けたが、そうでなければここに転がっているプレイヤーたちのようになっていただろう。
「急に馬から飛び降りるのはやめてください」
ケインが迎えにきて、子供を叱るように私に言った。
「……すみません。ケインなら問題ないと思いましたが、事前の相談があった方が良かったですね」
「ゲームの腕を買われているのは嬉しいんですけど、急にデレるのやめてもらって良いですか? ……行きますよ」
彼に手を貸してもらい、先ほどと同じように馬に乗った。今度は周囲を警戒しつつ。
「しりとり、りんご」
「ご……碁石」
「死神」
「み、みかん……ジュース」
「す……雀」
「メイス」
「す、スイーツ!」
「つ……衝立」
「手土産」
「……って待って。なんでいるの? Asahiさん」
警戒していたのに、しりとりに混ざってくるまで気が付けなかった。初めて会った時のことといい、Asahiさんはやはりステルス能力が高い。
「僕も呼び捨てで良いよ、夜霧。フレンドなんだからさ?」
「えっと、Asahiはなぜここに? あなたはワープできるでしょう?」
「元寇へ向かうならここを通ると思ったから……君を追いかけて来ちゃった⭐︎」
「ストーカーだろ……」
ケインは呆れたように、Asahiさんにも聞こえるように呟いた後、「離れるぞ」と私に耳打ちし、速度を上げる。背に腹は変えられないため彼にしがみつく。
「先輩から、いくつか豆知識を教えてよう」
Asahiさんは私の顔が見える位置で並走しながら言う。
「一つ、馬には個体差がある。二つ、二人乗りをすると速度が下がる。ちなみに体重の関係で二人乗りをするなら女性二人乗りが一番早い。三つ、武器を持つと最大スピードが下がる。正確には、手綱から手を離すとだけど」
彼女は手綱から両手を離し、抜刀した。よく足だけで馬を操れるなと感心してしまう。
「約束通り奇襲しに来たよ。正面から奇襲って変な話だけどね」
彼女の攻撃をなんとか受け止めるが、馬にかなりの負担をかけそうだ。
「彼から距離を取るように動いてもらいませんか?」
「えっ? ああ、分かりました」
私たちが距離を取ろうとすると、Asahiは馬の腹を軽く蹴って飛んできた。




