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捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第三話 魔道具職人

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閑話 関係のない聖女2


「これは……」

 私はその結界を見て、ただただ驚くことしかできませんでした。




 サハル王国にしっかりと結界を張り終えた私は、チェスター様と共にカーザル王国を訪ねることにしました。私が張っていた結界はすでに消えてしまっているので、護衛の騎士たちも一緒です。すでに危険な魔物が多数入り込んでいるでしょうから。

 魔物だけではありません。もしかすると、魔王ですら入り込んでいる可能性があります。もし魔王と遭遇すれば……。考えるだけでもぞっとします。

 だから。護衛の騎士たちは、護衛としての役目だけではなく、もしものための囮の役目もあります。皆さんそれを承知で一緒に来てくれているのですから、頭が上がりません。


「本当に、申し訳ありません……。私のわがままに付き合っていただいて……」

「なんのなんの。聖女様を守れるのなら、この命惜しくはありませんよ」


 老齢の騎士がそう言ってくれます。他の騎士たちも同じ意見らしくて、みんなが頷いていました。

 もし魔王が出てきても、全力で結界を張ればきっと時間稼ぎはできるはずです。なんとしてでも、全員で生きて帰りたいと思います。

 そうして、私とチェスター様、そして騎士十名でカーザル王国の森を進んでいって……。唐突に、それが現れました。


「これは……結界……?」

「何か見つけたのかな?」

「チェスター様……。はい。ここに、結界があります」


 チェスター様は私が示した場所を怪訝そうに見つめていましたが、首を傾げてしまいました。騎士の方々も一部は分かっていないようです。

 けれど、魔法を使える騎士の方々はその結界に気付いたようでした。


「確かに……結界、のようなものがありますね……」

「聖女様の結界の名残、でしょうか?」

「いえ……。おそらく、違います」


 私の結界とは根本的に違う結界です。そう、これは……。


「私の結界よりも、ずっと強力な結界ですね……」

「なんと……」


 強度は大差ないかもしれません。ですが、この結界にはとんでもない特徴があります。それは。


「維持する必要がありません……」

「…………」


 私の言葉に、チェスター様を含めみんなが絶句しました。

 私の結界は、結界の維持のために定期的に魔法を使う必要があります。大量の魔力を一度に使えば一年は持続するようですが、それでもそこが限界です。放置はできません。

 けれど。目の前の結界は、地下から魔力を吸い上げて維持しているようです。おそらくは魔脈を利用しているのでしょう。

 原理は分かるのですが、方法が分かりません。少なくとも、私は魔脈に魔法を届かせる術を知りません。


「では……。この国はもう安全なのか?」


 チェスター様の問いに、私は小さく首を振りました。

 この結界は確かに私の結界の上位のものと言えます。ですが、あまりにも魔法が複雑すぎるのでしょう。この国を覆うことはできていません。


「少しずつ、結界を伸ばしているようです。ここにあるのは結界の道、ですね。多分ですけど……。村や町をそれぞれ繋ごうとしているのかと……」

「それは……。時間がかからないか……?」

「はい。とても。十年、いえもっと……。とても時間がかかります」

「…………」


 あまりにも気が遠くなるような作業です。そんな人を心から尊敬します。

 できれば、一度会ってみたい。そして何か手伝えることがあれば協力したい。そう思いました。


「チェスター様。私は、この結界を作っている人に会いたいと思います」

「ああ、わかった。もちろん一緒に行くとも」

「ありがとうございます!」


 そうと決まれば、方法は簡単です。この結界に沿って向かえばいいだけですから。問題は、どちらから来て、どちらに向かっているのか、それが分からないことぐらいです。

 行き先を決めるためにしっかりと結界を調べようとしたところで。


「今頃になって戻ってきたのね」


 そんな声が上空から聞こえました。


「誰だ!」


 騎士の皆さんが剣を構えます。私も結界の準備をして上空を見ると、一羽のカラスが飛んでいました。

 そのカラスは私たちの目の前に下りてきます。そして、ぐにゃりと形を変えて人の姿になりました。


「まさか……。観測の魔女、か!?」


 チェスター様の言葉に、黒いローブの魔女が頷きました。


「そう呼ばれることもあるわね」

「魔女が何の用だ!」

「そんなに嫌わなくてもいいじゃない。私、あなたたちに何もしてないのに」

「黙れ!」


 騎士たちが殺気立っています。私はそんな騎士たちの反応に驚いてしまいました。あんなに優しい騎士たちが、こんなに怒っているなんて。

 もちろん魔女は悪しき存在です。けれど、彼女の言う通り、あの魔女はまだ何もしていません。敵対する必要はないと思います。


「あの……。どうしてここに?」


 そう聞くと、魔女は肩をすくめました。


「あなたが……聖女がここに来たから」

「何かご用があるのでしょうか?」

「そうね。今すぐ帰りなさい」


 魔女のその言葉に、私は戸惑ってしまいます。帰ることを勧められるなんて思いませんでした。


「どうして、ですか?」

「この結界を張っている子に会うつもり、なんでしょう?」

「はい」

「やめておきなさい。知らなくていい現実を知ってしまうから。サハル王国で幸せに暮らしなさい」

「それは……だめです。私は、知らないといけません」


 私を追放した国の末路を、私は、私だけは見届ける必要があると思っています。追放されたといっても、私はこの国を確かに愛していましたから。

 そう言うと、魔女は何故か泣きそうに顔を歪めました。


「さすが、主人公ね……」

「え?」

「なんでもない。私はあなたに罪があるとは思っていない。だからこそ、不必要に傷つくことはないと思ってる。あの子に会えば、あなたは絶対に後悔するわよ。いろんなことに、ね」

「魔女様は……結界を張っている人を知っているのですね」


 魔女がしっかりと頷く。きっとこの魔女は優しい人です。そんな魔女が、会わない方がいいと言うなんて……。どんな人、なんでしょう。

 きっと、この人が言うように、会わない方がいいのだと思います。けれど。それでも。


「私は、一応先達ですから……。できることなら、協力したいんです」


 魔女としばらく見つめ合います。やがて魔女は小さくため息をついて、ある一点を指差しました。結界が伸びる一方向へ。


「あちらに向かいなさい。この先に、あの子たちがいるから」

「ありがとうございます!」

「…………。どうなっても、知らないからね」


 そう言って、魔女はカラスの姿となってどこかへと飛んでいってしまいました。

 新たな結界を張る、次代の聖女。女性かはまだ分かりませんが……。あちらに向かえば、会えるようです。


「行きましょう」


 チェスター様たちにそう言うと、戸惑いながらも頷いてくれました。




 私は、後に後悔します。忠告に従っておけばよかった、と。


壁|w・)聖女さんが動き始めました。


毎日投稿はここまでとなります。さすがに書きためがなくなっちゃった……。

ここから先は3日ごとの投稿となります。たまにお休みするかも?

もう少しだけお付き合いいただければ嬉しいですよー。


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― 新着の感想 ―
元聖女さんに帰っていただく必要がある?よし、レスターの街に誘導してお針子さん達にお任せしよう。ゴス系とかメイド服とか巫女服とかたんまり買わせて資金難でお帰り頂こう( ˘ω˘)
毎日更新お疲れ様でした。以後も楽しみにさせてもらいます。 つ 見るなのタブー 人はどうして忠告を無視して行動しようとするのか…。 誰も幸せになれない結末しか待ってないもんなぁこれ。
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