03-11
町の外の森で、リフィルは魔法を使う。といっても、ずっと使い続けているからリフィルとしては同じ。でもレスターからすれば違うらしい。
「町の中だと、あらゆる魔道具の魔力を感じてしまうからな。森の中の方がまだましなのだ」
「ふうん」
確かに村や町ではいろんな魔道具を使ってる。リフィルにはそんな魔力は分からないけど、詳しい人からすれば全然違うのかも。
「ふむ……。魔脈から魔力を引き出す術式をのぞけば、実はわりと単純な術式、か……? だが必要な魔力はあまりに膨大。魔脈から魔力を引き出し、必要な量へと変換しているからこそ維持が可能なのだな。ふむふむ……」
なんだかとても難しいことを話している気がする! そして当たり前だけどリフィルにはよく分からない。
そして。リフィルはとんでもないことに、今頃気付いてしまった!
「もしかして……。ここから、うごけない?」
「あー……」
アレシアも同じことを思ったみたいで、レスターとリフィルを何度か見比べてる。レスターはとっても真剣そう。これは邪魔できない。
困った。これは困った。とても退屈だ!
どうしよう、と思っていたら、レオンがすっぽりリフィルの腕の中に収まってきた。よいしょ、と抱き直す。とってももふもふでいい気持ち。
「いっしょ、いる?」
「にゃう」
「おさんぽは?」
「ふしゃ」
レオンは一緒にいてくれるらしい。それなら、退屈じゃないかも。
「わ、わたしも! わたしも一緒だからね!」
「ん。うれしい」
「えへー」
アレシアとお手々を繋ぐ。動いちゃだめらしいリフィルと一緒にいてくれる。みんなとってもいい子たちだ。
残念なのは、観光があまりできないこと、かな? せっかくだからちょっと見て回りたいと思っていたから。
「あとで聞いてみようね」
「うん」
今は集中しているみたいだから声を掛けられないけど、後でレスターにも聞いてみようと思う。少しぐらい自由な時間があればいいんだけど。
というわけで。夕方になってレスターのお家に帰ってから、観光もしたいと聞いてみた。
「ふむ……。観光。観光か」
「お兄ちゃん。束縛しすぎたらだめだよ」
「分かっている」
相談した結果としては、午前中はミントに町を案内してもらい、お昼前にミントの職場に向かう。その後に森に行き、レスターの研究に付き合う、という流れにしてもらった。
つまり! 午前中は観光の時間だ!
「たのしみ」
「楽しみだね!」
リフィルもアレシアも町は初めてだから、素直に楽しみだ。
「ちなみに、何を見てみたい?」
「たべもの」
「薬草!」
「リフィルちゃんはともかく、アレシアちゃんは不思議すぎるよ……」
でもとりあえずいいお店を案内してくれるとのことで、明日がとても楽しみになった。
そうして、翌日。未だ寝ているレスターをお家に残して、リフィルとアレシアは美味しいお店に案内してもらった。パンのお店。朝は焼きたてのパンが食べられるらしい。
「蜂蜜をたっぷり使ったパンが食べられるよ」
「はちみつ」
「そう。蜂蜜」
「…………。はちみつ」
「あ、これ分かってないやつだ」
はちみつ。なんだろう。リフィルが生まれた村でも、多分あったと思う。聞き覚えだけはあるから。でもどんなものかは覚えてない、というより、食べたことがないかも。
確か、高級品、だったはず。少なくともリフィルの村では。
「たかい、ちがう?」
「えっと……。お金がってことだよね。普通のパンよりは高いけど、気にするほどじゃないよ。蜂蜜は近くでよく取れるらしいから」
「おー……」
どうやって取っているんだろう。リフィルの村では高級品で、ここではそれなり、ぐらい。場所によって取れる量が違う?
蜂蜜。蜂は確か虫だったはず。虫の……体液?
「はちというむしをしぼって、でてくるたいえきが、はちみつ?」
「発想が残酷だよリフィちゃん!」
アレシアに怒られてしまった。違うみたい。ミントもぎょっと目を剥いてる。むう、だって蜂の蜜なんて、それ以外に思い浮かばない。そもそも蜂がどんな虫かも分からないから。
「これは、まずは蜂蜜だけで食べてもらわないとね」
「ですね!」
ふむう……。そんなにか。
少し歩いて、パン屋さんへ。香ばしい香りがお店の外まで漂ってくる。この香りがあるからこそ、このパン屋さんは人気のお店なのかも。リフィルもお腹が減ってきたから。
二階建てのお家。一階がお店で、二階が住居、らしい。この町、というよりこの国では一般的な商店の形なんだとか。
お店に入ると、部屋の奥にカウンターがあって、部屋にはいくつも棚が並んでいた。陳列されているのは、もちろんパンだ。
「わあ……」
パン。パン。パンの山! どれも美味しそう!
壁|w・)甘やかしタイムです。




