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43.ヒラリと舞うスカート

「総士の名において依頼する。水の精霊よ。刃となりて切り裂け、ウォーターカッター」


 水の刃がひし形の鱗を持つ茶色の動物へ向かう。大型犬ほどの大きさのそいつは水の刃に気が付いたものの、もはや遅い。

 アリクイのような細い頭から伸びる首元を水の刃が切り裂き、ひし形の鱗を持つ動物はその場で崩れ落ちた。

 

 見た事のない動物だが、こいつは何なんだろう。

 尻尾を掴み上げると、鱗がそれほど固くないことが分かる。

 いや、地球基準なら硬い鱗と表現してもいいんだが、こっちには飛竜やらのモンスターがいるからな。この程度の鱗だと、硬いとは言えない。

 

「それはセンザンウロコですね」

「ほお。おいしいのかなあ、こいつ」

「ボアイノシシに比べて淡泊で脂身が少ないと聞きます。レストランでも出される店があります」

「へえ。一般的なのかな?」

「一般的ではありません。イノシシ狙いの狩りで副次的に狩猟される、と言えばいいのでしょうか」

「了解」


 猟師料理とかにはありそうだな。

 センザンコウってのが地球にいたけど、それにあたる動物なのかなあ。生憎センザンコウの見た目を覚えていない。

 ただ名前が似ているから似たような動物なのかもって思っただけだ。

 

 ソリにセンザンウロコを乗せた時、モニカがピクリと眉をあげ右手を握り前に出す。

 

「モニカの名においてお願いいたします。風の精霊さん。ウィンドカッター」

 

 彼女の力ある言葉に応じ、20メートルほどの距離にある雑草の中を風の刃が切り裂く。

 スタスタと無表情のまま、モニカが風の刃が切り裂いた雑草のところまで行き膝を曲げ手を伸ばす。

 

「確保いたしました」

「お、兎かな」


 モニカが掴み上げたそれは俺の知るウサギより一回り大きいし、毛皮の色が濁った緑色だけど確かに形はウサギだった。


「はい。森ウサギです。こちらは美味しいです」

「お、おお。さすがモニカ」

「わたしではなく、風の精霊魔法が教えてくれたに過ぎません」


 澄ました顔でそう言ってのけるモニカだったが、目元が僅かに下がっている。

 ふふふ。本当は森ウサギを狩猟できて嬉しいくせにい。

 俺はセンザンウロコが狩れて良かったって思ってるからな。

 

「よおし、この調子でもう少し狩ろう」

「承知いたしました」


 ソリにはまだ余裕がある。

 ボアイノシシは美味しかったし、やっぱりイノシシ系が欲しいところだ。

 

 ◇◇◇

 

 あの後、モニカがフロヒロ鳥を一羽狩るもののイノシシには巡り合えなかった。

 前方が二メートルほどの壁になっているところで、変な鳥がモニカの肩から飛び立つ。

 

『ついてこいー。ふぉろーみー』


 モニカに目配せすると、彼女は顎に指先をあて首を少し横に倒した。

 

「行かれますか? ソウシ様」

「せっかくだしチラっと見て行くだけでもいいかなとは思っている。荷物をどうするか」


 土壁の高さは俺の身長より高い。

 迂回するか、先に登ってからモニカと協力してロープで引っ張り上げるか。

 

「それほど高くはありませんし、荒縄で引っ張り上げますか?」

「それは俺も考えたんだけど、引っ張り上げる方も下から押す方も腕力がいるぞ」

「ソウシ様の細腕ですと……ですか」


 それは本気で言っているのか。細腕は俺じゃあなくてモニカだろうに。


「俺は大丈夫だよ。上から引っ張る方が力がいると思うから、俺が上に行く」

「いえ、ソウシ様は下で。先日も申し上げた通り、わたしはこれでもそれなりに力持ちなんですよ」

「え、ええ……」


 ぐいっと男前に腕まくりするモニカだったが、細い白磁のような腕は筋肉質と程遠い。

 思うように発言してくれるのは嬉しいことなんだけど、いくらなんでもそれは。

 ええい。こうなったら俺が上からソリを引っ張り上げてもモニカに不満が残るだろう。

 現実を見てもらう方がいい。


 二人で協力して持ってきた予備の荒縄でソリを縛り、引っ張り上げることができるように準備を行う。

 

「それじゃあモニカ、上に登ってくれ」

「承知いたしました」


 モニカは荒縄を右手に握り、膝を少し曲げ地面を蹴る。


「お、おお。マジかよ」


 ふわりとスカートが舞い三メートルほど跳躍した彼女は壁の上にスタッと降り立つ。


「はしたない真似を申し訳ありません」

「いや、ジャンプで届くならその方がいいだろ」

「恐れ入ります」


 お腹の真ん中辺りに両手を揃え、ペコリと頭を下げるモニカ。


「それじゃあ、はじめよう」

「承知いたしました」


 ソリを下から持ち上げて……って重たいなおい。

 よろける俺を見たモニカが口を挟む。

 

「ソウシ様、このまま引っ張り上げますね」

「お、おう?」

「お手をソリから離してください」


 言われた通り、ソリから手を離す。

 もちろんソリは重力に従い落ちて……落ちる前にぐわああんっと上に引っ張り上げられ……てええ、おおおい。

 四メートルくらい宙に浮いているじゃないかよ。

 落ちてきたソリをモニカがお盆を持つウェイトレスのように右腕の手の平に乗せる。

 

「ちょっとってレベルじゃねえぞ」

「ソウシ様、完了いたしました」

「いや、お辞儀は荷物を置いてから、な」

「これは、失礼いたしました」


 おっと、呆気に取られているのもこの辺にしとこう。

 壁に手をつき、一息に登る。

 

 変な鳥はどこだ。


「あそこです」

「お、いたいた」

「こちらを待っているようですね」

「うん。ところでモニカ、一つ聞きたいことが」

「はい。何でもお聞きください。あなた様のモニカです」

「あ、いや。やっぱりやめとく」

「何でもお聞きください」


 圧が強い、圧が強いよ。モニカ。

 言ってもいいんだな。言っちゃうぞ。

 

「気を悪くせず、聞いて欲しい」

「わたしがソウシ様のお言葉で気分を害すことなどありません」

「ん、んーとだな。切り株を持ち上げた時、よろけていなかった?」

「……わたしはメイドですので」


 意味が分からない……。メイドだったら重いものを持ち上げたらダメなのか?


「それだけ力持ちなのにどうしちゃったのかなあと思っただけだよ。モニカを責めるつもりなんて毛頭ない」

「ソウシ様が何でも話して欲しい、それがソウシ様の嬉しさとおっしゃってくださいました」

「うん」

「ですので、メイドではありますが、わたしは正直にソウシ様に申告することにしたのです」

「メイドだと重いものを持ったらダメなの?」

「そういうわけではございませんが。メイドたるもの淑女としての振舞いを求められます。切り株を片手で放り投げるなど、淑女らしくありません」


 放り投げろって言ってないんだけど。

 投げたらどれくらい飛距離が出るんだろうなあ。10メートル……いや20メートルはかたいか。


「あ、そっか。そう言う事か」


 やっと合点がいった。彼女の腕力に目が行っていて気が付かなったぞ。

 ポンと手のひらを叩き、彼女に目を向ける。

 

「モニカ。さっき飛び上がった時、スカートが浮いたよな」

「は、はい……」

「だああ。責めているわけじゃあない。スカートが浮きそうになったら手でさりげなく押さえろだったか」

「はい。おっしゃる通りです」

「メイドたるモニカがそれを忘れるわけもない。それをせず跳躍の飛距離を優先したんだよな」

「はい。はしたない真似を」

「いや、そういうわけじゃないよ。メイドたれ、のモニカも確かに素敵だけど、普通のモニカも同じ(くらい素敵)だからな」


 モニカが何も答えず、うつむいてしまった……。

 気まずくなった俺は彼女の手を引き、変な鳥を指さす。

よろしくお願いします!

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こちらも間もなく完結となります。

ぜひぜひチラ見していってください!

・タイトル

最強ハウジングアプリで快適異世界生活

・あらすじ

異世界の戦場に転移してしまった主人公がど真ん中にハウジングアプリというチートを使って誰も侵入できない無敵の家を作って戦争を止めたり、村作りをしていくお話しです。

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