26.ねとにゅ~
送信ボタンを押すと、どっと疲れが出た。
三木には、西口がどんなつもりでデザインしたのかさっぱりわからないが、適当にコンセプトをでっち上げ、「このままじゃ潰れちゃう! 助けて!」と身も蓋もなく窮状を訴え、三木と西口に関する情報については「これ以上聞くな」とのニュアンスを匂わせて最小限で返信した。
地鶏しあわせ屋で押部谷に教えられた時は面食らったが、大量の二次創作はこの回答の通り、本当に嬉しかった。西口が無茶な頼みを聞いてくれた時も嬉しかった。
三木が何日も頑張って描いたイラストは、あのザマだ。
あんな大変な作業を数千人もの絵師たちが、誰に頼まれたでもなく自発的に描いてくれた。描く手間暇苦労よりも「二木あおい」から感じた“何か”をとってくれたのだ。
取材依頼の@ツイートを探す間、二次創作の許諾願いのツイートを大量に見た。
三木が一人で全てに回答するのはムリで、既に投稿された数千件のイラストを今更引っ込めさせるのも不可能だ。
タダのイラストなどについては、ねとにゅ~への回答で済ませた。記事が配信されたら、固定ツイートにURLを貼って、回答代わりにしようと思う。
二木あおいとして世界中に向けてツイートし、プロフィール欄に固定する。
〈応援して下さる皆様へ
まとめてのお礼で恐れ入りますが、厚く御礼申し上げます。
リメイクして下さった絵師の皆様、拡散して下さった皆様、フォローして下さった皆様、ありがとうございました。〉
数百件溜まった励ましの@ツイートに片っ端からいいねを付け、コピペで「ありがとうございます」と返信した。
一日乗車券のツイートを発掘し、自らリツイートしてタイムラインに浮上させる。撮り貯めた写真から沿線の店や観光施設の画像をピックアップして、名称とおススメポイント、二木粟生井鉄道の最寄り駅をツイートする。
ねとにゅ~からダイレクトメッセージが届いた。
〈お忙しい中、早速ご回答いただき誠にありがとうございます。
記事を公開いたしましたので、ご確認下さい。〉
リンクを踏むと、ねとにゅ~の最新記事が表示された。
記事は軽い説明に続いて質問と回答がそのまま載っている。
三木には、これをどう捉えていいかわからない。
何度も読み返す内に、一部を切り取っておもしろおかしく誇張したり歪曲したりせず、ありのままに報道したのだと気付いてホッとした。
二木あおい自身がネタキャラ扱いなのはこの際置いて、三木は〈丁寧に紹介して下さってありがとうございます〉と返信する。
すぐ様〈こちらこそ、迅速なご回答をありがとうございました。これからもねとにゅ~をよろしくお願いします〉と返信が来た。
記事の見出しを改めて見る。
スクープ! ゆる~い萌えキャラ 二木あおいちゃんのヒミツに迫る!
このニュースサイトの見出しは全体がこんな調子だ。
記事の下には、先日の記事と二木粟生井鉄道の公式サイト、二木あおいのツイッターへのリンクが並ぶ。
なんとなく、二木鉄公式のリンクを踏んでみた。
この件について何か一言ないかと期待したが、アクセスが集中し過ぎてサイトを開けない。
三木は諦めて、ツイッターに寄せられる励ましに返信した。
何か忘れているような気がしたが、それどころではない件数の@ツイートが押し寄せ、三木は指紋がすり減る勢いで返信し続ける。
トイレに立ったついでに珈琲を淹れ、窓を見ると雲が杏色に染まり、休日が終わろうとしていた。
……明日、どんな顔で出勤すりゃいいんだ?
キャラの版権使用料の件も頭が痛い。
西口への返信を忘れていたのだと気付き、急いでメールを起動した。
新着メールが一件。
西口からだ。
イヤな予感しかしないが、勇気を振り絞って開いた。




