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41話

 その日のお昼休み。 俺は飲み物を買うためにいつもの自販機を目指して歩いていると、唐突に後ろから声をかけられた。


「おーい、神木君ー!」

「んー? ……んげっ!?」


 俺は一旦立ち止まって後ろに顔を向けると……そこには北上先輩が立っていた。 俺は戦慄として思わずうめき声を出してしまった。


「あれあれ? 何でそんな声を上げてるのかな?」

「えっ!? あ、あは、あはは……」


 先輩に対してあまりにも失礼な態度を取ってしまった訳なんだけども、でもとりあえず俺は笑ってごまかす事にした。


 という事で俺の目の前にいる女子は北上玲奈(きたがみれいな)という三年生の先輩だ。 身長は150センチ前半と全体的に小さめなスタイルの女子で、見た目は明るい髪色でサイドテールにしたヘアスタイルとニーソックスが特徴的の明るくて面白い先輩だ。 ただし面白い事を求め過ぎて時々暴走するんだけども。


 北上先輩は去年までは生徒会長としてこの学校の生徒を牛耳る(率いる)ポジションに君臨していたんだけど、今現在は生徒会長の職は降りて、庶務という名の冷やかし要員として生徒会に在籍している。 ちなみに現生徒会の三年生は七種先輩と北上先輩の二人だけだ。


「そういえば北上先輩に会うのって何だか久々な気がしますね。 最近は受験勉強とかで忙しかった感じですか?」


 という事で今年も生徒会に在籍している北上先輩なんだけど、最近は生徒会の定例会や打ち合わせには参加しないという日が多かった。 まぁ七種先輩もちょこちょこ参加出来ない日はあるし、この時期の三年生は色々と大変なんだろうな。


「うん、まぁねー。 でも今は勉強よりも学校推薦の提出書類とかを作ったりする方が大変かなー」

「あ、北上先輩は学校推薦を使うんですね! へぇ、良いなぁ、羨ましいなぁ」

「ふふん、そんなに羨ましいようなら君も生徒会長にならないかい?」

「はは、そんな軽いノリでなるような役職じゃないでしょ」


 俺が学校推薦を羨ましがっていると、北上先輩は某鬼を滅するアニメの敵キャラみたいに手をくいっとこちらに向けながら笑ってきた。


「あはは! まぁでもさー、ノリとか直感も大事だよ? 私なんてほぼノリだけで生徒会長を乗り切ったんだしさ」

「いやそれは去年の北上先輩を見てたらめっちゃわかりますけど……でもその生き方をするには七種先輩みたいな優秀な相方が居なきゃ絶対に無理ですよ」

「あはは、言われてみれば確かにそうだねぇ……って、あ!! ちーは私のだから神木君にはあげれないよ??」

「ぶはっ!? な、何言ってんすか!? いやそもそも七種先輩は北上先輩の物じゃないでしょ!」


 あまりにもタイムリー過ぎる事を北上先輩が言ってきたので、俺は吹き出しそうになりながらもそう言い返した。


(いやそれにしても相変わらず七種先輩と北上先輩は仲が良いなぁ)


 以前にも言ったけど、七種先輩と北上先輩はとても仲が良く、北上先輩は七種先輩の事を千紗子という名前から親しみを込めて“ちー”と呼んでいた。


「まぁでも神木君は仕事熱心だし生徒会長の適正は十分あると思うけどなぁ。 だからもしやる気が少しでもあるんなら後期の生徒会長に立候補してみたらどうかな? あ、何なら私が神木君の応援演説してあげようか??」

「えっ!? せ、先輩が応援演説っすか??」


 この学校の生徒会の任期は年間制ではなくて前期と後期の二期制に分かれている。 前期は4月~9月まで、後期は10月~3月までとなっている。


 そして生徒会長と副会長に関しては半年に一度開催される会長選挙によって選ばれ、残りの役職は新会長によって委嘱される形となっている。


 まぁ基本的に会長職に立候補する新規の生徒なんて存在しないので、選挙が近づいたら生徒会に所属している1年もしくは2年生でやりたい人がいれば、あとはもう立候補するだけでそのまま自動的に受かるというのが通年の流れだ。


「うんうん、頑張って演説するよー! それでどうかな? 神木君なら絶対に大丈夫だと思うし生徒会長に立候補してみない?」

「う、うーん……いや、北上先輩がそう言ってくれるのは嬉しいんですけど、でもやっぱり俺には荷が重すぎるんでやめておきますわ」


 北上先輩にそう言われて少しだけ考えてみたんだけど、でもやっぱり俺には生徒会長は荷が重すぎるのでやめておくと伝えた。 それにゲームをする時間がガッツリと減るのも普通に嫌だしさ。 いや正直そっちの方が主だった理由なんだけどね。


「ちぇー、そっかぁ。 私の生徒会の最後の仕事として神木君の応援演説を超ド派手にやってあげたかったんだけどなぁ。 んー、まぁでも仕方ないか、あはは!」

「いや北上先輩によるド派手な応援演説とか絶対に嫌ですよっ! ……あぁでもそっか、そういえば先輩達はもうすぐ引退なんですよね」


 生徒会に在籍出来る期間は一年生の後期から三年生の前期までなので、七種先輩と北上先輩はもうすぐ生徒会から引退する事になる。 この二人の先輩と一緒に生徒会活動が出来るのは夏休みが終わるまでだ。


 何だかそう思うと……ほんの少しだけ寂しい気持ちになってきてしまった。

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