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46話

―― ぴこんっ♪


「ん?」


 次の日の夜。 俺はいつも通りPCでネットサーフィンをしていたら、チャット・通話アプリの通知音が鳴った。 俺はそのメッセージを確認するためにアプリを起動した。


―― やっほー


 非常に簡素なメッセージだったけど、でもその人らしいチャットだった。


「お、ペコさんじゃん」


―― ばんわーっす

―― うん、こんばんは。 良かったら今からペクスしない?

―― いいっすよー

―― ありがとー。 通話はいけるかな?

―― いけますー!


 俺がそうチャットを送ると数秒後に相手から通話の着信音が届いた。


 なので俺はそれを受け取り、相手とボイスチャットを始めた。 すると俺のヘッドセットから通話相手の女性の声が聞こえてきた。


『クロ君こんばんはー』

「ペコさんこんばんはっすー。 何だか久々ですねー」

『うん、確かに久々だね。 ちょっとここしばらくは親友の結婚とか、義理のお兄さんの結婚とかが続いちゃってさ、中々ネットにイン出来なかったんだよね』

「あ、そうなんですね。やっぱり20~30代になると周りの結婚ラッシュ(?)みたいなのが始まるんですかね?」

『うんうん、本当にラッシュが来ちゃったよー。 そのおかげでここ数ヶ月はご祝儀代で生活費が大変な事になってるよ』

「へぇ、いやそれはめっちゃ大変っすね……でも結婚かぁ。 俺もいつか結婚とかしてみたいっすわー」

『あはは、クロ君に結婚はまだまだだいぶ先の話じゃないかなー? まぁ学生の内はそんな遠い将来の事を考えるよりも、今目の前にいる友達と目一杯遊んだほうが良いよ!』

「そうっすね。 それじゃあ今日は友達のペコさんと目一杯遊びます!」

『うんうん、それで良し! じゃあ今日もよろしくねー』

「はい、よろしくお願いします!」


 という事でこの通話相手の女性はペコさん。 職業はイラストレーター兼主婦をやっている30代の女性だ。


 元々は関東出身の方なんだけど旦那さんが関西の方で、数年前にその旦那さんとの結婚を機に旦那さんの勤務先である関西へと引越していった。なので今は兵庫県の神戸市に住んでいるらしい。


『あ、そういえば最近スト6が発売されて格ゲー界めっちゃ盛り上がってるよね! クロ君とかゴリちゃんめっちゃ大興奮してるんじゃない??』

「あぁ、はい! いや本当に今格ゲー界隈かなり盛り上がってますよね! 俺も発売日にすぐ買いましたよ!」

『あはは、流石だねクロ君! それじゃあ今はもうだいぶやり込んでる感じ? ゴリちゃんとかあたぎちゃんと一緒にやり込んでるのかな?』

「はいそうですね、あたぎさんとは時間が合えば一緒にやってますよ! あ、でもゴリさんは“受験勉強頑張ってる時に新作ゲームを買ってそれにハマったらガチで死ぬから買えねぇよ! だってアタシ絶対にハマるもん!!” ってブチギレてました」

『あはは、相変わらず仲良いねー! でも確かに、普段格ゲーをやらない私でも今回出た新作の格ゲーは面白そうだなーって思ったもん。 だから受験生のゴリちゃんは絶対に買うの我慢した方が良いねw』

「あはは、ゴリさんが買ったら絶対に沼るでしょうしねw あ、それじゃあこれを機にペコさんも一緒に格ゲーやりましょうよー!」

『うーん、いや私もちょっと気にはなってるんだけどさ……でも私は格ゲーは見る専でいいかなーって思ってね。 私ももう年だしコマンドとか覚えられなくて厳しいモノがあるからさ……』

「あ、なるほどー。 いやでも今回のスト6はコマンド覚えられない人でも、方向キーとボタンひとつで簡単に技を打てるモードもあるんで大丈夫ですよ!」

『へぇ、そんなモードもあるんだ! それなら私みたいな超初心者でも楽しめそうだね! うーん、それじゃあ今度ポチって見ようかなー』

「おー是非是非! 格ゲーならあたぎさんが一番強いんで、あたぎさんから色々と指南して貰えばすぐに上達すると思いますよ!」

『あはは、確かにねー! うん、それじゃあもし買ったらあたぎちゃんに弟子入りしてみるよ!』


 そんな感じで俺はぺこさんと最近発売された最新の格ゲーについての話をしていった。


 今の話からわかるように、ペコさんは俺だけでなく、ゴリさんやあたぎさんとも親しくしてくれている人物だ。 しかもそれだけでなく、実はペコさんは俺達が参加しているLPEXのクラン及び通話グループのまとめ役をやっているんだ。


 まぁちょっとだけカッコ良い言い方をすると、ペコさんは我々を束ねるクランマスターという事になる。 ちなみに副マスターはあたぎさんが担当している。


 このクランの運営方針については、強さを求めるガチクランではなくて、まったりと気楽に遊べるようなゆるいコミュニティを心がけようという方針で運営されていたので、比較的ライトな層でも気軽に参加しやすいのが長所なクランだった。


 さらにここのクランはマスターも副マスターも女性が担当しているので、同じ女性プレイヤーの人達からしたら安心出来そうなクランとして参加する女性プレイヤーが結構多く、このクランの男女比は大体半々くらいとなっていた。


 まぁだけど、やっぱりこれだけ男女比が均衡していると、出会い厨やセクハラ発言、さらには不愉快な嫌がらせ行為をしてくるネット住民は少なくない。


 でもそういう不愉快な存在に関してペコさんは見つけ次第容赦なくキッチリと追放していってくれるので、クランメンバーはペコさんの事をとても頼りになるクランリーダーとして信頼していた。


 だけど、ペコさんは出会い厨を全て否定しているのかというと、別にそういうわけではなかった。


 今時ネット恋愛とかは普通の時代だから、しっかりと友達としての関係性が築いているなら、そこからクラン内で恋人に発展させたりするかどうかはご自由にというスタンスのコミュニティとなっていた。 そんな感じの方針なのでクラン内で仲良くなって結婚までいったカップルも1組だけいたりする。


 という感じの和気あいあいとしたまったりクランに俺やゴリさんは所属していた。 ちなみに俺がこのクランに参加した理由は、今から二年以上前、その頃から既にゲーム友達になっていたあたぎさんからこのクランに誘われたから参加してみた、というだけの理由だ。


『まぁそんな新作の格ゲーの話は置いといてさ……今日は久々にペクスやろう!』

「はい、そうですね! それじゃああと一人は誰呼びます? って、言っても……今誰もインしてないっすね……」

『まぁ今日は平日だししょうがないよ。 クランメンバーはほぼ全員社会人だしね』

「そうっすね。それじゃあどうします? あと一人は野良入れてやります?」

『あぁ、いやちょっと待って。 私だいぶ久々だからさー、ちょっとデュオで遊ばない? いきなりトリオでやっても私足めっちゃ引っ張っちゃうと思うから、それだと野良の人に申し訳ないしさ』

「あぁ、はい、了解っす、それじゃあデュオで遊びましょうか!」

『うん、ありがとー。 それじゃあゴメンだけど私のリハビリに付き合ってくれー。 あ、招待送ったからねー』

「あはは、了解です!」


 そう言うとすぐにペコさんからデュオの招待状が届いたので、俺は早速それに参加した。 という事で今日は久々のペコさんとのデュオLPEXが始まった。


◇◇◇◇


『あー、本当にごめんっ! 私が先落ちしたせいだぁっ!!』

「いやいや全然っすよ! ナイファイっす!」


 今の戦闘はラスト2パーティにまで生き残れたのだけど、最後の戦闘で負けてしまい、惜しくも2位という結果で終わった。


 という事で気が付けば既にペコさんとデュオを初めて1時間くらいが経過していた。 今日はペコさんのリハビリという事でカジュアル戦でまったりと遊んでいた。


「いやでもペコさん全然腕落ちてないっすよ。 当て感とか全然鈍ってないですもん」

『そう言って貰えると嬉しいよ。 でもやっぱり集中力とかはかなり落ちてるよ。 まぁそれは歳だからってのもあるけどさ、あはは』

「いやいや、ペコさんまだ30代じゃないっすか。 まだまだめっちゃ若いじゃないっすか」

『おっとー? 滅茶苦茶若いピチピチの高校生男子にそんな事言われてもちっとも嬉しくないぞー??』

「い、いやまぁその……えへへ」

『笑って誤魔化すなー! いやまぁ別にいいんだけどさ。それにしてもクロ君は始めたての頃と比べたらLPEXめっちゃ上手くなったよねー』

「え、そ、そうですかね?」

『うんうん、そうだよー! クロ君と初めて一緒にプレイした時は私の方が多少は上手かったはずなのにさ、今じゃあもうクロ君の足元にも及ばないもんー』

「あはは、まぁ流石にプレイ時間の総量が全然違いますしね。 でもペコさん達は皆働いていたり家事とか育児で大変ですから仕方ないっすよ」

『まぁそれは確かにねー。 もうこのクランを結成して相当長い年月が経ったし、メンバーも気づいたらほぼ全員社会人になっちゃったもんねぇ』

「今やもう、あの“あたぎさん”も立派な社畜になってますしね」

『あはは、本当にそうだよね。 いやーあの子も立派な社畜になっちゃったなんてねぇ……いや時が経つのは早すぎるよー』


 ペコさんがあたぎさんの事を“あの子”と呼んでる事から分かるように、ペコさんとあたぎさんはだいぶ昔から交友があるお友達らしい。


 ちょっと前にあたぎさんから聞いた話だと、今から6~7年前にオタ活をしてた時に知り合った同士らしく、当時お互いの好きなアニメ作品について徹夜で語り合ったあの日から今日に至るまでずっと仲良しなんだとか。


『……って、あれ? そういえばクラメンでまだ学生なのって、もうクロ君とゴリちゃんの二人だけだっけ?』

「あぁ、はい、そうですよ。もう現状のメンバーで残ってる学生組は俺とゴリさんの二人だけですね」

『ありゃ、そっかそっかー。それはだいぶ人が来なくなっちゃって学生組の二人には寂しい思いさせちゃってるかもねぇ……』

「いやもう全然気にしないでくださいよ。逆に先輩の皆さんが社会人でめっちゃ忙しい思いをしてるってのに、そんな中で俺は超絶暇な高校生ですからね。もう毎日忙しくしてるクラメンの皆には申し訳ねぇなぁ……って気持ちでいつも楽しくゲームやらせてもらってますわ!」

『ぷははっ、いいよいいよ! 私達の事なんか全く気にせずさ、暇な学生の内に沢山遊んどいた方が絶対にいいからね! だからゴリちゃんとも学生同士仲良く遊びなね!』

「えぇ、もちろんっすよ!」


 という事でこの日は久々にペコさんと色々な雑談をしながら深夜一時くらいまで一緒にゲームをして遊んでいった。

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