第306毛 傍ら
シ「異例、ですか。…何だか買い被り過ぎな気もしますね」
モ「いえ、勇者シゲル様と共に過ごす中で、わたしも、師匠と同じように、アナタなら真実に辿り着ける、と思っています」
シ「…真実……」
モ「もちろん、貴方様のご帰還が第一です。…ただ、その為には、セカイの『理』に触れる必要があるかと…」
シ「まぁ、今までの流れを見ると、そうですね。なかなか骨が折れそうではありますが」
モ「…勇者シゲル様」
モイスチャーはシゲルに近づき、片膝をついて頭を垂れる。
シ「!!」
モ「貴殿の力、貴殿の御魂に、最大限の敬意を評すとともに、ボタニストが一柱、モイスチャー・ミルクが、貴殿の大業とご帰還まで、この身を賭して御守りすることをここに誓います」
シ「………わかりました。よろしくお願い致します。…どうぞ、顔を上げてください」
モ「はい。ありがとうございます」
シ「…しかし、基本的には、これまで通りになりますよね」
モ「そうですね。この場の後は、肩入れを悟られないように…とは言ってもだいぶ悟られてはいますが、あからさま過ぎないように致します。お許しください」
シ「いえいえ、寧ろお気を遣わせてしまい、申し訳ありません…。お仲間のヴィオレ氏が、少し心配ではありますが…」
モ「…そうですね……。ただ、ヴィオレは芯が強い方です。きっと、不条理な事は不条理だとわかっているはずです。…何か理由があると思われます…」
シ「そうでしょうね…」
モ「巻き込んでしまい、大変恐縮ですが、どうか今後とも、よろしくお願い致します」
シ「はい。こちらこそ」
モ「では、いったん宿に戻り、エクステさんの様子を見てきます」
シ「わかりました」
踵を返したモイスチャーは、ふとシゲルへ振り返る。
モ「…勇者シゲル様」
シ「む?はい」
モ「……アナタは先程、『勇者は特性上、他者を惹きつけやすい』と仰られていましたね」
シ「はい」
モ「…確かに、特性はあるかもしれません…。ですが、アナタを慕い、アナタの側にいるものは、皆『勇者シゲル様』ではなく『シゲル様』そのものを慕っていると、思います」
シ「………」
モ「ゆ…いえ、『シゲル様』。アナタのそばに…アナタの傍らにいたいと思うヒトを、どうか大切に。…アナタが思っている以上に、アナタは、アナタには、たくさんの支えがあることを、忘れないでください」
シ「…わかりました」
モ「…では」ニコッ
笑顔を見せ、モイスチャーはその場から離れた。




