表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第三話 魔道具職人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/62

03-13


 次に案内されたのは、薬草のお店。アレシアの希望のお店だ。

 街外れにある建物で、ちょっと古そう。建物にヒビが入っていたりして、ちょっと不安になってしまう。本当にこのお店で大丈夫なのかな。


「建物はこんなだけど……。間違い無く、この町で一番の品揃えだから」


 ミントが言うには、このお店のポーションの評判がよくて、冒険者の人たちがみんなここに来るのだとか。そんな冒険者から薬草を買い取るから、自然と集まってくるらしい。

 リフィルには薬草があまり分からないけど、アレシアは詳しいみたいで、まだお店に入ってないのに目をきらきらとさせてる。楽しそう。

 早速お店に入ってみる。

 お店の中は薄暗い。窓にはカーテンがあって、あまり光を入れないようにしているみたい。そんなお店の棚には、たくさんの草が並んでいた。他にもお薬っぽい液体とか。


「わあ……」


 アレシアは早速近くの薬草を見始めてる。薬草は乾燥させていたりそのままだったりと、いろいろ。どんな違いがあるのか、詳しくないリフィルには分からない。


「アレシア、くわしい?」

「師匠から教わっていたのが薬草中心だったから……。一般の人よりは詳しいと思う」

「おー」


 師匠。アレシアの村にいた、魔女さん。魔女であることをやめちゃった人らしいけど、きっとすごい人だったんだと思う。だって、アレシアがこんなに尊敬しているから。

 もうちょっと、リフィルもちゃんと話しておけばよかったと思う。もう、それは叶わないけれど。


「…………」


 ああ。やっぱり、この町の結界を張り終えたら、また旅に戻らないと。あんなことが少しでも減らせるように。リフィルの中で、あの村の一件は大きいものになったから。


「ちょっと待っててね」


 アレシアはそう言うと、売り物の薬草を集めていく。薬草の状態を見て、必要な量を的確に選んでいくその姿はちょっとかっこいいかも。

 いつの間にかお店の奥から出てきたおばあさん、多分店主さんが、そのアレシアの様子を興味深そうに眺めていた。アレシアはとってもすごいのだ!

 そうして、選び終えてカウンターへ。アレシアはとっても上機嫌。いい薬草があったのかもしれない。


「いい目利きだ。お前、ポーションは作れるのか?」

「はい、もちろんです。師匠に叩き込まれました」


 ポーション。薬草の効能を抽出して、混ぜ合わせ、特殊な効能を引き出したすごいお薬。リフィルもアイテム袋に入っていたりする。魔女さんがこっそり入れてくれていたもの。最近はアレシアが作ってくれたりもするから、実はちょっと増えてたりする。

 アレシアが取り出したポーションをじっくりと観察して、店主さんは満足そうに頷いた。


「いいね。余ったポーションがあれば持ってこい。買い取ってやるよ」

「ありがとうございます!」


 アレシアのお金を稼ぐ手段、だ。リフィルのお肉よりも安定してるかも。

 早速いくつかのポーションを買い取ってもらったアレシアと一緒に、お店を出た。アレシアの顔はほくほくしてる。


「アレシア、うれしそう」

「えへへ……。自分が作ったものが認めてもらえるって、嬉しいよ」

「そう」


 リフィルには分からない感覚だ。だってリフィルは自分で作っているものがないから。結界は、与えられた魔法を使っているだけだし。


「でもすごいよ、アレシアちゃん。あの店主さん、他人のポーションを褒めることなんてほとんどないから」


 ミントがそう言うと、アレシアはそうなんですねとちょっと驚いて、やっぱり嬉しそうにはにかんだ。アレシアが嬉しそうで、お姉ちゃんとしてリフィルも嬉しい。ふんす。

 その後もミントの案内で町を見て回った後、お昼過ぎに服飾店にやってきた。ミントとはここで別れて、一度レスターのお家に戻る予定。そこでまたレスターの研究に付き合うことになる。


「じゃあ、気をつけてね?」

「うん」


 そうして、レスターのお家に戻って、起床していたレスターとお昼ご飯を食べて、魔法を見せてあげる。夕方に戻って晩ご飯を食べて、就寝。

 朝の観光以外は特別に何かあるわけじゃないけれど。なんだかとってものんびりできる時間で、楽しい。ミントと一緒に眠るのもぬくぬくで幸せ気分だ。

 ずっと、こんな生活が続けばいいのに。そんなことを思ってしまいそうになるぐらいには、楽しい日々だった。




 日々だったのだけれど。


「な、な、な……!」

「おー……」

「ふしゃー……!」


 この町に来てから四日目の夕方前に、それは来た。

 突然空から落ちてきたのは、筋骨隆々の巨人。紫色の肌に、異形を示す角や翼がある。どう見ても人間じゃない。

 そんな巨人が空から落ちてきて、リフィルたちを、いや、リフィルを興味深そうに見つめてきていた。


「お前が新たな聖女か」


 とても低い、恐怖心をかき立てられるような声、だと思う。レスターは尻餅をついて震えているし、アレシアもリフィルの後ろに隠れてぷるぷる震えてる。

 大丈夫、こわくないこわくない。いいこ、いいこ。なでなで。


「り、リフィルちゃん……こわくないの……?」

「こわい……?」

「え……」


 恐怖、という感情があるのは知っているけど、少なくともこの巨人が怖いとは思えなかった。あの子がいなくなった時のことを考えたら、別に何も思わない。


「ふむ……。なかなか、興味深いな。俺を前にしても恐怖を抱かないか」

「だれ?」

「俺は、そうだな……。お前たちが魔王と呼ぶ者だ」


 まおう。


「魔王だって!?」

「そ、そんな……!」


 レスターとアレシアが目を見開いて驚いてるけど……。


「まおう……?」


 そもそもまおうってなんだろう?


「ええ……」


 恐怖心はどこへいったのか、アレシアが呆れたような視線を向けてくる。巨人もあんぐりと口を開けて呆けていて、そして不意に笑い出した。豪快に。


「ふはははは! 魔王を知らぬか! お前はどんな生き方をしていたのだ!」

「しあわせ」

「くく……。そうかそうか。あるいは奇跡の代償に関わるものか?」


 まあいい、と言いながら、巨人は親切にも教えてくれた。

 魔王というのは、この国の北にある不毛の大地、そこに住む魔物たちの王様らしい。意志ある魔物を支配しているのだとか。なんだかすごい。

 そして、それはつまり。リフィルが復讐するべき相手! なのかもしれないけれど。


「むら、おそった?」

「村? なんのことだ」


 ああ、やっぱり。リフィルの頭の上で、レオンもなんだか疲れたみたいに力を抜いたのが分かった。


壁|w・)魔王様、襲来。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ