第302毛 頬
パ「…え??」
シ「…ハルト氏側の事情はわからないが、少なくとも私は、誰かを元の世界へ連れて行く気はない」
パ「それは…どうして……」
シ「…まぁ単純に、リスク…危険が高い事があるな。帰還とともに『その世界における、本来の住民ではない者を連れて行く』ことが、その者や世界へどんな影響を及ぼすのかは未知数だ」
パ「………」
シ「また、『一方通行』であることも十分考えられる。私やハルト氏がこちらへ召喚された時とは違い『一緒に行く』という目的しかないからな。つまり、私の世界へ着いた時点で、こちらへは二度と戻れなくなるかもしれない」
パ「……………」
シ「違う世界で、異なる文化や風習、人々と馴染んでいくことは、そう簡単ではない。ましてや、故郷に戻れないとなると、尚更だ。一過性の想いだけで、安易に決断すべきではない。私を含めて、な」
パ「…………………」
シャ「………」
キュ「………勇者様……」
パ「……あのね、シゲル…アタシ…アタシは…それでも」
シ「パンテーン」
パ「…」
シゲル「…君が私を慕ってくれているのは、感じている。ありがとう。…ただ、いつぞやかアーディに聴いたが、勇者は特性上、周りを『惹きつける』雰囲気があるらしい」
パ「!! …っ…シゲル…アタシは…」
シ「…君は、私に比べるとまだまだ若い。…私のような、物珍しい者に、惹かれる事もあるだろう。…ただ、視野を広げてほしい。君の事を、大切に思っているヒト達がいる。君自身も、大切にしたいと思っているヒトがいるはずだ。…その繋がりを、大事にしてほしい。…もちろん、アーディもだ」
パ「…っ……っ……」
コー「……………」
シ「……パンテーン…」
パ「わかった…」
シ「…」
パ「ごめっ……ごめんね、いきなり……。アハハ、なんかこう、突っ走っちゃって……。うん…そう…そうだよね……シゲルが正しいや……」
シ「…すまない」
パ「…ぅうん、アタシの方こそ……っ…ごめん、アタシ、先に宿に戻る…ね……」
シ「………わかった」
パンテーンがその場を走り去る。
頬から幾粒か零れ落ちているのを、シゲルは黙って見つめていた。
シ「………泣かせて、しまったな……」
シゲルが天を仰ぎながら呟く。
そこへ
近付いてくる者が1人。
モイスチャー「……勇者シゲル様」
シ「……モイスチャー氏…見ていたのですか」




