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11話

『……おいこら今の反応アタシに対して失礼じゃない?』

「い、いやだってそれは絶対に嘘でしょ!」

『んなしょうもない嘘つかんて。 んー、なんなら、ミスコンの時の写真送ってあげてもいいよ? クロちゃんは悪用するような人じゃないのわかってるし』

「う゛ぇ゛っ゛!?」


 ゴリさんの写真!? しょ、正直めっちゃ気になる……気になるけど……!


「ぐぎぎ……い、いや……やめておぎまず……!」

『あれ要らないん? 別に遠慮しなくてもいいのに』

「いやでも……個人情報を電子データでのやり取りって意図せずとも流出しちゃう危険性ってあるじゃないすか」

『それはまぁ、確かにそういうのもあるかもだけど』

「それにこの界隈は出会い厨とかも多かったりしますし……俺は絶対にしないっすけど、そういうのを悪用する人とかもいるだろうし……だ、だから、そういうのは簡単に送っちゃ駄目なんすよ!」


 いやゴリさんの写真とかめっちゃ気になるよ? でもさ……それがもし万が一画像が流出とかしちゃったら、俺は謝罪してもしきれないから、その提案は遠慮する事にした。


『……はは、確かにその通りだね。 うん、じゃあ送るのはやめておこうかなー』

「はい、了解っす」


 ゴリさんは少しの間だけ黙った後に穏やかな声でそう返答してきた。 そしてすぐに今度は笑みを溢しながらこう喋りかけてきた。


『ふふ、でもさ、クロちゃんは今時には珍しい硬派な男子だよね』

「それ褒めてるんすか?」

『褒めてるよ、めっちゃ褒めてる』


 あんまり褒められてる気はしないけど、まぁゴリさんがそういうならそういう事にしておくか。


『まぁ、一応言い訳はしとくけどさ、アタシは誰にでも写真とか送る女じゃないからね?』

「え? そ、そうなんすか?」

『うん、この人なら“絶対に大丈夫!”って人にしか送るつもりはないよ? だからさ、アタシはクロちゃんの事をすっごい信頼してるって事だね』

「そ、そりゃあまぁ、信頼してくれるってのは嬉しいっすけどね」


 ゴリさんの言葉を聞いて俺は若干照れくさい気持ちになりながらそう返事をした。


『あはは、でもさー、気が付いたらクロちゃんとの付き合いも2~3年くらい経ってるんだよね。 そりゃあちっとは信頼するくらいの間柄になってるわね』

「確かに言われてみればゴリさんと出会ってからもうそんなに経ってるんすよね。 あはは、あの頃が懐かしいなー。 最初の頃はお互いによそよそしい感じだったのが今じゃあ嘘みたいっすよね」

『あぁそんな時期もあったねー、あはは。 あーあ、昔のクロちゃんは大人しくて良い子だったのになー』

「んなのお互い様っすよ。 あーあ、昔のゴリさんはもう少し素直で大人しいお姉さんだったのになー」

『いや今でもアタシ素直で大人しい女の子やろ?』

「はははお戯れをw」

『戯れてねぇよ!』


 俺が笑いながらそう言うとゴリさんはキレながらそうツッコんできた。


「あはは、いやでもゴリさん。 残念っすけど、大人しくて素直な女子はゲーム中に“バカカス死ねタコ”って仲間に向かって連呼しないんすわ」

『え? いやでも待ってクロちゃん、ちょっと話聞いてよ』

「は、はい?」

『それだけ聞くとさ、アタシただの暴言厨にしか見えないじゃん?』

「はい」

『でもさ、アタシが暴言を吐く相手は信頼してる人にしかしないんだよ?』

「……はい?」

『この人なら“絶対に大丈夫!”って人にしかアタシ暴言吐かないよ? だからさ、つまりアタシはクロちゃんの事をすっごーく信頼してるって事だね!』

「おいこら待て」

『あ、ちなみにだけどアタシが暴言吐くのはクロちゃんにだけだよ? どうよ? 逆にもっと喜んでくれていいんだよ??』

「どうしようちっとも嬉しくないんすけど」

『え!? クロちゃんって貶されると喜ぶタイプの男の子じゃなかったの!?』

「俺ドエムじゃないんですけど!?」


 勝手にドエム認定するんじゃない! あとそんな特別扱いは流石に嫌だわ!


『あははw やっぱりクロちゃんは面白いなー。 ……あ、昔話してて思い出したんだけどさ』

「全くもう……ん、思い出したって何をっすか?」

『うん、あのさー、最近“あたぎさん”見かけないんだけど、あの人今どうしてんだろ?』

「あー、そういや最近全く見てないっすね」


 “あたぎさん”とは、ゴリさんと同じく“#FPSフレンド募集”で知り合ったゲーム仲間の一人だ。 あたぎさんは関西出身の女性で、当時(2~3年前)は大阪の専門学校に通う学生だった。 年齢もそこまで離れている訳でも無かったし、年下の俺とゴリさんにも親しく接してくれていたので、当時は俺、ゴリさん、あたぎさんの3人固定でペクスをするのが一番多かった。


「最後に通話したのって、3~4週間くらい前でしたっけ? 仕事忙しいのかな?」

『あー、そっか、そうかもね。 確かに最後に通話した時に“仕事が終わらなくてヤバイ……”って言ってたわ』


 そんなゲーム仲間のあたぎさんも社会人になってからはあまりゲームはやれなくなってしまい、土日休みとかに時間が合えば一緒にやるくらいの頻度になっていた。 それでも少ない時間でも一緒に遊ぶ時は昔と変わらず気さくに遊んでくれる優しい人だ。


「まぁ、仕事が片付いたらまた遊びにきてくれますよ。 その時はまた3人で固定組んで遊びたいっすねー」

『そうだねー。 まぁでもアタシも受験勉強で忙しくなってくるから、その時は今度はアタシの方があんまりイン出来なくなってるかもなー』

「いやそれは仕方ないっすよ、ゲームよりも勉強の方が大事ですしね。 俺もあたぎさんも、ゴリさんが第一志望の大学に受かるように祈ってますよー!」

『お、それは嬉しいなー。 あ、あとついでにさ、もしアタシが全然イン出来なくなった時に、あたぎさんが帰ってきたら、アタシは元気に勉強頑張ってるから全然イン出来て無くても心配しないでねって伝えといてくんない?』

「あ、了解っす! あたぎさんが帰ってきたら俺の方から伝えときますね!」

『うんうん、ありがとうね! クロちゃん!』

「いえいえ!」


 そういってこの日はゴリさんからあたぎさんへの伝言を託されたのであった。

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