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26話

「い、いや本当にそういうのじゃなくて! な、なんというかその、えぇっと……あ、そうそう! 親戚ってか親族っていうかその……めっっちゃ仲の良い従姉妹に会いに行くんですよ! だから彼女とかそういうあれじゃないんです!」

「ふ、ふぅん?」


 俺は早口になりながらも何とかそれっぽい言い訳をしてみた。 いやこんな嘘っぽい言い訳を信じてくれるかはわからないけどさ。


「そうなんだ? んーでもさ、じゃあデートとかでもないのに何でしかめっ面をしながらファッションサイトなんて見てたの? 親戚の子と会うだけなんでしょ?」

「う……そ、それは……」


 普通に痛い所を突かれてたじろいでしまった。


「……い、いや今度その従姉妹と二人きりで遊ぶ予定なんですけど、実は俺女の子と二人きりで出かける事自体が初めてで、だからこういう時の服装ってどうすればいいのかなーっていう感じで調べてました、あ、あははー」


 ちょっと待ってよ、先輩にこんな事を言うのメチャクチャ恥ずかしいんだけど! でも先輩に嘘つくと後々しっぺ返しを食らう事が最近あったから俺は諦めて素直に言う事にした。 いやそれでも若干嘘付いてるんだけどさ。


「へぇ、そうなんだ! うんうん、なるほどなー! あ、それじゃあさ、私がアドバイスしてあげよっか!」

「え!? い、いやそんなの七種先輩に悪いっすよ!」

「ふふふ、何言ってるの? 可愛い後輩の悩み事だよ? それを助けてあげるのが優しい先輩の役目だからね! だからスマホをちょっと貸してみてよ、ほらほら!」

「え、あ、は、はい?」


 そう言いうと七種先輩はニコニコとした表情で俺の方に手を向けてきた。 俺は先輩のその笑顔に気圧される形となりながらスマホを手渡した。 スマホを受け取った先輩はその画面を指でタップしながら上下に移動していった。


「うんうん、なるほどなるほどー。 ……うーん、神木君はここのサイトに乗ってるような“いかにも!!”って感じのファッションはまだ参考にしなくてもいいんじゃな? もうちょい大人になったら似合うかもだけど」

「そ、そうですよね。 まぁ自分もそんな気はしてましたけど」

「それよりも、神木君はもっとシンプルな服装の方が私は似合うと思うよ。 ほら、ちょっと前の生徒会の打ち上げでさ、休みの日に皆で集まった時の神木君の服装とかさ?」

「あぁ、懐かしいですねー、ってあれ普通のデニムにジャケット羽織っただけなんですけど!」


 先輩が言ってるのは去年の生徒会の打ち上げの時の集まりの話だ。 その生徒会の打ち上げでは焼肉食べ放題に行くって言われたから俺は汚れてもいい無難でシンプルな服装にしただけだったんだけど。


「あははっ。 まぁでもさ、何するのかは知らないけど、その仲の良い従姉妹さんと普通に遊びに行くだけなんでしょ? ならそれこそシンプルな方がいいんじゃない?」

「な、なるほど、そういうもんすか?」

「うんうん、そういうもんすよ。 もし私がその仲の良い従姉妹さんと同じ立場だったら、私はいつも通りの神木君といつも通り遊びに行きたいなーって思うよ? あっ! あとさ」

「え? あと?」

「ふふ、もし私だったらさぁ……チャラい服を着てる男の子よりもシンプルな服を着こなしてる男の子の方が好きだけどなー」

「なっ!? え!?」


 七種先輩は楽しそうに笑いながらそう言ってきた。 何だか俺に向かって言ってくれてるみたいで少しだけドキッとしてしまった。


「あはは。 まぁだからさ、神木君も女の子と二人きりだからってアレコレと悩まずにいつも通りの恰好でいつも通り楽しく従姉妹さんと会ってきなよー」

「……はい、そうですね、先輩に言われた通り悩むの止めていつも通りの自分で行きます。 色々とアドバイスありがとうございます!」

「ううん、全然大丈夫だよー! あはは、でもその従姉妹さんが羨ましいなー」

「え? 何でですか?」

「だって別にデートでも無いのにさ、その仲の良い従姉妹さんのために服装を一生懸命考えてあげるなんて……ふふ、神木君はその従姉妹さんの事がよっぽど好きなんだねー!」

「え゛っ゛!?」


 ほらやっぱり駄目じゃん! 従姉妹という設定にしたけどやっぱり無理があったって! しかも俺にとって最悪過ぎる展開じゃん! 好きな先輩相手に大きな誤解を与えてしまっているんだから!


「い、いや本当に違うんですって! だからそんなんじゃ――!」

「あはは、大丈夫だよ! 私だってさ、気になる人とか好きな人と二人きりで出かける時は、その人の事を一生懸命考えて服装とか髪型を選ぶからね。 こういう髪型が好きかなー、こういう服装の方が好きかなー? ってさ」

「い、いやだから……って、え!? せ、先輩って、そ、その……い、異性と二人きりで遊んだりする経験とかって、あ、あるんですか……?」

「ふふ、乙女にそういう事を聞いちゃ駄目だよー?」


 その発言にあまりにもビックリしてしまい、俺は声を震わせながら七種先輩に尋ねてみたが、肝心な所の答えははぐらかされてしまった。


「ふふ、それじゃあその好きな従姉妹さんと遊びに行くの楽しんできてね、神木君!」

「い、いやだから違うんです本当に好きとかじゃ――!」

「お疲れさまです!」「こんにちはー」「お疲れーっす」


 俺は必死に先輩の誤解を解こうとしたんだけど、ちょうど生徒会のメンバーが続々と生徒会室に入ってきてしまった。 その後すぐに生徒会の打ち合わせが始まってしまい、結局この日は七種先輩の誤解を解く事は出来ずに終わった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 間抜け面も拝みたいが、 ゴリさんが遠目て気づいて、突然お面とかしちゃうのも、想像してしまった。なんでだ。
[一言] いやぁ、全てが繋がった時の2人のまぬけ面(酷い)を早く読みたいわァψ(・∀・)ψ
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