表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第四話 聖女の家族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/62

04-01


 ぺたぺたてくてく。今日もリフィルはアレシアとのんびり歩く。リフィルの頭の上ではレオンが気持ち良さそうに寝息を立てていて、とってもかわいい。


「村、ないね」

「ない」

「困ったね……」

「こまった」


 今日は直前の村で聞いた隠れ里に向かっている最中。そう、隠れ里。隠れ里! なんだかかっこいい響き!

 それはそれとして、初めて聞いた時はとっても驚いてしまった。そんな村があるなんて知らなかったので。知らないままだったら、そこだけ結界から漏れてしまうところだった。気をつけないと。

 問題はその隠れ里が全然見つからないこと。方向は間違い無いはずなのに、全然見つからない。小さい集落みたいなものだと聞いているから、もしかしたら方向をちょっと間違えてしまったのかも?


「おにく、なくなりそう」

「うん……」


 魔物のお肉もそろそろ尽きそう。リフィルは食べなくても大丈夫な不思議な体だけど、アレシアとレオンがどうなのかまでは知らない。だからちょっと心配だ。

 普段ならたくさんいる魔物を狩ればいいのだけれど………。この周辺には魔物の気配がない。だから、ちょっと困る。

 引き返すことも考えた方がいいのかも、なんて考えていたら、頭の上のレオンがぴくりと動いた。


「にゃあ」

「かわ? あるの?」

「にゃ!」


 あっち! とばかりにレオンが小さいお手々を突き出す。とりあえずだっこしてその前足をにぎにぎした。とってもいい気持ち。


「ふしゃ!」

「リフィちゃん、レオンが怒ってるよ?」

「レオンがかわいいのがわるい」

「うにゃあ」


 それほどでもない、とレオンは満更でもなさそう。ちょろい、とアレシアがつぶやいたけど、レオンは流すことにしたのか反応しなかった。

 ともかく。川があるらしいから、そっちに向かって歩いてみる。ぺたぺたてくてくしばらく歩いて、すぐにそれが見えてきた。


「おー」

「わあ!」


 とっても綺麗な小川がそこにあった。川の深さはそこそこ、かな? 幅はちょっとしたお家ならすっぽり入ってしまうぐらい。川底まで見える透き通った川だ。

 飲み水には魔女さん謹製の魔道具があるので困っていない。だから川なんてと思うかもしれないけど……。そう、川にはお魚がいる!


「つり、やろう」

「つり……。釣り? リフィちゃん、できるの?」

「たぶん」

「たぶん……?」


 やったことはないけど、あの子の中からお魚を釣っているのは見たことがあるから。道具も、なんとなく分かる。

 えっと……。まずは細長い枝を探して、糸をくくりつける。糸はずっと前に立ち寄った町で、ミントという人からもらったものがある。それを使ってみることにする。

 あとは、先っぽにエサをくくりつけるわけだけど……。お肉。お肉にしよう。お魚もお肉を食べたいはず。


 そうして準備を進めるリフィルを見つめる二つの顔はとても対照的だった。

 アレシアは、すごい、と感動している顔。

 そしてレオンは、見てられないとばかりに前足で顔を覆ってしまっていた。

 少しして、釣り竿の完成。誰がなんと言おうと、釣り竿なのだ!

 糸の先っぽを放り投げて、お肉を川に沈める。こうすれば獲物がかかるはず……。


「…………。かからない」

「何もないね」


 おかしい。こんなはずではなかったのに。

 首を傾げるリフィルと、不安そうなアレシア。頭を抱えるレオン。その様子を見守っていたカラスの向こう側では、魔女さんが頬を引きつらせていたりするけど、当然誰にも気付かれない。

 拳大のお肉を魚がどうやって食べるのか。食べたとして釣り針もないのだけど。そもそも糸も小さい子がくくりつけただけでゆるゆるで……。あ、抜けた。


「おにくが!」

「お肉が!」


 リフィルとアレシアが絶望したとばかりに顔を歪ませる。レオンは仕方ないとばかりに立ち上がって、巨大化して川に入っていった。




「レオン。すごい。かしこい。つよい」

「本当にすごい! レオンのおかげ!」

「にゃあ……」


 たき火の前で、お肉の回収ついでに川魚をたくさんとってくれたレオンを褒めるリフィルとアレシア。レオンはとっても複雑そう。

 今は川原でたき火を起こして、お魚を焼いているところ。小川の反対側はちょっとした段差になっているけど、リフィルたちがいる方は小石がたくさんの平地だった。火事の心配もないので、今日はテントのお外でたき火とご飯だ。

 お魚に枝を突き刺して、たき火の側に固定してじっくりと焼く。しっかりと焼けたら、枝の両端を持って食べる。もぐもぐと。


「おにくとはちがう、ふしぎなしょっかん」

「リフィちゃん、お魚は初めてだったね」

「おにく、レオンがとってくれるから」

「あはは」


 お肉の方が簡単なので! お魚みたいに骨も多くないので!

 そうしてレオンがとってくれたたくさんのお魚をみんなで食べ終えて。テントの中に戻ろうかな、と思ったところで、誰かがこっちに近づいてくるのが分かった。

 レオンが鋭く、気配のした方を睨む。リフィルとアレシアも物音がする方に視線をやって。


「うん? 明かりがあるからなんだと思ったら……。子供?」


 怪訝そうにしている男の人が出てきた。悪意は感じなくて、純粋に戸惑っているような雰囲気。リフィルとアレシアは、多分同じことを思ったと思う。

 隠れ里の人かも、と。


壁|w・)おさかなもぐもぐ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どうして誰も釣りを教えてくれなかったのか 仕方ない、ここはゲーム内釣り歴1年以上のお兄さんが付きっきりで教えてあげよう。リュウグウノツカイも釣れるぞ( ・`ω・´)
レオン(人間形態)&魔女「「……一般常識と釣りの方法くらい教えとくんだった……!」」
>拳大のお肉を魚がどうやって食べるのか。 感想欄を大草原にしないでくださいよぉ~www
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ