表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第三話 魔道具職人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/62

03-14

 意志のある魔物を支配する。それはつまり、本能に従うような魔物は違うということ。そして多分、リフィルの故郷やアレシアの村を襲った魔物は魔王とは関係ない。

 でも、それならどうしてここに来たんだろう。それも、魔王たった一人で。

 リフィルが首を傾げていると、リフィルの頭をぽんぽんと叩いてくる子がいた。レオンだ。視線をちょっと上向かせると、レオンが言った。


「ふに、にゃおにゃん。にゃーご。にゃむ!」

「わからん」

「うにゃあ!?」

「いやそりゃそうだろう……」


 ちょっと慣れてきたのか、レスターが呆れたようにそう言った。

 長文になると、どうしても意志の理解が難しくなってくる。ちょっと不思議な感覚。言いたいことはなんとなく分かるから、どうにかこうにか頭の中を整理する。むむむ……!


「わたしの結界が、きになる?」


 そう魔王に言ってみると、魔王が口角を持ち上げた。にやりと。ぴゃっとアレシアがリフィルの後ろに隠れてしまった。大丈夫大丈夫。


「ああ、そうだ。忌々しい結界が消えたからな。試しに王都を滅ぼしてやったのだが……。そこで新たな結界を感じ取った。お前の、結界だ」

「王都を滅ぼしただって!?」


 そう反応したのはレスター。信じられないような顔で魔王を凝視する。


「その通りだが、貴様と会話するつもりはない。黙れ」


 そう魔王が睨むと、恐怖からかレスターは口を閉じてしまった。かわいそうだからやめてあげてほしいのだけど。


「お前の結界は……あまりにも強力だ。そして、おそらくもう消えることはないだろう。そんな結界を張ろうとしているお前に興味がわいたのだよ」

「んと……。ころす?」

「やめておくとも。俺は自殺志願者ではない」


 そう言う魔王はレオンを一瞥して、そしてまた別の方向に視線を投げていた。遠いところを見るみたいな目。その方向に何かがあるとは思えないけど、魔王よりも怖いものがいるのかもしれない。

 レオンも、魔王からすればすごいのかも。さすがレオン! とってもすごい! すごくすごい!


「なでなで」

「ふにゃあ……」

「…………。俺は何を見せられている?」


 勝手に見てるのは魔王なので知りません。


「それで、まおうは、なにをしにきたの?」


 レオンをもふもふしながらそう聞く。邪魔な結界を張るリフィルを殺しに来たのかも、なんて思ったけれど、それもない。本当に何をしたいのやら。


「本音を言えば、お前を殺しておきたいところではある。不可能だが」

「ん……」

「あとは、そうさな……。新たな奇跡の担い手を確認したかった。それだけだな。どのような代償を支払ったのか、気になるところではあるが……」

「代償……?」


 おずおずと、アレシアが顔を出す。代償。何のことだろう。


「知らなかったのか? 奇跡は何かしらの代償支払うことを強いられる。以前の結界を最初に張った初代聖女も、悲劇を経験していたほどだ。その結界よりも強力なものを使うお前の奇跡。代償は、なんだろうな?」


 アレシアとレスターがリフィルを見る。そんなに見つめられても、ちょっと困る。でも、悲劇には心当たりがあった。もっとも、その悲劇はリフィルじゃなくて、あの子が経験したものだけど。

 幸せに生きていたのに、唐突に村が滅びることを知ってしまい、どうにかしようと奔走するも結果的に村が襲われ、一人をのぞき皆殺しにされてしまう。そんな、殺されていく様を見せつけられる。

 リフィルの魔法は、あの子から引き継いだものだ。だからこの魔法の代償は、きっとあの子が経験した悲劇なんだと思う。

 もっとも。これは、魔王に伝えるつもりはないけれど。


「ないしょ」


 そう言うと、魔王は面食らったみたいに目を丸くして、そしてすぐに笑い出した。とても楽しそうに、快活に。


「そうか! 内緒か! それならば仕方ないな!」

「うん」

「ならば俺から言うことはもう何もない。俺はあの不毛の地よりお前の物語を楽しむとしよう」

「がんばる」

「くは。ああ、がんばるといい」


 魔王はそう言うと、背中に大きな翼をはやして飛び立っていった。あっという間に見えなくなってしまう。きっと、結界がなかったら襲われていた……かもしれない。


「ふみゅう……」


 それにしても、レオンはちょっと残念そうだ。レオンから伝わってくる感情は、とても複雑そう。憎みたいけど何か違う、怒りたいけどそれも違う、かといって笑って流すこともできない、そんなごちゃごちゃした感情。


「レオン。いいこ、いいこ」

「ふにゃ……」


 とりあえずきゅっと抱きしめて撫でておく。それだけでレオンはふんにゃりと脱力した。かわいい。


「あれが、魔王か……。思っていたよりも、理知的だったな」


 そう言うのは、レスターだ。レスターが言うには、もっと会話が通じない化け物だと思っていたらしい。それはさすがに魔王に失礼だと思う。

 だって、あんなにちゃんと会話していたんだから。

 でも。魔王。どうして来たのかは結局よく分からなかったけど、会えて良かったとは思う。少なくとも、リフィルを邪魔するつもりがないことは分かったから。

 そんなことよりも研究の続きだ。だってもう時間はない。今夜にでも、この町の結界を張り終えると思う。明日の朝にはもう出発するつもりなんだから。


「レスター。つづき、どうぞ?」

「あ、ああ……。そうだな。続けよう」


 レスターももうあまり時間がないことは分かってくれてるはず。レスターはしっかり頷くと、また魔法の研究に戻った。

 この町での生活の終わりも、もうすぐだ。


   ・・・・・


壁|w・)戦闘要素はないよ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
幼女を眺めて愛でる。 さすが魔王、よくわかっている。
魔王は幼女とおはなしをして帰って行った…? …わかった!おまわりさんだな!ご近所さんに通報されたのを察知して逃げてしまったんだ!(んなわけない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ