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捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第一話 魔女との交流

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01-02

「それは……。君がやらないといけないことなの?」


 魔女は知っている。聖女が隣国に移り住み、そこで結界を張り直したことを。この国は魔物に呑み込まれるだろうけど、人の営みは失われない。それならこの子も、せっかく生き残ったのだから安全な場所へ……。


「わたしの、おしごと」


 少女は迷うことなくそう言って、話は終わりだとばかりに歩き始めた。ぺたぺたと、裸足で歩くことで魔力を大地へと巡らせ、新たな結界を形作っていく。

 これは、だめだな。魔女はそう理解した。

 最初の聖女がそうであるように、神から祝福を受けた人間というものは唐突に現れ、自身の使命に従い生きていく。きっとこの子も、祝福を受けたのだと思う。

 呪いだとも思うけど、この祝福を受けたからこそ、生き残ったことを考えれば……。祝福なのだ。きっと。


「それなら、私も歩くわね」


 魔女はそう言うと、少女の、リフィルの隣を歩き始めた。リフィルは不思議そうにしながらも、気にせず歩いて行く。ぺたぺた、ぺたぺた。


「歩きながらお話ししましょう?」

「ん」


 これなら問題ないようで、リフィルは頷いてくれた。


「それじゃあ、まずは……。あなたはリフィルで間違いないのよね?」

「んと……。たぶん」

「その辺りを詳しく」

「んー……」


 リフィルは少し困っていたけど、がんばって説明を始めてくれた。

 その説明は、はっきり言うととても分かりにくかった。思いつくままに喋っているような状態で、整理しながら聞くしかない。それでも魔女は、辛抱強くリフィルの話を聞き続けた。


「つまり……。今までリフィルだと思っていた子は、リフィルに取り憑いていた別の誰かで……。その子が疲れて出ていってしまったから、本来のリフィルが出てきた、ということ?」

「うん」

「それはまた……。とんでもないわね……」


 この子の話を信じるなら、本物のリフィルはこの子で、今までリフィルと思っていた子は偽物だったということ。しかも偽物は自分が偽物だと気付いてなかったみたいだ。

 この祝福に目覚めたからこそ魂を知覚できるようになったみたい、ということだった。

 神は何を考えてこんな子供にそんな所業をしたのか。理解できないけれど、きっと神の思惑を理解しようとすることそのものが間違いなんだと思う。少なくとも魔女は理解したくなかった。


「リフィルは……ずっと、歩くの?」

「ん」

「とても長い時間がかかるのに? 十年は間違いなくかかると思うわよ?」


 大の大人ならもう少し短いかもしれないけれど、リフィルは幼い子供だ。そんな子供の足でゆっくり歩いたとなると、どれだけの時間がかかるか。しかも、歩きづらい土地も多いのに。


「隣の国で暮らすのはどうかな? 孤児院とかもあるはずだし……」

「となりの、くに。せいじょが、いる?」

「ええ、そう」

「ぜったいに! いやだ!」


 それは。あまりにも強い拒絶の意志だった。思わず魔女が目を丸くしていると、リフィルは気にせずまた歩き始めた。心なしか、さっきよりも歩くスピードが少し速いかもしれない。いらいらしている、らしい。


「えっと……。どうして?」

「せいじょ、きらい。あいつがわるい。あいつのせいで、村がなくなって、あの子がどっかにいっちゃった」


 あの子。きっと、偽物のこと。リフィルからすれば、とても大切な存在だったらしい。

 そんな子がいなくなった。村が滅びた。その原因は聖女にある、と。


「それは……」


 否定はできない。聖女が悪くないことは、魔女も知っている。婚約破棄の話は魔女も知るところだから。聖女は自分から国を捨てたわけではない……のだけど。

 それをこの子に言って、何の意味があるだろうか。

 例え、どういう理由があろうとも。聖女がこの国を出て行った結果、リフィルの村は滅びている。それが全てだ。

 それに。聖女に否がないとも言えない。警告ぐらいはできたはずだから。いずれ魔物が侵入してくることを、伝えられたはずだから。


「じゃあ、私と一緒に住むとか、どう? 聖女ほどではないけど、小さな結界ぐらいは張れるから、安全よ?」

「かべをつくる。おしごと」

「そう……。そっか……」


 これ以上はきっと意味がない。そう判断して、止めることは諦める。誰が何と言おうと、この子は歩き続ける。そう確信できた。


「ならせめて……。私の家に寄らない? ゆっくり歩いていいから。服とか、ちゃんとしたものを用意するから」

「ふく……」


 リフィルが足を止めて、自分の体を見下ろす。さすがにリフィルも、ぼろぼろの服はだめだと思っているらしい。


「他の無事な村に行ったとして……。その服だと、みんな嫌がるから」

「ん……。じゃあ、いく」

「ふふ。決まりね」


 そうしてリフィルを案内できることになったことに、魔女は安堵した。

 あの村には本当にお世話になった。だから、唯一の生き残りであるこの子を助けよう。できれば心変わりして一緒に住むとかなれば嬉しいな、なんて考えながら、魔女は案内するためにリフィルの前をゆっくり歩き始めた。


   ・・・・・


壁|w・)聖女は追放された側なので、別に悪くはない、のですが……。

主人公視点だと、聖女がいなくなったから村が滅んで、『あの子』がどっかに消えちゃっています。

転生者の記憶を持っているわけではないので……。


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― 新着の感想 ―
お持ち帰り成功だな よーしおまいらお茶の準備だ!お茶菓子も忘れるな?( ・`ω・´)
>せいじょ、きらい。あいつがわるい。 今この世界には偽聖女と聖女の二人の聖女がいるから…! なんとか偽聖女の方をわるいせいじょという認識に変えられれば軟着陸出来るから…!頑張れ魔女さん!
せつない……。 できることはリフィルちゃんが安らかに、幸せを見つけて生きてきますようにと祈ることだけ……。 読者が恨めるとしたら、王子と聖女を僭称した人、かなぁ
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