10 祭り……?
「モブ男さん、誰待ちですか?」
不意打ち闇討ちリスポーン狩りは日常だと学んだため、路地に身を隠しているプレイヤーがいても驚かなくなった。私はやらないが。
「うわああ!? よ、夜霧! 驚かせんなよ、ったく」
声をかけると彼は飛び上がって驚いた。ひとしきり驚いたあと、「これから祭りが始まるんだ、静かにしていてくれ」と言った。
「祭り? 何かのイベントですか?」
「んー。プレイヤー主催のイベント、みたいな?」
「聞いたことはないですね。いつからですか?」
「おそらく、今日か来週の六時……いや六時半からだろう」
イベントにしては時間が曖昧だなと思っていた時、目の前にプレイヤーが現れた。名前はケインさん。見たことも聞いたこともない。隙だらけの動きからして始めたてだろう。あれではこの世界を生きていけない。私もああやって見えていたから襲われたのだと考えていると、モブ男がどこかに行っていた。
「死ねい!」
「え? うわああああ!」
気がつくと彼は初心者を瞬殺して、すっきりした顔でこちらに戻ってきた。
「な?」
「な? じゃないですよ、何やっているんですか。私にもして……まさかいつもやっているんですか?」
「俺は平等主義者なんだ」
「嫌な平等主義ですね……」
「普通だろ」
「ええ……。ん? 祭りって……?」
嫌な予感が当たってしまった。初心者狩りのことを彼らは「祭り」と表現していたのか……。
「いいや、ただの祭りじゃねえ。この前、Harutoっていうプロゲーマーがこのゲームを遊んでいたんだよ。そいつは家にあるゲームを紹介しているんだが、かなり人気だから騙された哀れな視聴者が来るはずだ。いつも金曜の六時に投稿しているからそろそろかと思ってな」
「酷い……」
「半年前もあったから今回も来るかは怪しいけどな」
その事件はHaruto事件としてかまくらいふのプレイヤーに語り継がれているらしい。Harutoさん、とばっちりを受けていてかわいそう。……と思ったが、持っているということは彼もこのゲームをやっている。完全なとばっちりという訳ではないかもしれない。
結局、今日の動画はこのゲームじゃなかったようで哀れな初心者は増産されることはなかった。ちなみに、モブ男に狩られた彼は三日後にはこのゲームに馴染み、逆にモブ男を始めとした先輩プレイヤーを狩るまでに成長していた。恐るべし、順応力。




