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捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第一話 魔女との交流

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01-04

 食べ終えた後は、眠るだけ。適当に木の下で横になろうとして、


「リフィル? 何してるの?」


 何故か魔女さんに止められてしまった。


「ねる」

「ああ、うん……。それはいいんだけど……。え、そのままで?」

「……?」

「嘘でしょ……? ああ、でも、寝袋なんて持ってないか……」


 寝袋。寝るための、袋?

 リフィルが首を傾げていると、魔女さんがまたローブの内側から何かを出してきた。かなり大きな毛布、みたいなもの。ぬくぬくしてそう。

 それにしても。本当にあのローブはどうなっているんだろう。とても不思議。とても気になる。

 気になるからそろっと近づいてローブをぺろっとめくってみた。あれ? 普通の服だ。


「わあ!? なにやってるの!?」

「ふしぎ」

「なにが!?」

「いっぱい、ものをだす」

「え? あ、そういうこと……」


 どう見てもお鍋や寝袋というものを持てるようには見えない。リフィルが首を傾げていると、魔女さんが腰に下げている袋を見せてきた。茶色っぽい、普通の布袋。大きさは大人の拳二つ分ぐらい。何が入っているんだろう。


「これに全部入ってるのよ」

「ちいさい」

「アイテム袋という魔道具だからね」

「まどうぐ」


 魔道具。なんだっけ。あの子がそれについて両親と話していたのは覚えているけど、どういった内容かまでは残念ながら思い出せなかった。


「魔道具っていうのは、簡単に言えば特定の魔法をかけた道具。ただそれだけ。この袋は亜空間の魔法をかけていて、見た目以上に物が入るわ」

「べんり」

「そう。とても便利。作れる人は少ないから、かなり高いんだけどね」


 それはとても残念。すごく便利そうだったから、是非ともどこかで手に入れたいと思ったのに。お金を稼ぐ手段がないリフィルには無縁のもののようだ。

 ちょっとだけしょんぼりしていたら、魔女さんが優しく笑いながら言ってきた。


「でも、私が作れるからね。家に帰ったらになるけど、リフィルの分を作ってあげる」

「いいの?」

「いいの」


 それはとても嬉しい。旅に必要なものをたくさん入れられそう。

 リフィルがほんのり機嫌良くしていたら、それが魔女さんにも伝わったみたいでくすくす笑われてしまった。ちょっと恥ずかしい。

 魔女さんが寝袋とやらを広げる。毛布みたいな温かいものを布みたいなものに入れて、持ち運びしやすくしたもの、なのかな? 毛布でいいと思うんだけど。


「ほらほら、リフィル。おいで」

「……?」

「おいでおいで」


 何故か呼ばれたので魔女さんの側へ。するとそのまま、寝袋の中に引きずり込まれてしまった。

 寝袋の中は……ぬくぬくだ! とても、ぬくぬく。すっごく気持ちいい。さらに魔女さんに抱きしめられているためか、人の温もりも感じられてとても心地良い。


「おー……」

「ふふ……。ちゃんと寝てね?」

「わかった」

「おやすみ、リフィル」

「おやすみ、まじょさん」


 言われなくても、これならぐっすり眠れそう。

 リフィルは目を閉じると、そのまま心地良い眠りへと沈んでいった。


   ・・・・・


 結構疲れていたのかもしれない。腕の中のリフィルは、あっという間に眠ってしまった。すやすやと、整った寝息を立てている。自分の体にしがみついていて、それがとても子供らしい。

 求めているのは自分なんかじゃないとは思うけど。


「この子は……一人で旅をするつもり、なのよね……」


 それは……とても寂しい旅だ。新しい結界を伸ばしながら、この国を巡っていく旅。いつ終わるのかすら分からない旅。そんな旅を、一人でやるなんて……。


「それは、だめ」


 絶対にどこかで潰れてしまうと思う。そして、潰れてしまっても……この子は旅を続けるだろう。自分の心を壊してでも、押しつけられた使命を全うするんだと思う。

 一緒に旅をする存在が必要だ。そしてそれは、魔女ではない。魔女が、というより誰かの同行は、この子は望んでいないから。


「それなら……」


 この子の話を思い出す。自分の体を使っていた誰か。この子を残して、どこかに行ってしまった誰か。一番の理解者になれるはずの、誰か。

 魔女は目を閉じて計画を立てていく。せめてこの子が、少しでも楽しく旅ができるように、と。


   ・・・・・


「この子は私の使い魔のカラス、フォースよ」


 朝。リフィルは魔女さんからそんな紹介を受けていた。魔女さんの肩にいるのは、真っ黒なカラスのフォース。フォースはじっとリフィルを見つめてきていて、なんだかちょっぴり照れ臭い。

 そして……。間近で見る、初めての動物だ。もちろんあの子が見ていた動物はいるけれど、リフィルはその時はぼんやりとしていたから。

 ちょっとだけそわそわしてしまう。撫でてみたい。触ってみたい。さらさらなのかな? ふわふわなのかな?

 そんなリフィルの感情を察してくれたのか、魔女さんはにこにこしながら言ってくれた。


「撫でてみる?」

「いいの?」

「もちろん。フォース」


 フォースがふわりと飛び上がり、リフィルの肩にとまる。おお、なんだかすごい! 手を伸ばして、指先でフォースの頭を撫でてみる。ちょっとだけもふっとしていて、そしてさらさらだ!


「かわいい」


 リフィルがそう言うと、フォースはそうだろうとばかりに翼を広げた。頬に当たってちょっとくすぐったいけど、翼もふわふわだ。いいなあ。


「フォースが私の家まで案内してくれるわ。その子についていけばいいからね」

「ん……。まじょさんは。べつ?」

「私はちょっとやることがあるから」


 魔女さんは忙しい立場なのかもしれない。魔女としてのお仕事がある、のかも? 魔女としてのお仕事が何なのかは分からないけど。

 朝ご飯にふわふわのパンをリフィルに渡すと、魔女さんは箒にまたがってどこかに飛んでいってしまった。方向は、リフィルが歩いてきた道を戻る方。何か忘れ物……村に用事があるのかもしれない。もう誰もいないけれど。

 不思議な気持ちになりながらも、リフィルはぱくりとパンを頬張った。とってもふわふわのパンだ。初めて食べる食感に、ちょっと興奮してしまう。


「カア」

「んぅ?」


 もちゃもちゃパンを食べていたら、フォースが一鳴きしてきた。じっとパンを見つめてる。朝ご飯、まだなのかな? もしかしてこのパンは二人分?

 食べ過ぎてしまったかもしれない。残りをフォースに差しだそうとしたら、なぜかフォースに呆れられたような視線を向けられた、気がした。そんな気がしただけ、だけど。

 フォースはパンをちょっとつついて、欠片程度の大きさを引きちぎる。それを食べ終わると、もうパンには見向きもしなかった。


「もういいの?」

「カア!」


 そう鳴いて、ぱたぱたとフォースが飛び始める。ゆっくりと進み始めたので、リフィルもそれに従って歩き始めた。パンを食べながら、フォースの後ろを歩く。

 ぺたぺたもちゃもちゃ。パンおいしい。


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― 新着の感想 ―
ほほぅ…同衾…よい旅仲間を得ましたな(草葉の陰より
カラスは今日から友達や
このままあの子を眠らせて上げてほしいという気持ちと、 救われて欲しいという気持ち…。心が2つあるぅ…。 少なくとも事情を全部聞いたら転生させた神は邪神扱い間違いなしかなって…。
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