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推しから溺愛される義妹に転生しました  作者: 和執ユラ
第一部 第五章

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99.討伐開始です(第三話)


 ストウ森西側、中腹地点。

 ローレンスの班は担当区域に到達し、すでに戦闘を開始していた。


「順調だね」

「ああ」


 氷漬けのファングボアを見上げたオスニエルの言葉に、ジャレッドが頷く。

 ローレンスやジャレッドが氷漬けにした魔物だけではなく、他にもオスニエルの風魔法で切り傷を負って息絶えている魔物もそこら中に倒れている。騎士たちが倒した魔物もいる。

 ファングボア、コバルドッグと、フロスト公爵領でも馴染みのある魔物から、ジャレッドが実際に見るのは初めての魔物も多くいた。

 魔物の生態などの知識は頭に入っているので、どのような動きをするのか、弱点がどこでどう攻めればいいのかなど、戦い方は知っている。イメージトレーニングもしていたおかげか、スムーズに魔物を倒すことができて、ジャレッドはひとまず安心していた。同時に、自信にも繋がった。


「近づいてくる」

「わかってるよ」


 複数の気配を察知してオスニエルが警戒を促すと、ジャレッドも剣を構えていつでも魔法を発動できるように準備する。同じ班の騎士たちも同様だ。ローレンスは気配がするほうに手をかざした。

 木と木の間から、素早く狼の魔物が五匹ほど飛び出してきた。第一陣のその魔物たちを、ローレンスが一気に的確に凍らせる。見事に無駄のない魔法の発動だ。

 その次に飛び出してきた魔物たちをオスニエルが風魔法で吹き飛ばし、ジャレッドが氷魔法を纏わせた剣で切りつけ、騎士たちも剣と魔法で倒した。


(いい感じだ)


 怪我もなく対応できたジャレッドたちに、ローレンスは頬を緩める。実力が備わっているのもあるけれど、連携も上手くとれていた。ジャレッドとオスニエルが息ぴったりなのはもちろんのこと、騎士ともお互いの動きを邪魔せず、フォローもできている。合わせているオスニエルの力量には目を見張るものがあった。


 ローレンスは本来、もっと奥のほうの危険な区域を担当するはずだった。しかし配置換えをしたことで、実力者班の戦力は激減だ。それほどローレンス一人の戦力が非常に大きい。

 自分という戦力がいかに重要であるかを理解しているため、ローレンスは一班にしては広い区域を担当することにして人員を他の区域に回すという判断をした。

 ローレンスの班にいる騎士はストウ森の討伐経験があまりない者で、ジャレッドも共に経験を積ませて成長させることも考えつつ、ローレンスは動いている。


「よし、移動しよう」


 近くの魔物をひと通り倒したため、ローレンスは魔物の気配を探り、次の標的の元へジャレッドたちを誘導した。獣道を進むローレンスの剣鞘にくくりつけられているタッセルが揺れる。

 ジャレッドが魔物を狩って入手したという魔石と、紺色や銀色の紐を使ってリデラインが作った、世界に一つだけの、ローレンスのためだけのタッセル。内ポケットに入れているハンカチもあり、ローレンスはやる気に満ちていた。


「森や山だと火の魔法が使えなくて手数減っちゃうからやなんだよね。俺が危険になったらきっちりフォローしてよ、ジャレッド」

「風魔法でばんばん魔物切り刻んでるから平気だろ」


 後ろの二人が軽口をたたいている。集中していないのではなく、程よく緊張をほぐすための会話だ。

 ジャレッドは初めての過酷な討伐ながら、かなり動けていて心配なさそうだ。オスニエルは相変わらず立ち回りが上手い。騎士たちも、ローレンスが想像していたよりずっと動きがいい。


「――ローレンス兄さん」


 ジャレッドとの会話に花を咲かせていたオスニエルが立ち止まったので、ローレンスも足を止めて振り返る。他の者たちも歩みを止めた。


「意地悪だね」

「いい探知力だ、オスニエル」


 ローレンスが満足げに口角を上げたところで、ジャレッドは正面から近づいてくる気配に気づいた。強い反応が猛スピードでこちらに向かってきており、やがて視界ではっきり捉えることができる距離になる。

 白が交じった淡い茶色の大きな鳥型の魔物が上空に現れ、急降下してきた。ジャレッドや騎士が剣を引き抜くよりも先に、ローレンスが一切魔物を見ずに魔物を凍らせる。

 凍った魔物はそのまま、ローレンスたちから少し離れたところに勢いよく落ちた。物凄い音が響き、地面が揺れ、草木が葉の擦れる音を出す。

 墜落した魔物を見て、ジャレッドは眉を寄せた。


「わざと気づかないふりしてたのかよ、兄上」

「君たちがどのタイミングで気づくか確かめたくてね。オスニエル以外はちょっと遅かったかな」


 ジャレッドとフロスト騎士団の騎士たちは、及第点とはいかなかった。


「ストウ森は魔力や瘴気が多くて国内でも上位に入るほど探知が難しい場所だから、仕方ないは仕方ないけどね。もっと探知の精度を上げる訓練をしたほうがいい」

「……はい」


 騎士が悔しそうに返事をする。ジャレッドも似たような表情だ。

 ローレンスは鳥型の魔物に視線を向け、真剣な顔つきになった。

 魔物の数が増えているから縄張りの入れ替わりもあるだろうけど、あの魔物は本来、もっと森の深部にいるはずの魔物だ。飛ぶことができるため行動範囲は広くてもおかしくないけれど、ストウ森においては例外である。ストウ森に生息しているあの鳥の魔物は高級志向とでも言えばいいのか、深部を縄張りとしている強い魔物しか食べないのだ。そのため、このあたりに出てくることはほとんどない。


(事前の調査ではこんな報告はなかった)


 つまり、今日起こったばかりの変化ということだ。ただの偶然か、それとも理由があるのか――。


「!」


 ローレンスはぱっと振り返った。強い魔力と瘴気を感じたためだ。やはりその反応も、森の中腹にはないはずの強さであることが窺える。


「みんな下がって」


 森の奥を見てローレンスが警戒心を露わにするので、皆に緊張感が走る。

 程なくして、白い魔物が姿を見せた。正体に気づいたオスニエルが驚愕の声を上げる。


「スノズグリー……!」


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