めんどくさがり女
超だるい。
なんでわざわざ学校に来てまで祭りなんかしなきゃいけんの?
ネットに繋げば毎日やってるつーのに。大体祭主で。
「うわぁ……駒威芭さん、化粧いらないよ」
干物ってるから? 別にいいけど。陰口って陰で叩くもんじゃねーの? 別にいいけど。最近の流行りだと思うから、干物って。一人っ子だけどね。
あたしのクラスは文化祭で和風喫茶をやるらしい。らしいって言うのはよく聞いてなかったからってだけなんだけどね。
文化祭前に頑張って採寸して手縫いで仕上げてくれた女子メートに悪いから、文化祭は参加したんだが……少しばかりやまったかも?
採寸する時に黄色い声が上がったりメジャーを持つ女子メートの鼻息が荒かったりやたらと肌を触ってきたり、極めつけにメイクするから目を瞑るように言われたけど茶目っ気で薄目を開いたらキス顔してたり。
百合百合してるわ、百合百合してるのよ? 百合とかマジ勘弁。
勿論メイクは断ってメイク係りは縛った。
開催二分で帰りたくなったわ。初日のブーメンとかいうバンドに爆笑したのがマズかった。転げ回ったわ。もしかして他にも掘り出し物があるかと思ってしまった。
速攻で動画掲示板にウプっててワロタ。
初日に店番がないから、同じく店番がないウドと一緒に見て回ったが、ブーメン以上は無かったなぁ〜。ブーメンメンバーのクラスを通りかかった時、シャツにサイン貰おうと脱ぎ始めたらウドに慌てて止められた。
どこぞの団長じゃないんだからTシャツ姿になるだけだっつの。純情か。
途中でノーブラに気付いてセーフ判定だったが。
流石に初日ブラブラして二日目出ないなんて無茶するほど、面の皮厚いわけじゃないんで登校したけどね。
女子メートを荒縄で亀甲縛りしてる途中で後悔したよ。芸術的出来だからクラスメートに公開したら女子メートたちが慌てて男子の目を潰してた。目があ、目があ〜、だって。ウケる。
隔離措置の大義の下に廊下に出て客引き係りをゲットした。
立ってるだけ。
こんな干物女を干してるだけで客くんのかと思ったら、意外に大入り。やっぱ女中コスが効いてるんだろうか? どんな格好と問われたら、お代官プレイと答えるが世の情けだ。
いや、もしかしたらあたしの魅力による要素も微レ存。マジ素粒子。
「らさいせー、らさいせー」
「あ、あの、ここって君も接客すんの?」
「うす。どぞー」
「お……………………あっ、ど、ども」
適当に営業スマイル交わしつつ手を振って再び客が蜘蛛の巣へ。三個八十円の団子と出涸らしでボられるがいいわ。
気分は交通整理だ。もうはよ帰りたい。
「駒威芭さん」
「おう、ウド。化粧が似合わん駒威芭とはあたしだが?」
チクりといくぜ。蜂の一刺しナメんなよ。お前は乙女心が分かってない。毎日ドカ食いしても体型維持できてしまう体が欲しいと願う乙女心が。そして、もしマジでそんな奴がいたらハブりは確定する乙女心。マジ怖い。
「……ニュアンスが。誤解してるつーか……はあ、今更か」
「らさいせー、らさいせー」
「立ちっぱなしは辛いと思って椅子持ってきたんだけど?」
「抱いて」
「極端?!」
マジかよウド。やってくれる奴だって信じてたよ。
なんでか知らんが顔が真っ赤になってるウドが差し出す椅子を受け取り座る。
ふう。良かった、これで帰りたいメーターが2パーは下がったよ。
あー、はよ帰りたい。
「らさいせー、いかあっすかー」
喧騒の中じゃ埋没してしまいそうな声をボソボソと出していると、急に辺りが静まり返り、あたしの声が響いた。
おいふざけんな。恥ずかしいじゃねーか。
「らさいせーらさいせー」
まあでも気にすんのもめんどくせえからと、ダラダラと声を響かせていたら、十戒で海を割るかのように人ゴミを割って近づいてくる人に気づいた。
それはまるで女神のような容姿をした女性。
淡く光りをはじく髪を編み込み、つぶらな瞳は誰も映すことなく輝き、端正な顔は憂いを帯びて、薄く艶やかな唇が吐き出す吐息に周りが息を止めんばかりに悶える。マジ迷惑。
「ヤガセンじゃん」
「あー、こまっち! ヒサブ〜」
「……ああ、コマ。そういえばあんた三年だったわね」
物憂げな溜め息に再び周りがフリーズ。おいおい。
「パイセン、わりぃッスけど営業妨害なんで、散って?」
「相変わらず毒ダラダラねー」
りこセンに言われたかない。
「…………なによ、邪魔しなきゃいいんでしょ? じゃあお店入るから、あんた注文取ってよ」
ふぇ〜、相変わらず。あのねー、あたしに話し掛けて営業妨害してるんじゃなく、あんたの存在で周りの足が止まるから迷惑してるんだよ公害、いや、先輩。これだから無自覚系は。
「はあ。じゃ、どぞー」
「お邪魔ー」
全くだ。
喜々として入っていくりこセンと覇気を撒き散らしながら入っていくヤガセンを溜め息と共に送り出し、ウドに客引きを代わって貰おうと声を掛ける。
「おい迂朴。勃ちっぱなしはキツいだろ? 椅子に座りなよ」
二重の意味で。
「え? あ、ちょっと?!」
おう、ちょっとだ。直ぐ戻るわ。
接客する立場なのに椅子に座らされて愚痴を延々と聞かされる店員、あたし。
「でー、プリプリしながらも学祭来たってわけー」
「へー」
「リコが行こうって言ったんじゃん」
「へー」
「あたしはもうあんま行く気ないって言ったじゃん」
「うぐっ」
「へー」
何かと思えば、男がドタキャンで音信不通のメシウマーだそうだ。異世界転移でもしたんじゃね? 頭ん中どピンクな内容に砂糖が口から量産ですよ。中世なら大金持ちですよ。
まあ正直? クラスメートからも接客優先でいいと公然サボリ免罪符を与えられたので、楽っちゃ楽なんですけどね。
注目度ぱねえ。
緑茶を音を立てて吸いながら、みたらしを頬張る。
甘味マジ神。
でもぶっちゃけ腹減ってきたからガツンと肉食いたい。魚の。
モッチャモッチャしてるあたしに先輩方の視線が集まる。なにさ?
「ぷっ、あんたほんと変わんないよね〜」
「あたしはあんたが進級したことにビックリだわ」
ヤガセンは失礼だと思う。職員室で土下座をキメたあたしに謝ってほしい。
「ねー、この後って抜けられんの? 一緒に回んない? 鼎の弟くん探したいからさー、在校生いた方が便利で」
りこセンがニヨニヨと提案してくるが……ぶっちゃけめんどい。どい。もう帰って艦娘鍛えたい。あー、でもブーメンのライブあんだよなー。別パタ見たいしなー。
…………うーん。
「とりま、終わってからなら」
あたしの返事に、今日初めて笑顔を見せたヤガセンこと女神さまに周りがざわついた。
あたしがモテないのはこいつらが悪いと思う。




