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「ところで人間とガチャ娘って結婚できるんですか?」

「……クナさん、自分には夫がいるって言ってましたね」


 ガチャからクナが出現した後、僕達は親睦を深めるために外でお食事会を開いていた。

 アリシアやルミルは同じガチャ娘としてクナをもてなし、クナもおっかなびっくりという具合に二人と掛け合う。そんな中で僕は席を外し、少し離れた所でカルルとリアちゃんに話を伺っていた。


「夫がいるって言われた時からアリシアさんもルミルさんも、クナさんに優しくなった気がします。つまりそれって、今はもう会えないっていうニュアンスでいいんでしょうか?」


 そう聞くと、カルルは迷いなく頷いた。


「そうだねぇ。ジン君は、ガチャ娘がこの世界から元の『ガチャ控え室』に戻される条件って知ってる?」

「え~っと……使わないガチャ娘をマスターが売却した時……ですよね?」

「うんうん。けどあの子には夫がいた。そんな関係で売却されるはずなんて無かったりするよね? だとしたら、夫である主様が死んだって事だよ。ガチャ娘は自分を召喚した主様が死ぬと、この世界に存在する理由が無くなりガチャ控え室に戻されるからねぇ。そうして次に召喚されるのを待つ事になったりするのさ」


 そっか。だからアリシアもルミルも、それを察して優しくしているんだ。

 確かに、『その旦那さんって死んじゃったの?』なんて聞けないよなぁ……


「でもそれだとさ、ジンさんも色々と不都合な事がある訳じゃない?」


 今度はリアちゃんがそう言った。


「前に仕えた主様の記憶を持ったガチャ娘ってさ、次に召喚された主様とはうまくいかない時があるんだって。ほら、『自分にとっての主様はあの人だけだ!』みたいな感じ? そんな時のために、ガチャ娘には記憶リセット機能が付いてるんだよ」


 そう言えばアリシアを初めて召喚した時に、記憶を消すとかうんぬんかんぬん言ってた気がする。


「だからね、もしもの時は記憶消去も……」

「なるほど。でも僕は、出来ればそんな事はしたくないですね。本人にとって大切な思い出を全て消してしまうのは悲しいですから……。でも教えてくれてありがとうございます。参考にしますね」


 そう言う僕に、二人は小さく微笑むだけだった。

 少し空気が重くなってしまったけれど、僕には気になっている事があったので話題を変えてみる。


「ところで人間とガチャ娘って結婚できるんですか?」


 「うん」と、それに答えてくれたのはカルルだった。


「結構多いっぽいよ。ほら、ガチャ娘って主様に従順な子が多いし、戦いを通じて深まる絆。縮まる距離! もちろん正式な結婚式ってのを行うのかは分からないけど、形式的に『一生添い遂げます』的な誓いを交わしたりなんかするみたい。ジン君だってアリシアやルミルに慕われてるんじゃないの~♪」


 そう言いながらニヤニヤしてくる。

 確かに二人との仲は悪くないと思う。だけどそれが恋愛感情かどうかと言われるとどうなんだろう?

 ぶっちゃけ僕なんて人間の底辺みたいな存在だからなぁ。ダーウィン賞で死んだりしたし。あ~今でも思い出すとショックで鬱になるよ……


「あともう一つ、ガチャ娘って女性しかいませんよね? なんで男性のガチャ男っていないんでしょうか?」


 鬱な気分を紛らわせようと連続で質問を投げかけてみた。


「それは多分、ガチャ娘が人間とツガイになり過ぎないようにじゃないかな?

「ふむ? と、言いますと?」

「ガチャ娘ってさ、基本的に体内構造が人間と違ったりなんかするんだよ。出来るだけ魔物と戦うのに特化してて、人間みたいに子供を産めるように作られて無かったりするんだよ。ほら、人間の女性って子供作るのに子宮が……」


 そこまで言って、カルルはハッしたようにリアちゃんに視線を移す。なんとリアちゃんは顔を赤くして俯いていた。

 そりゃそうだ。リアちゃんはリキュアの体を使っているけど中身は幼女。リキュアの記憶や知識を継承しているらしいから、こういう話をすれば嫌でも知識が頭をよぎる訳で……


「あ~……だからね、ガチャ娘と結婚すると子供が出来ないんだよ。ただでさえ人間の男性がガチャ娘に取られているのに、ガチャ男までいたら余計に人間同士のカップルが減るじゃん? ガチャ男がもしいたら、どうせ戦うのに無駄な生殖器も無……あ、いや、どの道ガチャ男の子供は産めないわけ」


 た、確かに……

 そしてリアちゃんを横目で見ると、もはや耳まで真っ赤になって頭からは煙が立ち上っていた。


「あうぅ~……わ、私、みんなのデザートを持ってくるね!」


 そう言って逃げるように立ち去っていく。フラフラとした足取りで壁や柱に激突しながら奥へと消えていった。


「ってか、リアの前で何言わせんだ!!」


 そしてカルルに怒られる僕……

 まぁ結果的にマズい質問ではあったなぁ……


「つまり、人間の繁殖のためにガチャ娘しか生み出さなかったと?」

「そ、人間には沢山子供産ませないとヤバいわけよ。今は魔物との戦いは落ち着いているように見えるけど、これまで人間って何度か絶滅しかけてるからね……」


 確かに、僕だってこの目で見て来た。村に大量の魔物が押し寄せて壊滅寸前まで追い込まれる様を。

 今こうしている間にも、どこか別の村が襲われている可能性だってあるかもしれないんだ……

 そしてそう言った状況を守るため、クナとその主人は戦って主人は命を落とし、クナはガチャ控え室に戻されたんだ……


「カルルさん、色々と教えてもらってありがとうございます。クナさんの事をもっとちゃんと考えてみようと思います」

「おう。頑張ってな! お前たちには期待してたりなんかするんだからさ!」


 そう言って親指を立ててくれる。そうした昼食を終えて、僕達はついにこの街を旅立つ事になった。


「今までお世話になりました。これまでの日々は一生忘れません」

「そんな事ないって。むしろ助かったのはこっちだったりするんだからさ」


 カルルもリアちゃんも、そのご両親も気持ちよく見送ってくれる。そんな温かさを背中に浴びて、僕達は街を出るのであった。


「とりあえずクナさん、今手持ちのレア育成素材がこれしかありません。なので魔物と戦う時は二人に任せて、クナさんは見学していてください」

「わ、わ、分かりました……」


 そうして僕は、手持ちの素材をクナに使用した。


「さらに以前、キングゴーレムMVPで進化の宝玉も三つ持っているので、そのうち二つを消費してレアリティを上げておきますよ」


 R(レア)は二段階目。そこから三段階目に進化させるには、進化の宝玉を二つ使用して、さらにお金もかかる。だけどこれでそれなりの足並みは揃えられたかな。


「レアからの進化! 三段階目のレアリティはズバリ、HR(ハードレア)とします!!」


名前   :クナ

レアリティ:HR(三段階目)

レベル  :37

体力   :V

攻撃力  :X

防御力  :V

素早さ  :W

精神力  :W

探知   :W

スキル1 :鉄壁

スキル2  :マスターシールド

推定戦力 :5万1600


「このスキルはどんな効果なのかしら?」

「え、えっと……説明欄を見てもらった方が早いと思います……」


 クナが僕に目で訴えかけてくる。なので、スキルの説明欄を開いて皆に飛ばしてあげた。


鉄壁:発動時間は短いが、防御力が急上昇する。

マスターシールド:巨大な盾を出現させて身を護る事ができる。


「そ、そういう……事です……」


 どうやら彼女は防御型らしい。これは役割分担的には丁度良いのではないだろうか?

 圧倒的なスピードを誇るうちのエース、アリシア。

 どんな装甲も破壊できるだけの攻撃力を持つルミル。

 そしてそこに、守りが得意なクナが加わった事でバランスが良くなったと思う。そんな時だった。


「魔物の気配がする。みんな気を付けて!」


 ルミルの一声で緊張が走った。前を見ると、少し離れた所に巨大なウサギのような魔物がこちらを睨みつけている。

 アリシアも敵の気配を読む事に慣れてきてはいると思う。けどそれはかなり近距離であり、遠くの気配を読むのはルミルの方が上のようだ。


「クナはまだレベルが低いわ。マスターと一緒に下がってて!」

「ふっふ~ん♪ ここはあたし達に任せといて!」


 アリシアは気を緩めないように素早く警戒態勢を取り、ルミルは新人の前で張り切る先輩のように余裕を見せていた。


「は、はい。アリシア様、ルミル様、お気を付けて……」


 クナはオドオドと僕の後ろに隠れるように下がっていく。

 ……いや、最低でも僕を守ってくれるように前に立ってくれるとありがたいんだけど。まぁ最初だし仕方ないのかな?


「ピューールルル!」


 巨大なウサギのような魔物が飛び跳ねながら突撃してきた。その瞳はつり上がり、牙も剝き出しでなかなか凶悪な形相だ。


「まずは私が攻撃を仕掛けるわ! 仕留めきれなかったらルミルがトドメをお願いね!」

「りょーかい!!」


 アリシアが高速で巨大ウサギに突撃をする。そしてすれ違い様に刀の太刀筋がいくつも煌めいた。

 ズババババッ!

 一瞬にして巨大ウサギが切り裂かれ、鮮血が周囲に飛ぶ。それでも魔物は止まらない。その巨体ゆえのタフさがあってか、僕達に向かって突進を続けていた。


「大丈夫だよご主人様。あたしに任せて! 『震魂!』『爆壊!!』」


 ルミルの体も、その手に持つハンマーも、魔力を帯びて激しく波打つ。これがルミル得意の究極の戦法!

 突進してくる魔物に向かって、ルミルはタンッと跳び上がる。そしてそのまま迫りくる魔物に向かってハンマーを振り下ろした!


「潰れろおおぉぉ!!」


 見事、ドンピシャのタイミングで魔物の額に攻撃がヒットする。そのままハンマー振り下ろすと魔物は地面に叩きつけられた!

 凄まじい音と衝撃が大地を駆け巡る。だがその瞬間、大地に亀裂が走り地面が大きく窪んだ。

 いつものクレーターが出来るようなものでもなく、窪んだ地面はその場の全員を地面に引きずり込む。何かを考える暇もなく、大地に開いた大穴に僕達は落ちていくのだった……

レアリティ表

本来はノーマル → レア → SR → SSR → URの五段階。

アリシア、ルミルの場合。一段階目ノーマル → 二段階目ノーマル+ → 三段階目ハイノーマル(今ここ)

クナの場合。二段階目レア → 三段階目ハードレア(今ここ)

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