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朝5時に起きて、軽く筋トレしてからジョギングを30分し、シャワーを浴びるのが僕のモーニングルーティーンだ。そのあと朝食の準備をして、母の飲むコーヒーをコーヒーメーカーで用意する。
朝の身支度を終えた母が食卓を前にしたところでニッコリ笑った。
「弘之、誕生日おめでとう」
「うん、ありがとう母さん」
そう、今日は7月14日、僕の誕生日だ。
そこで僕のスマートフォンからピロンっと通知音が鳴った。時刻は7時ジャスト。まぁ、だいたい予想はつく。
スマートフォンの画面を見るとマイナンバーに紐づけてあるメールアドレスに通知が来ていた。発信元は予想通り政府からだ。
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題名:恋愛推進のためのアプリ登録について
相崎 弘之様
この度、16歳の誕生日を迎えたことをお慶び申し上げます。
表記の通り、アプリのインストールとご登録をお願いします。
皆様により良いご縁があるよう政府としましても全力でサポートさせて頂きたいと存じます。
つきましては「恋AI方程式」をご登録頂き、最初の恋愛診断を最寄りの恋AI推進センターで受信お願いします。
アプリダウンロード先
〇〇端末:URLーーーーーーーーーー
〇×端末:URLーーーーーーーーーー
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「政府からの通知?」
「うん、そう」
どうやら遂に僕にもこの日が来てしまったようだ。人生は恋愛が全てではないと僕は思っているが、だからといって重要ではないとは思っていない。本当にいい出会いが約束されているわけではなくとも気になってしまうのはしょうがないのではなかろうか。
「これで、弘之も恋活の仲間ね〜」
「あ〜、はいはい」
取り合えずアプリだけはダウンロードしておくか。母さんはあれから2人の男性とのお見合いをセッティングされている。今の所、定期的に連絡を取り合っているようなのである程度上手くいっているようだ。母親の恋愛に口を出すきはないので、向こうから話がない限りは静観している。
朝は時間がないのでささっと食事を食べて、食後にコーヒーを二人で飲む。
「今日はケーキ買って帰ってくるからね。何がいい?」
「あ〜、じゃあショートケーキで」
「わかったわ。じゃあ母さん先に行くから、戸締りよろしくね」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「行ってきま〜す」
母さんを見送ったあと、一人ダウンロードを終え、画面に表示された恋AIと書かれたアイコンを眺める。恋仲とまではいかなくともいい友達になれそうな女子と出会いたいものだ。そう思いながら僕はスマートフォンの画面を閉じ、通学の準備を始めたのであった。




