34話(千紗子視点)
(千紗子視点)
授業終わりのお昼休み、私はいつも通りバレー部の部室に入って友人の早紀と一緒にお昼ご飯を食べていた。 まぁちょっと前から対人関係で色々とあったので、私は最近のお昼休みは用事が無ければほぼこの部室に入り浸っていた。
「どうしたの千紗?」
「んー? 何がー?」
という事で今は早紀と二人きりでお昼ご飯を食べている所だったんだけど、その途中で早紀に突然声をかけられた。
「いや何て言うか……千紗ってさ、最近はいつもため息ばかりついてたじゃん?」
「あー、まぁ確かにそうだったかもね」
「だよね? でも今日はずっとニヤけてるからさ、何か合ったのかなーって思ってさ」
「んー? そんないつもと表情違うかな?」
私はそう言いながら自分の頬をムニムニと触ってみる。 うーん、いつもと違う感じは全くしないんだけどなぁ。
「うん、全然違うよ。 あ、何? ひょっとしてまた変な漫画でも読み始めたとか?」
「いやあれ変な漫画じゃないからね、最後まで読んだけど凄い面白かったよ。 あ、良かったら早紀にも貸そうか??」
「いやいいわ、千紗と違って私欲求不満じゃないし」
「いやいや私も違うからね?」
「え?」
「え?」
何故だか早紀に変なキャラ付けをされてしまったようだ。 全くもう……悔しいからいつか早紀にも無理矢理全巻読ませてやる。 普通に面白かったんだけどなぁ。
「まぁそんな事はどうでもいいや。 それで? 何か楽しい事でもあったの?」
「んー……まぁあれかな、前の日曜日に遊びに出かけたのが凄く楽しかったからかなー」
「へぇ、そうなんだ。 でも千紗がこの時期に遊びに出かけるって何だか珍しいね」
「え? そうかな?」
「いやそうでしょ、だって最近も受験勉強で凄い忙しそうにしてたじゃん。 いやまぁそれは私もだけどさ」
あぁ、確かにそう言われてみれば最近はあまり友達とかと出かけたりしてなかったっけ。 受験が終わったらまた早紀とかと一緒に遊びに行きたいな。
「それで? 遊びにって誰と出かけたの?」
「え? あー、えぇっと、まぁその何というか……仲の良い友達かな?」
「ん? 何だか要領を得ない答えなんだけど? 普通に北川さんとかとじゃないの?」
北川怜奈とは生徒会に所属している三年生で私の友達だ。 怜奈とは一年の頃から共に生徒会に所属しているので私との仲もかなり良い方だ。 だから早紀が私の仲の良い友達として怜奈を挙げたのはそういう理由だと思う。
「あー、いや、今回は怜奈らへんのメンバーとじゃないんだよね」
「あれ、そうなの??」
いや確かに生徒会メンバーの子と遊んでたから惜しいっちゃあ惜しいんだけどさ。
「んー、でも私とか北川さんらへんのメンバー以外でさ、千紗が土日に遊ぶくらい仲の良い女子って他にいたっけ?」
「え? あー、えぇっと、その、さ……遊びに行ったのって、女子友達とじゃ無いんだよね、あははー」
「え……? て、えぇ!?」
「う、うわっ! ビックリした!」
早紀が大きな声を出したので私はビックリとしてしまった。
「え、な、何それ!? もしかしてそれって彼氏と遊びに行ってたって事? いや千紗に彼氏いたなんて私聞いてないんだけど?」
「いや彼氏とかそういう訳じゃないよ、普通に仲の良い男の子というか」
「は、はぁ!? そもそも千紗に仲の良い男子なんていたの!? だ、誰それ!? 少しでも変な男だったら私反対だからね!」
「さ、早紀は私の保護者か何かなの?? うーん、でもその子が誰かって言うとさ……いや説明するの普通に難しいな」
「は、はぁ? ど、どういう事? そんな複雑な関係の男と遊びに行ったの??」
「いやいや全然複雑じゃないんだけど……」
うーん、私と神木君の関係をどう説明したら良いんだろうなぁ。 リアルで言えば生徒会に所属している先輩・後輩の関係だけど、ネットで言えばバチクソに煽り合いの喧嘩をしている悪友の関係だ。 いやこんな関係をどうやって早紀に説明したらいいんだろ??
(素直に生徒会の後輩君と遊びに行ったって言えばいいのかな?)
でも早紀に何の脈絡も無く“生徒会の後輩男子と遊びに行ってました”なんて言っちゃうと、そのまま怜奈を経由して生徒会メンバーとかクラスメイトとかにも伝わっちゃいそうだしなぁ。 それが拗れて伝わっちゃうと変な空気になっちゃいそうだし、それに神木君にも変な噂とか立っちゃうかもしれないよね。 それは流石に申し訳ない気持ちになるし、うーん、どうしたもんかなぁ……




