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 朝のホームルームの終わり際に1Bの担任教師である新田目美玲は生徒全員を見渡してから言った。


「最近、1年生の落ち着きがありません。16歳になってお見合い義務が発生してしまうので仕方がないことではありますが、高校は勉強をするところです。恋愛をするにしても学生の本分を忘れない様にしてください」


 16歳になる生徒が増えてきたことから、自然と周囲の話題は恋愛についてがほとんどになっている。多感な時期なので少しくらいは見逃していただきたいところだが先生のおっしゃることはもっともだ。

 僕自身、今日が誕生日で浮かれ気味になってしまっているところがあるかもしれない。修二の様子を見て多少は落ち着いた。


「それでは、ホームルームを終了します」


 そう言ってから新田目先生は教室を後にした。

 そういえば新田目先生はどうなのだろうか? 艶のある黒いロングヘヤーと170cm後半くらいの長身の美女で学校の男子生徒は大人の女性として憧れているものが多いと聞く。年齢は20代半ばとみられるが詳しくは分からない。

 成人した大人の女性に年齢を聞くのは勇気がいる。こういう話は一人でも知ったらクラス中に広がってしまうから、僕が先生の年齢を知らないということは、このクラスに勇者はいなかったということだろう。

 まだ結婚はしていないと聞いているから先生もマッチングアプリを使用しているのだろうか? ダメだすぐに恋愛脳になってしまう。僕は頭を振って気持ちをリセットし、一限目の数学の教科書を準備することにした。


 ♢


 昼休みに入ったので、僕は修二と貴之の二人と一緒に食堂で昼食をとることにした。僕は誕生日なので少し豪勢に焼肉定食に決めた。


「恋愛アプリどこまでやったの?」


 席に座って食事を始めると貴之が質問してきた。話題はやはりアプリ「恋AI方程式」のことだ。話題にするときは大抵、単純に「恋愛アプリ」と呼んでいる。

 貴之の誕生日は2月14日なのでまだ先のことだからか落ち着いている。いや、そもそも貴之くらいのイケメンともなれば普段からいろんな出会いがあるから選択しの一つでしかないのだろう。


「まだインストールしただけ」


 実はかなり気にはなっていたのだが、すぐにアプリ使って色々操作してたら意識し過ぎと思われて恥ずかしい思いをしそうだから我慢していたとか言えない。


「診断とかめんどくさいから登録早くしといた方がいいぞ。無視してると催促通知がめっちゃくるって聞いた」


 修二はラーメンを食べつつ、僕にアドバイスを送る。


「それに新田目先生の言う通り、学生の本分は勉強だ。恋愛なんて頭がお花畑な連中がやっていればいいのさ」


 そう言う修二は実はこの3人の中で一番頭がいい。ヲタク趣味を親に認めさせるためにも抑えるところは抑えているのだ。本当なら違うもっと学力が上の学校も狙えたのだが、家から近いというだけでこの学校に決めるあたりが修二らしい。


「俺は今はサッカーが一番だからなぁ。まぁ、恋愛したい気持ちもあるけどね。ヒロはどう?」


 やはり余裕を感じる回答をする貴之が僕に質問する。まぁ、この二人に今更気持ちを隠してもしょうがないので素直に言うとするか。


「期待する気持ちもあるよ。そりゃ、まぁ僕も男だからね。でも、結局は会ってみないと分からないかな?」


 そういいながらアプリを立ち上げ、マイナンバーを入れ認証する。すると最寄の診断場所と診断の予約ページが表示された。


「ねぇシュウ、診断ってどんな感じだった?」


「ん〜、なんか脳波をみるとかって頭に器具つけられてあとはひたすら質問答えたり、写真見たり動画見たりする感じ。よく分からんかったけど疲れたわ」


 僕の質問に対し、もうやりたくないといった顔でシュウは答えた。診断はAIに個人の好みや趣味嗜好といった情報を入れるために必要となるため、色々とさせられるらしい。

 確かに早いとこ終わらせた方が良さそうなので、雑談をしながらその場で診断を予約する。今週の土曜が空いていたのでとりあえず、そこに予約を入れた。


 さて、どうなることやら。

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