05-01
ぺたぺた。てくてく。ふみゃあ。
のんびり歩き続けて、お昼前。リフィルたちはついにその場所にたどり着いた。
「おー……!」
「すごーい!」
「にゃあ!」
目の前に広がるのは、とても栄えていただろう街並み。背の高い石造りの建物がいくつも並び、さらに奥にはとても、とっても大きな建物が見える。お城。お城だ。すごい!
「ここが、おうと?」
「うん! そのはずだよ!」
「おっきい!」
「おっきいね!」
今までも大きな街というのは見てきたけれど、ここまで大きな街並みは初めて。ちょっと感動だ!
でも。そんなに大きな街並みだけど。
「しずか」
「うん……」
とても、とても静まり返ってる。物音一つしない、不気味な静寂。背後の森からは動物たちや風が奏でる音が聞こえてくるのに、目の前の町からは何も聞こえない。それが、とっても不気味で怖い。
「だれも、いない?」
「どうだろう? ここが襲われてからもうたくさん時間が経ってるから、誰かがこっそり住んでいてもおかしくないと思うけど」
確かに、と頷く。レオンが。レオンはなんだか訳知り顔で、その様子がとてもかわいい。なのでもふもふしてみる。頭の上のレオンを抱えて、もふもふぎゅー。お腹に顔をうずめて、深呼吸。
「リフィちゃん、何やってるの……?」
「どこかできいた、ねこすい?」
「えっと……。楽しい?」
「おちつく?」
なんだか不思議な感覚。きっとレオンからは人をだめにする成分が出てるんだと思う。なんて危ない猫なんだ!
「ふにゃあ! うにゃあ!」
レオンが抗議の声を上げてぺしぺし叩いてくるけど、気にせず吸います。すーはー。
「うん。えっと……。行こう?」
「うん」
とりあえず。せっかく来たので探検だ!
かつては石畳で整えられていただろう街並みも、今ではあちこちに雑草が生い茂る荒れた道。そんな道を、のんびりと歩いていく。本当に静かで、森から離れると物音がほとんどしなくなってしまった。
「行商人さんの話だと……。王都はたくさんの魔物に襲われちゃったらしいね」
「うん」
てっきりリフィルの村だけなのかと思っていたけど、他にも魔物に滅ぼされた場所はあったらしい。王都もその一つ。他にあるのかは分からない。
当たり前だけど、王都はリフィルの村よりもずっと大きく、人も多かったと思う。それがこうして滅ぼされているのだから……。きっと、想像もできないたくさんの魔物が襲ったんだと思う。
思う、ばかりの想像の話。真実を知る術はリフィルには、ない。
そもそも興味もないと言うのは内緒である!
「結界はどうするの?」
「はる」
「誰もいないのに?」
「だれかが、くるかも」
確かに荒れつつあるけれど、それでも雨風をしのげる建物はたくさんある。住む場所に困った人がここに来て、住み始めるかもしれない。
そんな人たちのためにも、王都を覆う結界はちゃんと作ってあげておきたい。
「どれぐらいかかりそう?」
「んー……。じゅう……じゅうご……。それぐらい?」
「そっか」
今までで最長だけれど、こればかりは仕方ない。がんばらないと!
「あとはどこに寝泊まりするかだね」
「できれば、まんなかがいい」
「お城とか?」
「おしろ!」
お城はとっても気になる! 絵本なんてものはリフィルは読んだことがないけれど、お姫様というものの存在は知っているから。ぼんやりと、だけど。
「お姫様ごっこする?」
「しちゃう」
お姫様ごっこ。なんだかとっても気になる。お城に行けばいいのかな?
けれど、問題もある。結界の魔法を使うためには、できるだけ地面に近い方がいい。お城の階段をたくさん上ると、魔力がそれだけ魔脈に届きづらくなってしまうから。
それはアレシアも分かっているからか、んー、と少し考えて、
「普段は一階の部屋を使って……。ちょっとだけ、上に遊びに行くとか。ちょっとぐらい遊んでもいいよね?」
「んー……」
リフィルとしては、他の町にも早く結界を張ってあげないとと思うけど……。もうすでに聖女の結界は消失してしまった。だからここから先は、一分一秒を惜しんでも変わらないと思う。滅んでいない場所は、しっかり防備を固められた場所だろうから。
なんて自分に対する言い訳をしているけれど、リフィルがお城に興味があるだけともいえる。お城。見てみたい。お姫様、見てみたい。
「にぃ」
レオンも賛成みたいで、早く行こうとばかりに先にお城へと歩き始めてしまった。
「あは。気が早いね、レオン」
「ん……。いこう」
「うん!」
お城。王都。お姫様。どんな人がいたのか、リフィルははっきりとは分からないけれど……。それでも、うん。とても、楽しみだ。
お城に何があるのかな。そんなことを考えながら歩くリフィルは、ちょっぴりわくわくしていた。
壁|w・)今まででいちばんおっきな街にわくわくの子供たち。




