遥斗の日記Ⅱ
遥斗の日記第2段、はっじまるよ〜。
甲冑騎士団の本部ってところに捕らえられて一日くらい経ったが、思った以上にやることがないから、滞っていた日記をまた書こうと思う。
確か前回は宴会の一日目が終わった所まで書いてたっぽいな。
カルファ村に住む子ども達を助けたということで、宴会は三日三晩続いた。
用意も大変そうだし、肉の捌き方や調理方法を教えてもらうついでに、シャルフィーラさんの手伝いを率先して行っていたら、まさかのシャルフィーラさんからプロポーズをされてしまった。
シャルフィーラさんは優しいし、三人の子持ちとは思えないくらい美しい。包容力もあって傍にいると自然と笑顔になれる。なによりでかいのは最高だ!!
村の皆からも受け入れてもらったことだし、キョウヤ達も居心地が良さそうだし、このままここに住むのもいいかもな。
ただ、いきなりなこともあって、僕は答えを先延ばしにしてもらった。
やっぱりキョウヤの方針は聞いとかないとな。
シャルフィーラさんにプロポーズされた次の日、今度はフューイ君に呼び出された。
同世代の男はあの日の出来事を思い出すから苦手なんだけど、フューイ君は不思議と『ステラバルダーナ』の皆といる時と同じくらい一緒に居て楽しいと思えるから、不快感は一切感じないんだよな〜。
もしかしたらシャルフィーラさんの息子だからなのかもしれないな。
そんなことを考えていた僕に、フューイ君は頭を下げてこうお願いしてきた。
母と別れてはいただけませんか、と。
いきなりだったけど、怒りより先に納得をしてしまった。
思えば最初の時からフューイ君はどこか僕をシャルフィーラさんから遠ざけようとしていた。
きっと母親をすごく大事に思ってるんだろうな。少し羨ましいとも思えた。
だから、僕はフューイ君に嘘を吐いた。
元よりあの人と添い遂げようなんて思っていない、と。
いずれこの村から離れる僕なんかが、あの人の隣に居てはいけない、と。
自分を納得させるような嘘を吐いた。
だから、答えを出すと決めた日に、僕らに着いてきて僕の答えを聞いてくれと伝えた。
僕の家族は僕のせいで崩壊した。
そんな僕が他人の家族まで壊すなんて、それこそキョウヤに見限られてしまうだろう。
僕にとって何よりも優先すべきはキョウヤの心情だ。
キョウヤに嫌われるようなことは、例え僕が僕でなくなるとしても、しちゃいけないんだ。
それから数日、僕はシャルフィーラさんに会わないようにした。
あの人のことを忘れようと躍起になってた。それでも、心に空いた穴は埋まらない。
こんなこと書かなければ良かった。
タイチに泣いてるところ見られたせいで、乱雑によしよしまでされてしまった。
キョウヤ達が寝たきりの状態だったことを、今だけは嬉しく思うよ。
そして、あの日はやってきた。
突然シャルフィーラさんを空へと飛ばした角の生えた怪物。
魔人オニキスと戦ったあの日が。
魔人オニキスは僕ら三人がいるモダン湖にまるで最初からいたかのように現れ、シャルフィーラさんを吹き飛ばした。
武術を少しかじった程度の僕でもわかるほど、隙の無い男で、僕じゃ勝てないとすぐに悟ってしまった。
執事服に近しい格好やモノクルを見て、最初は人間なのかとも思ったが、額から生えた二本の婉曲した角が、それを否定した。
僕の手助けをしたとか意味のわからないことを言っていたが、余計なお世話と言うほか無い。
絶対に僕一人じゃ勝てない相手だとわかってはいたが、僕に戦わないという選択肢はなかった。
不思議な敵だった。
殺気をまったく感じず、それどころか表情一つ変えない生物。
攻撃を受ける前に速攻で戦おうと、掌底を叩きこんでやろうとしたのだが、攻撃を放った瞬間、顎に強烈な痛みがきて、視界がうまく定まらないような状況になってしまった。
魔人オニキスが動いていないのは、明滅する視界の中ではっきりとわかっていた。
だが、わからないのは魔人オニキスが顎に強烈な攻撃をもらって隙だらけの僕を放っておいたことだ。
それどころかわざわざ自己紹介をしてきたからもっと驚いた。
魔王クリスタ、『貴晶鉱爵』とかいう上級魔人、思いだせるのはそこまでだ。
正直あの戦闘はあまりにも圧倒的でほとんど覚えていないんだよなぁ。
次に目を覚ましたら、目の前に超絶美少女がいた。
今にも泣き出しそうな不安そうな目。それを見てときめかない男がいるだろうか!!!
いやいない!!!
あの若々しい若葉を彷彿とさせる緑色のサラサラな髪に、豊満なあの胸、僕の心はサンシャインした。
そんな僕らの恋路を邪魔したのは鋭く冷たい視線をこちらに向けてくるまな板系の女性だった。
別にまな板も悪くはないと思うけど、僕的にはもう少し欲しいところだ。
まぁ美人だったし、それはそれでありかもしれないと思わせてくる魅力をその女性からは感じたが、流石に後ろの連中からは魅力を感じるのは難しかった。
軽く百人は超える屈強な男達。
中には女の子もいたっぽいが、そんなことを考えていられるような状況じゃなかった。
かなり危険な状態ではあったが、なんか偉そうな人が前に出てきたので、シュウの改造釘打機を使ってその偉そうなおっさんを人質に取った。
一種の賭けではあったが、何もしなければ全員死刑になってもおかしくない状況だったので、半ば諦めの策を取った。
だが、メフィラスというリーダーっぽい人が出てきてくれたお陰で全部うまく行き、僕らは今日も無事に一日を乗り切れた。
キョウヤを無理矢理狩りに誘った男が騎士団長とかいう冗談みたいなことを言ってきたのには驚かされたが、どうやら本当らしく、正直今でも信じがたいと言わざるをえない。
そういえば日記を書いていて思ったんだけど、今こうして書いてる日本語って他の人には読めないんじゃないか?
もしかしたら密談に使えるかもしれないな。
でも、書くものと書く場所が無いのは問題だな。
今はこうして日記帳とボールペンを荷物の中から出させてもらって書いているが、今だけだぞと言っていた以上、三人が起きれば返してもらえないと考えた方が良さそうだ。
いや、待てよ……食事で持ってくる料理についてるソースとかを使えば案外解決するかもな。だけど椅子やベッドがあるこの部屋じゃ書く場所がテーブルにしかない。
監視カメラみたいなのは見当たらないが、万が一あった場合、コソコソとテーブルになにか書いていれば、怪しまれるのは必然。
床に書いていればそれ以上に怪しまれるな。
この部屋じゃ駄目だな。
部屋を引っ越そう。どうにかして床が石畳みたいな座れるような造りでありながら、周りからは見えにくい薄暗い場所に引っ越したいな。
その為に必要なのはマッピングだな。これはシュウの方が得意だし、任せてみよう。見つかって石畳の牢屋に移動することになれば万々歳だし。
食事時間も多めに取りたいが、食べ終わればすぐに片付けが入るからなぁ。よし、ここはタイチに大暴れしてもらうか。
後はどうやって脱出するかの策が必要だな。
キョウヤ達が起きる前に、少しは参謀らしく知恵を絞り出すとしますか。
そういえばこれ日記なんだったわ。
ボールペンだから消せないしな〜。
まぁ、いいか。日記はこれで終わっておこう。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。
その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。
こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。
もし続きが気になるって方がいれば、応援メッセージに「続きまだですか?」とでも送ってください。
・遥斗の日記を今回は休もうかなって思ってたんですが、これ休むと本編で書かなかったところが一生謎のまま終わっちゃうし、たまには一人称視点を書いてみたくなっちゃうので、書いてみました。
一人称視点なら一日で書き終わる不思議。未だに三人称視点難しすぎる。




