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55.ベルンハルト

「変な生物さん!」


 フェリシアが拳をぎゅっと握りしめ、コアラに向けて叫ぶ。

 

「ん? オレのこと?」

「そうです! 変な生物さんの使った魔法ってどんなものですの?」

「ソウシに使った奴だよな。あれは、不在時にユーカリの木へ危機が迫った時、困るだろ。そういうものだ」


 コアラ、それ、答えになってないから。

 案の定、コアラのユーカリ脳に慣れていないフェリシアの頭にはてなマークが浮かんでいるだろ。

 

「シア。何か知らんが、コアラの魔法ってユーカリのために無駄な才能を使っているんだよ」

「そ、そうですか。深淵に触れることは秘匿すべしということなのですわね」

「あ、まあ、うん」


 これはこのまま勘違いさせておいた方がフェリシアのためだな。

 真実を知った時、彼女が寝込むかもしれんから。

 

「コアラ、夜に屋敷に来てくれるか? 後でまたゆっくり話をしたい」

「おう。ヒールをかけてくれたんだな。ありがとうな」


 お礼を言うや否や、もう話は終わったと思ったのかコアラが流れるような美麗な動きでユーカリの葉をちぎって口に運ぶ。

 勝手に話を打ち切ってしまったけど、このままいつまでもここで話をするのもアレかなと思ったんだ。

 フェリシアとベルンハルトは明日の朝までいるみたいだから、夕飯を食べながらでもコアラと会話をすればいい。

 

 ◇◇◇

 

 ゴリゴリ――。

 すり鉢でスパイスをすり潰す。

 左右にはモニカとフェリシアが無言でスパイスをすり潰したり、米を脱穀したりしている。

 さっきまであれだけ喋っていたのに、いざ作業が始まると急に静かになってしまった。

 このまま無言でゴリゴリやっていても、手持ち無沙汰だなあ……。

 モニカは元々、作業中はこちらから話しかけないと喋ることはない。

 意外に思うかもしれないけど、フェリシアはモニカ以上に無言になるんだよね。修行の時とかもそうだけど、彼女は一旦集中状態になると雑音をシャットダウンする。

 

 フェリシアとベルンハルトを屋敷に迎え入れ、ボアイノシシのベッドと折りたたみ机だけの家具に二人ともとても驚いていた。

 フェリシアは「いいな、いいなあ一緒に寝ることが出来て」みたいにはしゃいでいた。

 一方でベルンハルトは腕を組み喉の奥を鳴らし何やら考え込む様子を見せる。

 何と彼は丸太を持ってきてくれただけではなく、家具が不足しているだろうからと何か一つでも大工仕事をしてから帰るつもりだったという。

 それが、ベッドもないわ、テーブルもないわで、どれをつくればいいのか悩んでしまっていた。

 俺は頼んだね。彼に。

 「ダイニングテーブルセット」が欲しいと。

 

 床にあぐらをかいて食べるのは嫌いじゃないんだけど、窓は窓枠さえないから風で中に埃がガンガン入ってくる。

 毎日モニカが風の精霊魔法で掃除をしてくれているんだが、それでもやはり、埃が舞うんだよなあ。

 椅子とテーブルがあれば、今よりぐっと食事の時に埃を気にしないで済む。

 

 そんなわけで、ベルンハルトは大工仕事の真っ最中。

 フェリシアも何かお手伝いってことで、俺とモニカと一緒にスパイス作りと米の脱穀をしていたわけだが……。

 モニカとフェリシアがいるなら、俺が参加しなくても夜までにカレーライスの素材作りは完了するんじゃね?

 元々、俺とモニカの二人でやるつもりだったし。

 

「ベルンハルトの手伝いをしてくるよ」

「承知いたしました。カレー作りの準備が整いましたらお声がけいたしましょうか?」


 俺の呟きに作業を止めぬままモニカが応じる。


「うん。頼むよ」


 すり鉢をそっと床に置いてから立ち上がり、作業部屋を後にした。

 

 ◇◇◇

 

 屋敷を出てロバが居る方向を向くと、作業に汗を流すリザードマンの姿が。

 は、はやい。

 丸太からだから、板をつくらないといけないのに早くも立派なダイニングテーブルが完成していたではないか。


「触ってみてもいいかな?」

「もちろんですぞ。何か気になるところがあれば言ってください」


 ベルンハルトに断りを入れてから、テーブルの表面に触れてみる。

 お、おお。すべすべしていてトゲが刺さるってこともない。カンナをかけてからしっかりとヤスリで磨いてくれてるみたいだ。

 大きさも四人用になっているから、来客が来ても安心仕様だな。うん。人を呼ぶつもりは毛頭ないけどね。


「脚を回転させると外れるようにしております」

「細かいところまでありがとう」


 この大きさなら入口扉から充分運び込めるけど、脚が外れる仕様なら何かと便利に使うことができる。


「椅子に背もたれはつけますか?」

「無くてもいいかな。机の下に入る方が掃除の時便利そうだから」

「承知いたしました」


 手伝おうと思ったけど、ベルンハルトの手際の良さに却って邪魔になるんではと思いが浮かぶ。

 お、そうだ。

 

「丸太を切るくらいならできるから、手伝ってもいいかな」

「かたじけない。では、そちらの丸太を」


 ベルンハルトに指示された通りに丸太を切っていく。

 ノコギリじゃなく、水の精霊魔法でな。ちゃんと真っ直ぐに切る自信がなかったんだもの。

 それに水の精霊魔法なら一瞬でスパーンと切れるし。

 

 スパーン、スパーンってやってたら楽しくなってきた。

 ベルンハルトの指示が的確で、俺が作業を終えるタイミングに合わせて次の指示が飛んでくる。

 あらよっと、もういっちょ。ほいさ。

 丸太を切るだけじゃあなく、板作りも任され、ベルンハルトがテキパキと釘を打ち組み立てて行く。


「あっという間に椅子が四脚できちゃったな」

「ソウシ殿が助力してくれたからですぞ」

「いやいや、ベルンハルトの大工作業が素晴らしかったからだよ」

「まだ、日暮までありますな。窓枠でも作りますか」

「え、それは助かる!」


 すげえ。窓枠のことは半ば諦めていたんだよな。

 窓枠って正確にサイズを計らないとハマらないし……。

 

 なんて考えている間にもあっという間に窓枠が完成し、続いて雨戸の制作に入る。

 ガラスはさすがに用意がないので、レールを窓枠の外に取りつけそこに板をはめ込む。

 左右に動く板は、開け閉め自由となるわけだ。

 これで雨が降った時、雨戸を閉じれば外から雨の侵入を防ぐことができる。

 ガラスじゃないから、中が暗くなるけど光石のランプは一杯準備しているし、問題ない。

 

 それでもまだ少し時間が余ったから、今度は床と壁のチェックまでやってくれた。

 全くベルンハルト様様だぜ。

 二階の床はやはり取り替えたほうがいいと助言を受け、一応のやり方も教えてもらった。

 壁はまだまだ大丈夫とのことで、家が崩れる心配をしなくていいとホッとする。

 

「最後に屋根を見ましょうぞ」

「おう」


 屋根に登り、破損箇所がないか二人で確認する。

 一部、欠けているところがあったが、しばらくは問題ないとベルンハルトからお墨付きをもらった。

 

 屋根から降りたところで、モニカの声。


「ソウシ様ー。夕飯の準備ができました」


 あれ、作る前に呼んでくれと言ったんだけどなあ。

 夢中になっていたから気が付かなかったのかも。

 空を見上げると、夕焼け空が急速に暗くなっていくところだった。

 たった半日でここまで作業が進むなんて、やっぱり詳しい人がいると違うなあと実感する。

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こちらも間もなく完結となります。

ぜひぜひチラ見していってください!

・タイトル

最強ハウジングアプリで快適異世界生活

・あらすじ

異世界の戦場に転移してしまった主人公がど真ん中にハウジングアプリというチートを使って誰も侵入できない無敵の家を作って戦争を止めたり、村作りをしていくお話しです。

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