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「これが私の火力技!」

「アリシアさん凄いじゃないですか! 完全に電光虫の動きを看破しましたね!」

「うんうん。アリシアならできるってあたしは信じてたよ!」


 二人に認めてもらえて私も嬉しい。なんだか大きく成長できたような気がするわ。

 そんな時だった。

 ――ズモモモモモ……

 地面が盛り上がり、なんと巨大なゴーレムが姿を現した!

 草の絨毯が広がる草原から出現しただけに、頭や肩、腕には緑色の草がこびり付いている。

 初めの見た目では土で構成された質感に、防御力は高くないように思えた。けれど次第に表面は固まって、まるで岩石のようにカッチカチになってしまっていた。


「あわわ、こんな所にもゴーレムが!? でもコイツはあたしなら楽勝ね。一発で粉砕してあげるから!」


 そんな風に意気揚々としているルミルを私は左手で制した。


「ルミル、ここは私にやらせてくれない? 試したい事があるの」

「う、うん。いいけど、危なくなったらすぐに交代してね?」

「分かってるわ。ありがとね」


 心配そうにしてくれるルミルの頭をそっと撫でる。本当にルミルは優しい子で、私の事をいつも気にかけてくれるのが嬉しかった。

 そんなルミルの気持ちを受け取りながら、私はゴーレムの正面に立つ。これまで攻撃が通じずに、ルミルに任せっきりだった魔物。それを今、ここで超えてみせる!

 私だって今回の成長で魔力の使い方がなんとなく分かってきた。後はルミルと同じように、武器に纏わせて攻撃力を上げるだけ!

 私の魔力はスピードに関係してくる。さっきは高速で動くと体から魔力が溢れ出て風となった。そう、水に濡れた手を振ると水滴が飛び散るのと同じなんだと思う。私の魔力は遠心力で強引に引き出す!

 だから刀を抜き、一度何もない空間を斬るように素振りをした。

 端から見れば気合を入れるための行為か、相手を威嚇するための動きだろう。だけど高速で振るった私の腕には、遠心力で体内から絞り出された魔力が帯のように伸びていた。

 それを私は刀に纏わせる。ダラリと空気中に漂う魔力を刀に絡めて一体とした。


「アリシアさんの宝刀輝夜に、魔力が集まっています!」

「いいねぇ。一体どんな力が発揮されるのかな?」


 この時点では魔力に何も付与していない。なんの効果もないただの魔力だ。

 でもいつかこうして武器を強化する時、どうすれば攻撃力が上がるのかをずっと考えていた。

 私にはルミルのような爆発力は多分生み出せない。ならどうすればいいのか。答えは単純でシンプルだ。


「いくわよ~。これが私の火力技!」


 走り出した私はゴーレムの手前で大きく跳び上がった。そしてそのタイミングで魔力に想いを込め、操作する!

 私達ガチャ娘が装備している武器は基本的に軽いものばかりだ。ルミルがハンマーを振り回すのも、ルミル本人が怪力なのではなく、武器が軽いから。それを魔力で爆発的な威力に仕上げていたりする。

 私の刀もそう、木の枝のように軽い。故に振るった時の重みが無い。ならば、魔力で武器に重みを付ければいい!

 さらに今までは小太刀を使っていたせいで刀身が短く、斬るという動きに適さなかった。けれどこの輝夜は刀身が長いおかげで、存分に斬るという動きに威力を乗せる事ができる。だから、その二つを合わせようと思った。

 そう、これは重い斧の『断つ』と、切れ味の高い刀の『斬る』を同時に行う必殺剣!


「受けなさい。『断斬(だんざん)!!』」


 刀を全力で振り下ろす。振り下ろすと同時に引いて割く。

 斬っ!! と、私の振るった刀には確かな手ごたえが感じられた。

 地面に着地するのと同時にバックステップで距離を開ける。するとゴーレムは綺麗なほど真っ二つになって前に倒れ込んだ。

 頭から斬られたゴーレムは、丁度真ん中から同じくらいの大きさで両断できていた。

 そのまま地面に倒れ込んだゴーレムの断面を覗き込んでみる。すると斬った際の摩擦熱が凄かったのか、切り口が溶けて、ちょっとした溶岩のようにドロドロになっていた。


「凄いねアリシア! ついにこの守備力の魔物でも斬れるようになったんだ!」


 自分の事のように嬉しそうにしてくれるルミルと、手を取って喜びを合い分かち合う。そうした後に私はマスターの前で大げさに頭を下げた。


「マスターが私を信じて使い続ける限り、私はもっともっと強くなるように努力するわ。だから、これからもよろしくね。マスター♪」


 するとマスターは下げた私の頭に手を置いて、軽くポフポフと弾ませてくれた。


「はい。やっぱりこのパーティーのエースはアリシアさんしかいませんね。どうかこれからもよろしくお願いします!」


 その言葉が私にとってどれだけ嬉しかっただろう。頭に置いてくれる手がどれだけ心地よかっただろう。

 やっぱり私は、一人のガチャ娘としてこの人に召喚された事は幸運だったと思うし、これからもずっとこの人のそばで役に立ちたいと思うのだった。


名前   :アリシア(覚醒)

レアリティ:HN(三段階目)

レベル  :155

体力   :J

攻撃力  :K

防御力  :J

素早さ  :I

精神力  :J

探知   :J

スキル1 :韋駄天LV10

スキル2  :状態異常付与LV1

必殺技  :無限刃

     :風迷路  new

     :断斬   new

装備   :宝刀・輝夜(ランク5)

     :風の鎧(ランク5)

魔石   :素早さ上昇LV5

推定戦力 :35万5000

「うへへ、でっへへへ~♪」


 私は今、自分のステータスをマスターから送ってもらい確認している。技を思いついたおかげか、これでようやくルミルの推定戦力を超えるという目標を達成する事ができた。

 マスターから頭をポムポムしてもらったり、頼りにされたりと嬉しい事ばかりだけど、気を緩めてはいけない。私はそんなに単純な女じゃないし、そう思われたくもないから。


「強くなりすぎて、マスターに言い寄られたらどうしよう~。ふへへへ~♪」


 当然、態度で悟られてもいけない。出来る女というのは見た目からカッコいいものなのよ!


「……ご主人、これからどうするの? アリシアが自分のステータス見ながらニヤニヤしてるからあたし達で決めちゃお?」


 え? 嘘!? 私ニヤニヤしてた!?


「そうですねぇ。訓練が予想以上に速く終わったので、午後からはテキトーに残りのクエストをこなしつつ、魔物の毛皮やお肉を回収しましょうか。ほら、僕達っていつでも金欠ですから……」

「え、ここの魔物って虫とかヘビとか泥とかだけど、素材なんて取れるの……?」


 マスターの目が泳いだ……

 そんな時だった。遠くからキラリと光が反射して私の目を掠めた気がした。

 私はその方向に目を凝らすと、豆粒のように小さく見える所に人影が二つ並んでいた。


「あ、リキュアとカルルだわ」


 かなり遠いけど、あの二人で間違いない。するとその二人はフッと消えてしまった。

 この辺は広い草原だけど、場所によっては上り下りがあるため丘もある。恐らく私が見た二人も小高い丘から下へ降りたのではないかしら?


「まぁ、魔物の討伐に来てるんじゃないですか? あの二人はこの街だけじゃなく、世界的に見てもかなり強い部類に入るらしいですよ。かなりの強さに人間の領土最前線に呼ばれたことがあるらしいんですが、それを断ってあの街に留まっていると聞きました」

「へぇ~。人気者は大変ね。まぁそれなら、ここの魔物退治くらい頑張ってもらわなくちゃ」


 マスターとルミルがそうおしゃべりをしている。だけど私はそういう目であの二人を見ている訳じゃない。なんと言うか、昨日の夜にあの二人にアドバイスを貰った時からどうも気になって仕方がなかった。

 どこか謎めいていて、どこか寂しげで、どこか儚い……

 だからもう一度会って話がしたかった。どんな話をすればいいのか分からないけど、もう一度会えば何かが分かるような気がした。


「私、あの二人に挨拶してくる! ルミルごめん、マスターの護衛お願いね!」

「え? あ、うん」


 ルミルが頷いたのを確認してから、私はすぐに飛び出した。

 そう、挨拶! それと昨日のアドバイスのおかげで強くなれたという報告とお礼! それを言うために会うの! うん何もおかしい事なんてないわね!

 そう考えながら全力で二人が消えた所まで行くと、そこはやっぱり小高い丘になっていた。

 私は身を屈ませてその丘から下の方を覗き込む。そこはなんて事は無い、2メートルくらいの高低差になっているだけの段差だった。

 そしてその2メートル下に降りてからひたすら広がる草原の彼方に、リキュアとカルルが突き進んでいるのが見えた。それはもう米粒ほど小さく見えるくらい遠くに……


「ちょ、私全力で走ってきたのよ!? それなのに速すぎない!?」


 そもそもなんで私は身を低く、隠れながら確認しているんだろう……?

 とにかくこのままでは見失ってしまう。そう思った私は、その小高い丘を飛び降りてからまた全力で後を追うのだった。

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