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第102話 フルコンボだどん!

 フランスは、急いで天幕にもどった。


 落ち着くのよ。

 お股が、腫れているだけよ。


 やだあ。

 なぜ、なぜ。


 何かに刺されて、腫れているとか?


 とりあえず、様子を確認しないと。


 フランスは、そおっと股を見下ろした。絶対、腫れている。間違いなく、腫れている。


 ぱつぱつだもの。


 ズボンの生地が硬いのに、突き破らんとする勢いでぱつぱつしている。


 どうしよう!

 こわい!


 こんなに腫れて!


 あら、でも……、痛くはないわね。


 え、もはや感覚もなくなるほど、悪くなっているということ?


 こわい、こわい!


 フランスは、感覚があるか確かめようと、おそるおそる人差し指で、ふくらみを押した。



 イヤーッ‼



 ……‼



 どうしよう!

 腫れているどころじゃないかもしれない!


 硬い‼


 こんなに硬くなることある⁉

 人の身体が‼


 えっ、とんでもない病気か何かかもしれない。



 爆発したらどうしよう‼



 フランスは、股から目を離し、大きく息を吸って、なんとか心を落ち着けようと頑張った。


 とりあえず、これは……、急いで陛下のところに行くのよ。聖女の癒しの力を使えば、治るかもしれない。


 フランスは急いでマントを全身にまきつけ、執務室に向かって走った。


 ちょうど、イギリスが朝の支度を終えたのか、執務室に入るところだった。アミアンは執務室の前でイギリスと別れて、食堂の方へ歩いてゆく。


 フランスは、アミアンの背を見送り、執務室に飛び込んだ。


 ノックもなしに勢いよく飛び込んだからか、イギリスが目を見開いて、フランスを見た。


 すぐに、彼が怪訝な顔をして言う。


「どういう恰好なんだ、それは」


 フランスは、眠る蝙蝠よろしくマントを巻きつけたまま、聖女の姿をしたイギリスに近づいた。


 フランスは、必死で言った。


「陛下、癒しの力を使ってください。今すぐ」


 イギリスがさらに、眉間に皺をよせて、怪訝な表情を深める。


「なぜだ」


「このままじゃ、股が爆発します!」


 イギリスが、ぽかんとした顔をした。


 彼は、ぽかんとしたまま、言う。


「股が爆発?」


 フランスは、もう、泣きそうになって言った。


「わたし、何か、良くないものに刺されたりしたのかもしれません。痛みも感じないんです。すっごく腫れてて、硬くて、もうすぐに爆発してもおかしくないくらい大きくなってるんです。股のあの子が!」


 イギリスが、なぜか、ぽかんとした顔のまま、かたまった。


 えっ。なになに。

 どういう反応なの。


 もしかして——。



 もしかして、もう、終わりってこと?



 お股、終わりってこと⁉


 フランスはさらに怖くなって、すがるようにして叫んだ。


「今すぐ癒してください‼ 爆発する前に‼」


 ぽかんとしていたイギリスが、今、この世に戻ってきました、というようにひとつぶるりとやった。そして、おそれるように言う。


「と、とりあえず、そのマントをどけてみろ」


 フランスはそっと、股を刺激しないように、本当にそうっと、マントをひらいた。


 イギリスがそれを見て、片手で顔を隠した。


 もうだめだ、みたいな仕草に見えた。


 やだあ、こわいい。


 フランスは、怖すぎて叫びもできず、小さい声で言った。大きな声を出したら、爆発しちゃうかもしれない。


「陛下、お願いだから、はやく癒してください。爆発しそうでこわいんですから」


 じわっと涙まで出てくる。


 イギリスは、顔をかくしたままこちらを見ない。


 フランスは、もう動いたら爆発するかもしれないという恐怖で、じっと待った。



 顔をかくしたイギリスから小さく耐えるように「くっ」という声が聞こえた。



 え、こわい、こわい。

 どういう反応なのよ‼


 よく見ると、イギリスの肩がふるえている。


 え、泣いてる?

 何、どういうこと?


 フランスは近寄って、イギリスの顔を覗き込んだ。


 口もとが……。


 笑っている。



 ……。



 え?

 笑ってるの?


 フランスは急に、冷静になった。


 これって、笑えるやつだったの?


 フランスは、確かめるように、イギリスにむかって言った。


「これ、爆発しないんですか?」


 フランスがそう言った瞬間、イギリスが耐えられない、という風に吹き出した。


 フランスは思わず、むっとして、近寄って言った。


「陛下……。爆発しないんですね」


 フランスが近づくと、イギリスが距離をとるようにして離れて、思いっきり笑った。壁に手をついて、反対の手で腹をおさえて、大きく口をあけて笑う。


 はじめて見た。

 思いっきり笑うところ。


 貴重なものを見た気がして、ちょっと嬉しくなりそうになったところで、はっとする。


 ちがーーーう‼

 今はそんなことよりも‼


 フランスは、ありったけの不満をこめて言った。


「ひどい! 本当に爆発するかと思って、こわかったんですからね!」


 イギリスが、やめろ、と言うように手をふった。

 どうやら笑いすぎて喋れないらしい。


 なによ、『爆発する』がそんなにツボなわけ!


 こっちは、死ぬほど、怖かったのに!


 フランスがじとっと睨むと、イギリスが深呼吸をして笑いをおさめ、言った。


「わるかった。爆発するが、面白過ぎた」


「そうですか」


 フランスはむくれた。


 むくれたまま、股を指さして言った。


「じゃあ、これは一体、どういう状態なんです?」


 イギリスが急に無表情になる。


「……」


「……」


 ん?


 え?


 やっぱり、こわいヤツなの?


 フランスが、また不安になっていると、イギリスが何度か、何か言おうとしてから口を閉じるをくりかえした。


 彼は、しばらくして、ようやっと言う。


「放っておけば、そのうちおさまる」


「えっ……、放っておけばおさまる? 一時的な腫れなんです?」


「まあ、そうだ」


「ふうん。これってどういう状態なんですか?」


「……」


 フランスがじーっとイギリスを見つめると、イギリスがため息をついて言った。


「それは……、男女がそういうことをするために、そうなるんだ」


 ふわあっとしている。

 ふわあっとしているけれど……、理解したわ。


 そういうことね!

 男女の営みよ!


 昨日の癒しの力で感じた光は、これだったのね。




 陛下の性欲が復活してる‼





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