11 遠駆け①
週末ログインすると、町の雰囲気が違った。町全体から緊張感のようなものを感じる。何かあるのかと思って確認すると元寇イベントの日だったようだ。
「あの、元寇ってどうやって参加するんですか?」
「メニューからワープ」
「ありがとうございます!」
ちょうどログインしてきたプレイヤーに聞く。早速メニューを開くがワープできる場所が鎌倉しかない。オフライン版と同じなら……一度行かないとワープできない? 元寇だから開催場所は九州。九州まで自力で……? 鎌倉から……?
馬を借りてとにかく走らせるしかないか。オフライン版でも使ったことがあるから操作は問題ないが……。オンライン版でも馬を休ませないといけないなら金銭的にも時間的にもかなり厳しくなるが、どうだ……?
「あの! 元寇イベってどうやって参加するんですか?」
腰の刀に手を置きながら緑髪の男性が聞いてきた。警戒心を持つことは良い事だと思う。見覚えがあるな、この前モブ男に狩られていた初心者くんか。
「……ケインさんも初心者ですか?」
「はいっ! ケインで良いですよ、夜霧さん」
「私も呼び捨てで良いですよ。一緒に行きますか?」
先ほど聞いた説明を彼にもする。彼は「運営は不親切ですね!」と頬を膨らませた。
彼も私と同じようにオフライン版からこのゲームに入ったらしく、馬の操作には慣れていた。私は主に歩兵としてプレイしていたが、彼は騎馬としてプレイすることが多かったらしく、私を後ろに乗せていても難なく馬を操っていた。
「その体勢、辛くないですか?」
「大丈夫です、意外と安定しています」
横向きに座る私を心配してケインが声をかけた。もちろん多少の不安定さはあるが、馬に跨いで乗るとケインに抱き付く形になってしまうため、この座り方しかできなかった。そのことを彼に言ってしまうと彼も変に意識するようになっていまいそうなため黙っている。
「馬に体力ゲージがないようなので、三十分もすれば着きそうです」
「現実と比べると早いですけど……移動として三十分……」
「長いですよねー。しりとりでもします?」
しりとりなんて久しぶりだと思いつつ「良いですよ」と言おうとしたその時、殺気を感じた。咄嗟に避けたが頬に痛みが走った。触ってみると手が赤く染まった。弓使いが近くにいるようだ。
「どうしたんですか?」
「敵襲です。イベントだからと油断しました」
ケインの肩を借りて立ち上がる。
「よ、夜霧!? 危ないっすよ!?」
「……見つけた」
馬から飛び降り、そのまま敵の方へ走った。苛立ちをぶつけるかのように、弓使いの首を狙う。




