表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第五話 捨てられ少女はぺたぺた歩く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/62

05-05


「まさかこんな子供がここまで来るなんて思わなかったわ」


 部屋に入ってきたのは女性の兵士さん。兵士さんはリフィルたちを見ると、目を丸くして驚いていた。まんまるおめめ。

 剣をしまってくれた兵士さんに、旅をしていてここまで来たことを説明。とりあえずはそれで納得してくれたみたい。安心。


「へいしさん、いきのこり?」

「ええ、そうね。姫様が隣国の菓子が欲しいと言ってね……。城になかったから、私が買いに行ったのよ。その間に……」

「まもの、きた?」

「そう」


 幸運、だったのかも? そのおかげでこの人は生き残れたのだから。

 でも、兵士さんはとても悔しそうにしていた。


「私は……本来は姫様の護衛だったの。ちょっとわがままだったけれど、無理難題を言うような子じゃなかったわ。明るくて、がんばりやで……。お菓子も、お菓子好きのメイドがいつか食べてみたいって言っていたから、こっそり買っておいてサプライズにするつもりだったのよ」

「いい人だったんですね」

「ええ。せめて……私は、あの人を守って死にたかった……!」


 ぎゅっと剣の柄を握る兵士さん。その気持ちは、ちょっとだけ分かってしまう。リフィルも、あの子と一緒にいたかったから。


「その……。ドレス、ごめんなさい……」


 アレシアがそう言うと、兵士さんははっとして笑顔で首を振った。


「気にしないで。姫様も、持ち物がこのまま朽ちてしまうより、誰かの役に立った方がきっと喜ぶはずだから。宝石とかも持っていって構わないわ。ドレスも……着せてあげる」


 ほらほら立って、と兵士さんに促されて、リフィルとアレシアは立ち上がった。とっても優しい兵士さんだ。どれが似合うかな、なんて言いながら選び始めてる。


「姫様はいろんな国の服をお持ちだったから……。いろいろあるわよ」

「おー」

「気に入った衣服があれば、それも持っていってね」

「いいの?」

「いいのよ。きっと、その方が喜ぶから」


 リフィルにはよく分からない感覚だけれど、そういうものらしい。きっと姫様という人は、とってもいい人だったんだと思う。

 そんな人も魔物に食べられてしまったのだと思う。良い人も、悪い人も、みんなみんな食べられて……。会ったことがないから実感はわかないけど、悲しいことだと思う。

 兵士さんに手伝ってもらって、ドレスを着てみる。アレシアは赤いドレスで、リフィルは青いドレスだ。背中がぱっくり開いたドレスで、なんだかとってもすーすーする。


「へん」

「そう? リフィちゃん、かわいい!」

「んぅ……。シアも、かわいい」

「えへへー」

「にゃあにゃあ!」


 二人で見つめ合って、アレシアがなんだか照れ臭そうにはにかんだ。それがとってもかわいいと思う。リフィルもかわいいらしいけど……。よくわからない!

 レオンはにゃあにゃあ鳴きながら器用に後ろ足で立って、前足でぺふぺふ拍手してくれてる。似合ってる、と言ってくれてるのかも。そんなレオンもやっぱりかわいい。


「うんうん。二人とも、とってもかわいい!」


 兵士さんがにこやかに褒めてくれる。褒めてくれるのはいいけど……。また新しい服を取り出そうとしてる。

 なんだか、嫌な予感がする。具体的には、かなり前に訪れた魔道具職人さんがいる町の、お針子さんの勢いに似てる。そんな気がする。

 つまりは! めんどくさいやつだ!


「シア。まかせた」


 そっと逃げようとしたら、腕をがっしりと掴まれてしまった。


「にがさないよ、リフィちゃん」

「にゃ」


 なんと足はレオンにホールドされてしまってる。前足で抱きつくような形でがっしりと。かわいい! ふりほどけない! 困る!


「さあ、次にいきましょう」


 兵士さんが出してきた服は、また違うタイプの服だ。今回のはドレスじゃなくて……。ローブ。魔女さんが着ているようなローブだ。


「ほらほら」


 兵士さんに急かされて、お着替え。ドレスは着るのも脱ぐのも大変だけど、ローブはとても簡単だった。ポンチョのようなローブなので。頭から着て、頭を出す。ただそれだけのローブだ。


「リフィちゃん、魔女っぽい!」

「シアも、まじょ」

「えへへー」


 みんな魔女っぽい。ただ、このローブは手も出せないから、ちょっと動きづらいと思ってしまう。不便。ちょっと、不便。

 でも兵士さんもレオンも喜んでいた。レオンは訳知り顔でうんうんと頷いてる。なんだこの猫。


「どうしてこんな服があるんですか?」


 アレシアが聞くと、兵士さんが苦笑いして教えてくれた。


「姫様は魔法に憧れていたのよ。魔女にもちょっとだけ憧れていたみたいでね……。あまり人には言えなかったから、この服もほとんど着れなかったわね」

「そう……」


 魔女が、リフィルの知る魔女さんみたいな人ばかりだったら、きっと違っていたんだと思う。魔女さんのような人が少数なのは分かってるけど。


「ほら、次!」

「まだあるの?」

「次で最後にするから!」


 そんな兵士さんに呆れながらも、着替える。これもまたちょっと着方が分からなかったけど、兵士さんが手伝ってくれた。

 なんだか不思議な服だ。明らかに今までの服とは違うもの。


「これは極東の民族衣装で、和服、というものよ。不思議な形状だけど、かわいいでしょ?」

「かわいい?」

「リフィちゃん、かわいい!」


 アレシアはそれしか言ってない気がする。でもアレシアもかわいいと思う。

 そしてレオンは。


「にゃああああん!」


 右前足を掲げていた。ガッツポーズ、みたいな感じ。我が人生に悔いなし、みたいな言葉が聞こえてくるような気がする。きっと気のせい。

 でも……。レオンが好きなら、たまになら着てもいいかも。

 結局、着させてもらった服は全部もらうことになってしまった。売るのももったいないので、大事にさせてもらおうと思う。


壁|w・)きせかえ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お着替え…… レオンそこ代われ! なまきg (兵士さんとレオンに処せられました)
姫様=聖女なら王子に処刑されてるけど まさか魔物に虐殺されたではなく、身内に処刑されたとは気づかないままだろうな しかも、主の敵をとる前に近い未来に屠られるのが確定してるし しかし、直接言及がないの…
幼女の着せ替えイベントは逃げられない!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ