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捨てられ少女の壁作り ~聖女に捨てられ魔物があふれた国で、もふもふと一緒に結界を作ります~  作者: 龍翠
第三話 魔道具職人

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03-02

 レスターが呆然と見つめる先で、白いトラが瞬く間に大きさを変えていった。よく見る猫のようなサイズになると、白い少女の頭の上に陣取った。どこか満足そうに見えるのが憎たらしい。


「あー……。それは、君たちの連れかね?」


 レスターがそう聞くと、白い少女が頷いた。


「おともだち」

「お友達か……。そうか……」


 とんでもないお友達もいたものだ。間違い無くただの動物ではない。もしかしたら、高名な魔女の使い魔、そしてこの少女たちは、魔女の弟子か。

 レスターも魔女ほどではないが、魔法を扱う魔法使いだ。魔女の弟子というのは、とても羨ましい境遇と思ってしまう。けれど同時に、哀れである、とも。

 人嫌いの魔女たちが普通の人間を弟子に取ることなど考えられない。何かしら事情があるはずなのだ。きっと、人には言えない事情が。


「君たちは魔女の弟子かね?」


 それでも一応確認してみると、白い少女は首を振った。


「ちがう」

「うん……? なら、その猫……トラは?」

「魔女さん、もらった……もらった? もらった。いろいろ」

「わたしは魔女の弟子でした。お師匠様はもういませんけど……」

「ふむ……」


 なかなか難しい境遇の二人だ。とりあえず分かったことは、今は近くに魔女がいないということ。少しだけ残念に思ってしまう。もしいるなら、少しでもお話をと思ったのだが。


「いや、それは今考えることではないな。助かった。礼を言おう」

「ん……」


 こくん、と頷く白い少女。表情が変わらないため無愛想に思えるが、きっとこういう子なのだろう。そう思えば少しかわいいのではなかろうか。


「よければ、そうだな……。町まで案内を……」


 そこまで言って、レスターはふと視線を上げた。レスターの視線の先は、少女たちが歩いてきた方向だ。そちらを見て、そして感じたものを見て、レスターは絶句した。


「なんだこれは……」


 思わずそんな声が漏れてしまう。だって、目の前にあったものは。


「これは……結界、か……!?」


 見たこともない結界の魔力だったから。

 結界そのものは透明のようだ。けれど、魔力を感じ取れる者なら、この異常な結界にすぐに気付くだろう。


「はは……。なんて結界だ……!」


 レスターが作った魔物よけの魔道具など、子供のおもちゃのようなものだ。いや、それ以下だと断言できる。ただのゴミだ、と。

 この結界なら、レスターを襲った猪の魔物ですら通すことはないだろう。

 そしてこの結界を張っている者は、すぐ側にいた。


「君が……この結界を作っているのか!?」

「ん」


 こくん、と頷く白い少女。本当に、信じられない思いだ。こんな奇跡があるとは思わなかった。

 ある日、聖女が張っていたはずの巨大な結界が徐々に薄くなっていることにレスターは気付いた。このままではこの町が魔物に襲われるのも時間の問題だと。だからレスターは魔物よけの魔道具の研究を始めたのだから。

 それが、どうだ。新たな結界が生まれつつある。しかも新たな結界は、今までのものとは根本的に違うようだ。あまりに複雑な結界なので、詳しいことまでは分からないが。

 だが、どんな結界も万能ではない。前の結界のように、突然薄くなっていってしまうことがあるかもしれない。そんな時のためにも、魔物よけの……結界の魔道具は完成させたい。

 自分一人ではいつ完成するか分からない。だが、この結界を作っている少女の協力があれば。


「俺は近くの町で魔道具を作っているレスターだ」

「ん……。リフィル」

「あ……。アレシア、です」

「このこはレオン」

「にゃう」


 白い少女がリフィルで、黒い少女がアレシアというらしい。そして魔女からもらったという使い魔はレオンというそうだ。

 レスターはリフィルへと頭を下げた。


「頼む。俺の研究に協力してほしい」

「けんきゅう」

「ああ、そうだ。俺は結界の魔道具を作っている。君の結界を調べさせてほしいのだよ」

「まどうぐ……。どうおもう?」


 リフィルが問うた先は、アレシアだ。アレシアは少しだけレスターを見て、そしてリフィルへと向き直った。


「多分、大丈夫。悪い人じゃないと思う」

「そう。なら、いいよ」

「本当か!?」

「ん」


 正直、断られるだろうと思っていたのが本音だ。だが、有り難いことに協力してもらえるらしい。これなら、研究はかなり進展するだろう。なにせ、あの異常な結界を参考にできるのだから。


「じかん、どれぐらい?」

「うん? ふむ……。一年もあれば、ある程度は形に……」

「ながい」

「え」

「いつか。そのあとは、しらない」

「え」


 いつか。五日。五日間。いやいや。いやいやいやいや。


「無理に決まっているだろう!?」

「これいじょうは、だめ。わたしには、やらないといけないことが、あるから」

「それは……」

「結界を張ること、です」


 答えてくれたのはアレシアだった。リフィルの手を取って、レスターを真っ直ぐに見つめて……。いや、少し隠れ気味だ。


「リフィちゃんは、この結界を国中に張るんです。まだ始まったばかりらしいから……」

「それは……。そう、か……」


 言わんとすることを察して、レスターは口を閉じた。

 この子は、まさしく次代の聖女なのだ。国中に新たな結界を張り、魔物の流入を防ぐ。その旅をしているらしい。それならば確かに、この町に一年いろというのは難しいに決まっている。

 むしろ五日間ですらかなり妥協してくれたのかもしれない。


「承知した。ならば、五日間で……調べられるだけ調べさせてもらう」

「ん」


 レスターの宣言に、リフィルは満足そうに頷いた。

 五日間。正直かなり厳しい。それでも、取っかかりの一つぐらいは得られるかもしれない。せめて時間を無駄にしないようにしなければ。


「ではすぐに我が研究所に向かおう。衣食住は任せてくれたまえ。俺には頼りになる妹がいるのでね」

「わかった。でも、その前に」


 リフィルがすっと指をさす。指の先にあるのは、あの猪のような魔物の巨体。


「ごはん、はこびたい」

「…………。いいだろう……」


 正直肉体労働は苦手なのだが、ここで不興を買うわけにもいかない。レスターは渋々ながらも頷いた。

 なお、実際に運んだのはレオンで、レスターがするのは道案内だけだった。心底安堵したのは秘密である。


   ・・・・・


壁|w・)研究バカです。


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― 新着の感想 ―
こやつめ!研究と称してリフィルちゃんにどんな調査をするんですか?! というか、1年調査したければ旅についていけばいいのに。 まあ変態が幼女の傍にいたらヤバいから2人の行き先聞いて街に先回りしてサポート…
研究馬鹿 つまり、研究時間はアドレナリン全開フルスロットルで はーはハハハハハハ ヒャアはハハハハハハ と一人夜中に高笑いしてるはずなの 研究馬鹿 こんなのと知り合いになって平気か? まあ、アーマード…
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