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起死回生ブレーキ! 二木粟生井鉄道  作者: 髙津 央


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50.巡回済タグ

 アパートで入浴中にダイレクトメッセージが来ていた。

 ニローからの「農園のプリンタでシールを印刷して、商品見本を作った」との旨の連絡だ。


 画像が添付されている。


 クッキーを詰めた透明袋の中央に西口が描いたヘッドマーク風のイラスト、その下に白百合農園の名と商品名と野菜のイラストが追加されていた。

 A4サイズのイラストを囲んで商品を配置し、青背景でライティングも工夫してある。このままでも、通販サイトの商品写真として通用しそうだ。


 三木は湯冷めしないよう、こたつから頭と腕だけ出して「ありがとうございます。すぐ告知します」と返信した。

 ニローは告知ツイートをプロフィールに固定表示している。ダイレクトメッセージで見た画像は添付されていない。まずそれをリツイートして様子を見た。


 ……そう言えば、クッキーは現物で確認するようにってツイートしてたよな。


 三木が、白百合農園直売所の外観写真をUPしてもいいか確認すると、すぐにニローの許可が出た。



 〈コラボクッキーのパッケージデザインが確定しました☆

  来週日曜、国包(くにかね)駅の近くの白百合農園の直売所で発売です。

  どんなクッキーかは、食べてのお楽しみ♪〉



 直売所の画像付きのツイートに次々と「いいね」が付いてリツイートされ、フォロワーやそのまたフォロワーに情報が拡散する。

 まだ熱が冷めていないことを確信し、三木は次の動きを忘れないよう、メモ帳に保存した。


 スタンプラリーの件をツイートするのは、台紙のデザインが完成してからだ。

 いつも通り、フォローやいいねにフォローを返し、拡散のお礼をツイートする。イラクティブをチェックして画像をツイートで紹介して燃料をくべる。

 イラクティブ内を「二木あおい」で検索すると、幾つかの画像に「二木あおい巡回済」のタグが付けられていた。


 ……何だこれ?


 タグをタップして作品リストを表示させると、三木がツイッターで紹介した作品ばかりだった。プロレベルも、微笑ましい作品も、閲覧数といいねの件数は、他の二木あおいイラストとは桁違いだ。


 ……ツイッターの紹介ってそんなに効果あるのか。


 今はブームで、二木あおいのアカウントがフォロワー以外からも注目されているらしい。

 珍獣を見る目でも構わない。二木あおい――ひいては、二木粟生井(にきあおい)鉄道が注目されて、少しでも旅客が増えるならそれでいい。


 フォロワーは二万人を越えたが、何でもかんでもフォローして回るフォロ爆と、業者もかなり混じっている。実際に注目してくれるフォロワーは件数通りではないが、ネット界隈に疎い本社のお偉いさん方への説得力としては、頼もしい数だ。

 この内一パーセントが乗車してくれるだけでもありがたい。


 二木は、次に紹介するイラストの閲覧数といいねの件数のスクリーンショットを撮り、「比較」フォルダを作って画像を格納した。

 今日は五件紹介する。その全てで、ツイート前の状態をスクショで残した。

 数分後、描いた本人のアカウントから喜びの@ツイートが届いた。



 〈キャー! また公式に捕捉されたー! マジすごい!〉



 西口の原画よりもずっと萌えキャラらしいイラストで、これで素人なのかと思うハイレベルな作品だ。西口は、日本画の花鳥画がメインジャンルで人間は描かず、キャラクター化も苦手だと言っていた。実際、イベント告知のポスター用に描いた花の絵はプロの画家の作品かと思う出来栄えだ。

 三木はこれまで、絵が描ける人は何でも上手に描けるものだと思っていたが、一口に「絵が描ける」と言っても、人によってジャンルごとに得手不得手があると知った。



 〈鈴蘭ノースさん、かわいく描いて下さってありがとうございます♪〉



 軽く返信すると、「こっちこそ嬉しいですー! ありがとうございます」と絵文字をちりばめた返信と、いいねとリツイートが即座に付いた。鈴蘭ノースのフォロワーも個人としては多く、イラストと返信が一万以上のアカウントに拡散された。

 今、何割のフォロワーがタイムラインを眺めているかわからないが、それぞれのフォロワーの手でリツイートがリツイートされ、どんどん拡散が進む。そうしている間にも、二木あおいのフォロワーが増えて行った。

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