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第8話 平均律と純正律

♪ポエット(現在)♪


 交戦中に、長年の歴史の謎が解明されてしまった。歴史書において、原始、古代、中世初期においては、女声の戦士という存在は決して珍しくないものだった。


 だが、ある時期から、攻撃魔法を使うのは男性だけになり、歴史上の戦史の登場人物は男性中心になる。それが、おおよそ400年前。


 そうだ。それは、五線譜というものが発明され、そして、ギターというものにフレットが設けられ、鍵盤楽器にも平均律が採用された時代と一致する。


 平均律。それは、楽器の音程を安定させるために、新たに発明された新技術だ。この技術の導入により、男声魔法の効果が安定的に供給されるようになり、魔法ルネサンスと呼ばれる時代の序章になったと言われる。


 だが、それによって、古代から脈々と受け継がれてきた調べ、純正律が失われていった。


 と、なると女声魔法で強力な攻撃魔法が唱えられる秘密は純正律にあったと見て間違いはない!


「今のうちに逃げよう!」


「は、はいっ!」


 彼女の手を引き走る。彼女をおんぶして、全力疾走する。


「逃がすかっ!」


「な、なにっ!」


 僕はうさぎ族。本物のうさぎそのものではないが、半妖の亜人である。足の速さには自信がある。だが、それに匹敵するスピードで敵は追い上げてくる。木々の間をかいくぐるようにチェイスする。


 竜族か。単に楽器が優秀なだけでなく、肉体そのものが強靭だ。


「喰らいなっ!」


 ブルーススケールの小曲を奏でて、小石をものすごいスピードでぶつけてくる。


「うわあっ!」


 体勢を崩して、木の枝にぶつかり、体が放り出される。彼女は⋯⋯うめき声をあげている。無事かもしれないし、無事ではないかもしれない。


「今度こそ、トドメだ。ベーシックファイアーの上位魔法、マスターファイアーを喰らいなっ!」


 山火事になりかねない大火炎、それに対して、アダージョさんは、ベーシックファイアーを短調にしたベーシックアイスで応じる。


 いくら純正律で強化されているとはいえど、マスターファイアーに敵う魔法ではない。徐々に押されている。


 くそっ。このまま見ている場合ではない。


 伴奏をっ! 伴奏で彼女をサポートしなければ。


 ギターを取り出す。だめだ! 彼女の歌声は純正律。こんな楽器では、不協和音を奏でてしまう。不協和音を奏でたら魔法の効果が弱まってしまう。そうだ!


 リュート! 僕はリュートを持っている! 男声魔法を唱え、亜空間からリュートを取り出す。僕のリュートはフレットがないつまり、平均律で調律されていない楽器。ギターのご先祖様。中世の吟遊詩人が弾き語りしたという伝統の楽器。これならば、太古の調べを奏でることができるっ!


 だが、これはレプリカに近いものだ。音は一応演奏できる。だが、魔法楽器としての加工は施されていない。


 万事休すか。


 いや、まだだ。諦めてはいけない。


「Lala♪」


 僕は亜空間から、プラスドライバーを取り出し、そして、手元のフォークギターから、ある装置を外す。装置の名前は、フーリエコネクタ。


 楽器魔法普及初期は、ライオジア地方の一部で作られたハンドメイド品だけが普及していた。あくまで、楽器から直接、魔法を奏でるタイプの製品だけだった。初期の製品は、魔法の性能が安定せず、声楽魔法の上位互換とまではとてもいえない性能。優れた使い手と作り手もいたが、一方で、一般人が真似して作った粗悪品が量産された。今日まで続く楽器魔法に対する偏見はこの時期に生まれた。


 楽器魔法の地位を画期的に上げたのがこのフーリエコネクタ。演奏用の楽器であっても、これを装着するだけで高性能の楽器魔法を演奏できるようになる。


 異世界人たちはミッション車の世界にオートマが出てきたようだなどと驚いていると聞く。


 フーリエコネクタを発明したのはララ准教授なる人物。魔族とのハーフで、人間と魔族の架け橋と地位をあげる活動をしているとか。一度、お目にかかってみたいものだ。それは余談として。


 リュートにはネジ穴なんてない。だが、装着しなければいけない。仕方ない。瞬間接着剤でリュートにくっつけるか。だが、これをやってしまったらもう外せない。


「えーい! やぶれかぶれだ!」


リュートに透明の液をぬりぬりすると箱のような機械をぺたりとくっつける。

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