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 高校の授業が終わり、タカはサッカー部の練習があるので学校に残り、僕と同じく帰宅部のシュウは親に理髪店へ行くよう厳命されていたので、二人と別れて僕は一人家路につく。


「恋AI方程式か〜」


 シュウの誕生日である今日は5月20日、僕の誕生日は7月14日であるから大体2ヶ月後には僕にも通知が来ることになるのだから人ごとではない。

 恋人がいる場合は対象外となるとはいえそう簡単に恋人なんか作れしないし、同じクラスの男子生徒も女子生徒も間も無く16歳になるものが多いせいか浮ついた雰囲気が漂っている。学校以外で出会いの場を与えられるのだから、普段同じ学校の生徒を意識している人たちも新たな出会いに期待しているのだろう。


 僕だって例外ではない。クラスの女子に気になる子がいるのは確かだがアプローチするのはどうにも気が引けてしまうのだ。しかし、アプリでマッチングされる相手はAIに自分にとって恋愛に向いている相手として出会うのだから最初のハードルが低く感じられても仕方ないだろう。


 そうこう考えている間に自宅であるアパートに着いてしまった。アパート「ハルジオン」の203号室が我が家だ。2LDKの1室が自分の部屋として与えられているので、そこに荷物を置いてキッチンに向かう。


「さて、今日の夕飯はどうするかな〜」


 昨日はアジの開きと納豆というシンプルな和食だったから今日はもう少し重めのものにしたいところだ。僕は冷蔵庫の中身と相談して、オムライスにすることにした。ウィンナーってこういう時便利で助かる。


『今日の夕飯はオムライスです』にタコの絵文字を添えてで母にラインすると直ぐに『やった!』というメッセージとペンギンがVサインしているスタンプが送られてきた。


 母親が帰ってくるのは7時ごろだから夕食の下ごしらえと掃除して、しばらくTVのニュース番組を見て寛ぐことにした。ニュースの内容は少子高齢化対策についてだ。


 育児休暇制度、片親支援、保育施設の拡充、独身税、高齢者の再雇用など様々な対策をとってきた政府だが、なかなか解決しないこの問題について大胆な施策を打ち出したのが恋愛推進プロジェクトだ。


 5年前にスタートしたこの対策は、当初税金の無駄遣いだの無意味なお見合いだの世間から色々叩かれていたが3年もすると出生率の数値に変化が出てくることで歓迎されるようになってきた。

 会社でも出会いがなく恋愛に消極的になっていた世代や、若くても恋愛に消極的になっている人たちを巻き込むことによって、政府の想像以上に効果が現れてきたのだ。

 それは出生率だけでなく、恋愛に向けて自分を磨くものが増えたため、研究・開発など様々な業績を上げる会社が増えていき、経済的にも日本が盛り上がっていくことで今では他国も無視できない注目の政策となっているのだ。

 モテたいから頑張る、割とみんなそんなもんかもしれない。


 適当なところでTVを観るのを辞め、僕は夕食作りに取り掛かった。我が家はいわゆるシングルマザーの家庭なので家事は母と分担している。というか母は家事がめっぽう苦手なので料理などは僕の担当だ。

 バリバリのキャリアウーマンである母は何を血迷ったか、ダメンズの元父親に捕まってしまい僕という子供ができたわけだが、紆余曲折あった末に離婚してシングルマザーとなったわけだ。


 ウィンナー入りのケチャップライスの上にふわトロのオムレツを載せる。これとサラダ、オニオンスープが本日の夕食だ。


「ふふっ、我ながらいい出来だ」


 卵をふわトロにするために料理動画で勉強した甲斐があったというものだ。料理など家事は目に見えて成果が上がるから僕としては学校の勉強より楽しかったりするくらいだ。

 すると玄関からガチャっという鍵を開ける音が聞こえてきた。どうやらタイミングよく母親が帰ってきたようだ。


「ただいま〜」


「お帰り〜、お仕事お疲れ様」


 僕の母である相崎菫は黒髪をショートカットにパリッとスーツを着こなしたキャリアウーマンだ。年齢はアラフォーにも関わらず、まだ30代前半にしか見えない若々しさがある。


「弘人こそ、いつも家事してくれてありがとうね。いや〜お母さんはいい息子を持ったわ〜」


 母が仕事の電話をしているのを聞いたことがあるがその時はキリッとした表情と話し方をしていた。普段のゆるゆるっとした話し方では想像がつかない。

 スーツを脱ぎながらお礼を言ってくる母に首を振って答え、スープを温め直して夕食の準備をする僕に母は神妙な顔をして告げるのだった。


「ご飯の後、ちょっと大事な話があるから時間いいかな?」

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