03-04
鎧の人に案内されて、ギルドをぐるっと回って裏手側へ。そこにあったのは、とっても大きな建物。高さはあまりないけど、広さはとてもある建物だ。
「おー……」
「おおきい……!」
「そうだろそうだろう」
リフィルとアレシアの反応に、鎧の人は満足げに頷く。
「この町のギルドの解体場はな、この国でも屈指のものなんだぞ!」
「ある程度の規模の町の解体場は大きさが統一されているがね」
「レスターさんは黙っていてくださいよ」
それでも、鎧の人が言うには、一番広い解体場があるということは、それだけ町が栄えている証なんだとか。
けれど、リフィルにはあまり興味がない。それよりも大事なのは晩ご飯。だってこんなに大きな魔物だ。きっとお肉もいっぱいのはず。
晩ご飯は何かな。アレシアはお肉をとっても美味しく焼いてくれる。今からとっても楽しみだ。
鎧の人に案内されて、解体場の大きい建物の中へ。そこでは大きなテーブルや敷物があちこちに設置されていて、たくさんの場所で今まさに解体が行われていた。
「おおい! 誰か! この子たちの獲物の解体を頼む!」
鎧の人が叫ぶと、手の空いていたらしい人が集まってきた。そしてみんな、レオンが引きずっている大きな魔物を見て目を丸くして、すぐに調べ始める。
ここまでくるとレオンも獲物を任せて、リフィルの腕の中に戻ってきた。どうだ、と胸を張るレオンはとってもかわいい。
「レオン、すごい。がんばった。えらい」
もふもふと撫で回して、肉球をぷにぷにして。そうしてレオンを労ってあげる。レオンも満更でもなさそう。その様子がまたとってもかわいいのだ。
「り、リフィちゃん。わたしも……!」
「ん」
アレシアの腕の中にレオンを任せると、アレシアもレオンをもふもふし始めた。
引きずる魔物がなければよくレオンは二人にもふもふされている。普段からいつももふもふしている。つまり今、ふたりはもふもふ欠乏症なのだ!
「なのだ」
「いや、知らないが」
レスターはちょっと呆れているようだった。この気持ちが分からないなんて!
「これは……どうなってるんだ?」
「引きずってきたんだろ? そのわりには状態が良いな……」
「何かの魔法か魔道具か」
魔物に集まっている人がそんなことを話してる。レオンはアレシアの腕の中で、ふふんと自慢気だ。もっとも、リフィルとアレシアしかそのかわいい仕草を見ていないけど。
リフィルも詳しいことは知らないけれど、レオンの能力か魔法らしい。仕留めた状態を維持できる、らしい。魔女さんもレオンも教えてくれなかったから、詳しいことは分からない。
「日没までには解体を終わらせよう。素材は全て換金か?」
「おにく。もらう」
「肉か。かなりの量になるが……」
「んと……。いちにんまえ、こわけ。おねがい、します」
「ふむ……。結構な手間だな。他の素材の買い取り代から手間賃を引かせてもらうぞ」
「おまかせ」
何よりも大事なのは、お肉。お肉だ。だってお肉はご飯だから。
引き受けてくれた人たちにお任せして、リフィルたちは解体場を出ていく。アレシアの村ではリフィルも解体を手伝ったし、ある程度は覚えたけど……。ここでは必要なさそう。
「それじゃ、俺の案内はここまでだな」
鎧の人がそう言って、リフィルの頭を撫でてきた。いきなり撫でられてちょっとびっくりしたけど、優しく撫でてくれているので抵抗はしない。でも不思議そうに鎧の人を見たら、鎧の人は笑いながら謝ってきた。
「悪い悪い。ご両親にもよろしく伝えておいてくれ」
そう言って、鎧の人は手を振りながら帰っていった。
「りょうしん」
「まさか女の子だけで旅をしているとは思わないだろうからな。おそらく、君たちの両親が私に案内を頼んだとでも思っているのだろうよ」
そういうものらしい。確かにアレシアの村でも、リフィルがレオンと一緒に二人で旅をしていると知ったら、みんな驚いていた。
「寄り道をしてしまったが、改めて我が家に招待しよう。妹は料理ができるからな。夕食は期待してほしい」
「おにく、ある」
「解体中の肉のことなら、君のアイテム袋にしまっておきなさい」
「おにく、いらない?」
「む……。分けてくれるのか」
「ん」
お肉はとっても大事なご飯。けれど、なくなればレオンがまた捕ってきてくれる。特に今回の魔物は大きかったから、みんなで食べても大丈夫だ。
それに、美味しいものはみんなで食べた方が美味しいから。リフィルはちゃんとそれを覚えているのだ。リフィルは良い子なので。
「むふー」
「リフィちゃん、いいこ、いいこ」
「むふー!」
アレシアに頭を撫でられて、ちょっとご満悦なリフィルだ。鎧の人の撫で方も悪くなかったけれど、アレシアの撫で方はとっても気持ちがいい。
でもアレシアもいつも一緒にいてくれるから、アレシアも撫でる。いいこ、いいこ。
「わわ……。リフィちゃん?」
「いいこ、いいこ」
「えへへ……」
アレシアを撫でてあげるとふんにゃりと笑ってくれて、リフィルはそれがとても好きだ。そうして二人で撫であいっこしていたら、レスターが呆れたように言った。
「なんだこれ」
それはリフィルにも分からない。
壁|w・)むふー!




