第二十六話 『 落とした記憶 』
三日後……
今は使われていない廃工場より謎の暗殺組織〝博打組〟に追撃されたプレイヤー達。その中の一人、舞園創もまた、その被害者の一人になっていた。博打組の幹部の一人のトランプによる仕掛け球によって気絶してしまった創を最終的に回収したのは黒のスーツを着た男4名。
三日の時間が流れた。舞台は創の夢の世界より始まる。
異空間で眠っていた創は夢の世界で目を覚ました。本人の表情からして『またか』と言ったところ。周りは無の世界であろうか、創の周りに広がるのは空虚の世界。そこに一つの明かりが灯る。導かれるかのようにその明かりを目指して歩く創。
その明かりの先に見えた景色は何処かの病院であろうか。目の前に患者と思われる人物と医者が数名立っている。どう見ても何かの手術を行っている。
此処は創の夢の世界。彼の記憶の中に残る場所なのであろうか。手術をしている医者の様子を見ながら『早く目覚めろよ』と念じていた。
手術中の患者の男が、医者の傍に立っている助手の女の人に何か呟いているみたいだ。その会話が気になった創は耳をすまして聞いてみる。以下手術中の患者と助手の女の会話。
「ね、ねぇ【横峯】さん。この手術が終わったら僕は解放されるんだよね?――本当にこれで最後なんだよね?」
「シーー。手術中よ」
「――分かってる。ただ少し不安なんだ」
「無理しないで睡眠薬で眠っていたらどう?」
「それだけはやめて」
「なら手術が終わるまで静かにしていなさい」
人差し指を立ててから口に当て、手術中の患者の男に『静かにしろ』とサインを送っている。それを見ていた創の様子が変わる。
「あの女……」
寒気がしてから頭の中が恐怖に巻き付かれてしまう。それから小刻みに震えだす。創の脳裏に浮かぶ最悪の夢。思い出すべきでは無い現実。創は思わず手術中の患者の顔を確認してみる!
「あああ……」
患者の正体を知り、発狂する創。そして思い出してしまう謎のオンナとの接点。手術を受けている患者の正体は〝舞園創〟本人であるからだ!――彼は希望ヶ丘学園に入学する前に謎のオンナと接触していた。目の前に広がるこの手術も彼が過去に経験した真実の世界だった。
手術中の彼は、睡眠薬を拒んだせいか、助手の女によく話し掛けていた。その度に『静かにしろ』と注意されてきた。彼女の名前は【横峯悪魔】。
彼の落とした記憶の断片が見つかった瞬間だった。かけらの一つ一つを広い集める。まるでパズルをしているような感覚。一つ、また一つと記憶のピースが繋がっていく。やがてそれは一つの景色として広がり、記憶の引き出しから引っ張り出す感覚。
ピースが合わさる度に発狂し続ける舞園創。
そこで夢の世界は崩壊を始める。誰かが現実の世界で彼を起こそうと呼び掛けているからだ。恐らく創は、意識の無いまま叫んでしまっているのだろう。
「――君!?――ま――君――まい――君――舞園君――舞園君!!」
目を覚ました創。
「うわあ!」
彼の息は荒く、着ているTシャツは汗でビショビショになっていた。目の前に立っている知らない女。彼女が創を起こしてくれたのだろうか。
「気が付いた!」
女の子は慌てて創の寝ていた個室を飛び出して、ダレかを呼んでいた。
「此処は……何処だ……」
部屋を見回す創。その部屋にはずっしりと本が並んだ棚と、パソコンがあるデスク。創のすぐ横にはフランスパンとイチゴジャム、牛乳が置いてあった。とそこへ、先ほどの女の子が男を連れ部屋に戻る。
「目が覚めたか」
「え……」
「おい凛。フランスパンは固くて食べにくい。コーンフレークを作って持って来てくれ。時間を掛けたふやけた奴でな」
「えー!――何で私が作らないといけないのー!」
「早く作りなさい」
「はーい……」
部屋にあった椅子に座る男。
「あ、あの……」
「聞きたい事は山ほどあるだろう」
「はい。あ、あなたは?」
「俺の名前は堂島和雄。君は舞園創君だね?」
「僕の事を知ってるんですか!?」
「君の身元は君を保護してから調べさせて貰った」
「保護ですか……えっと」
「君が倒れる前のお話を聞きたい。どうかな、君は気絶する前の出来事を覚えているかい?」
「――えっと」
フラッシュバック
――――――――――――――――――――――――――――――
気絶前の出来事を振り返る
1「悪いが訳あって堂島は電話に出れない。青田向日葵さん?」
「――え、あ、はい」
「申し訳無いが後でニ、三お話を伺いたいので折り返しても良いですか?」
2「やりやしたよ旦那!――例の男を含めた3人の捕獲に成功しやした!――はい、はい。ええそうです――キヒヒヒ――はい、有難う御座いやす。此処で待機してれば良いんすね?」
3少しの沈黙が続く。と、次の瞬間!――ぱっと目を開いた創がトランプの腕を掴む!――最後の力を振り絞る創!
4「でも今はあの車に賭けるしか無い……はあはあ」
創の前に停まる白の車。
フラッシュバック終了
――――――――――――――――――――――――――――――
大まかな出来事の内容を話してみる創。それを静かに聞いている和雄。以下創と堂島和雄の会話。
「なるほど。どうやら君は記憶を落とさずに済んだらしいな」
「記憶を落とす?」
「ああ。君ならピンときてしまうキーワードじゃ無いか」
「記憶喪失ですか……」
「記憶喪失では無い。記憶を落とされるんだ」
「落とされる。それって……〝僕達〟を襲ったトランプとか言う男の仕業でしょうか?」
「…………」
「僕達……あれ僕達?――しまった!――堂島さん!――電話をお借りします!」
慌てて起き上がった創は、電話を借りるよう頼む。
「どうした?」
「僕の他に襲われた人が居ます!――彼らはまだあの工場で眠っている筈!――早く警察を呼ばないと!」
「ちょっと待て。君が気絶してから既に三日経っている」
「三日!?――だったら尚更警察に事情を話さないと大変な事になる!」
「まあ待て舞園君。その工場での事情は知らないが、事件全体の事情について、俺はどのプレイヤーよりも詳しい」
「プレイヤー?」
「君を襲った組織についてもある程度の調べはついている。トランプという博打組の幹部の存在も分かっている」
「だったら協力してくれよ!」
「だからこそ警察を宛てにするのは避けたい」
「え?」
「良いかよく聞け。奴ら博打組の歴史の背景には、ある人物と非常に根深く絡んでいる。ある人物とは警察の権力さえも止めてしまう程恐れられ、名のある暴力団らを束ねる本当の意味での闇社会のトップの人物。そいつがレデと言う裏の事情を細かく操作する事が出来る巨大組織を仲介役に置いて、博打組を中心に頭の計画へ招いた。つまり、お前の知るトランプと言う人物は、その闇の頭に雇われただけの暗殺組織となる。この先は何が言いたいのか分かるな?」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!――え何。え闇社会?――え暗殺組織?――」
「つまり……警察に通報するという事は、敵に自分達の居場所を教えてしまう結果になるのだと言う訳だ」
「――っ!!」
そこで凛と呼ばれる女の子がコーンフレークを部屋に持って来る。
「まあ食え」
「…………」
堂島和雄の話は続く。彼の話をまとめてみる。内容は以下の通り。
創達を襲った犯人はトランプを始めとした博打組と呼ばれる暗殺集団。その組織には5人の幹部が居て、その中の一人がトランプ。幹部達のギャンブルコードネームは〝トランプ〟〝スロット〟〝ダイス〟〝ルーレット〟そして〝ディーラー〟。4人の幹部が4つの組織に分かれた博打組を束ね、それらの総司令機関がディーラーと呼ばれる人物を中心とした博打組内トップの組織。
その博打組がレデと呼ばれる闇組織と裏の取引をしているとの事。レデの目的はあくまで取引を成功させる事。そして、博打組の取引相手は、創の通う希望ヶ丘学園だと言うのだ。
二つの繋がりについては不明だが、ここで一人の名が浮かんでくる。博打組の他、警察さえも束ねる闇のトップと言われるその人物の存在。以下和雄の台詞。
「裏社会で好き勝手して博打組を操っている黒幕の通り名を、裏をよく知る人物は皆【ドン釈】と呼んでいる」
「ど……ドン釈」
ここで初めて聞かされる事になる黒幕の通り名。その規模。創が首を突っ込もうとした事件の裏に潜む巨大な敵の存在。
以下和雄の話を元にまとめた簡単な人物らの繋がりを図にしたもの。
「じゃあ……堂島快跳も奴らに殺されたって言うのか……」
「ん!?」
「ん?」
「おい……」
息子の堂島快跳が殺された事を知らない堂島和雄。堂島快跳の父親が堂島和雄である事を知らない舞園創。
絡み合う組織とプレイヤー達!
※後書き
挿絵を読み込めない方はいらっしゃいませんか?




