2人へのごちそう
ミミが俺にくれた飴は魔法をこめた飴ではなく普通の飴で、ミミの言葉によるプラシーボ効果のおかげで俺は馬車酔いせずに済んだのだ。
ミミとミーザが2人で話し合ってこの方法を思いつき、俺に対して実行した事実に少し戸惑ったが、2人が俺の為にしてくれた事でもあるしな。
「あの、ユーイチ様もしかして怒っていらっしゃいますか?」
「いや、そんな事はない。むしろ感謝している」
「え?」
「もし、ミミ達がこの方法を考えつかずにそのまま馬車に乗って酔いでもしたら治癒士の人達に迷惑をかけて印象が悪くなっていたかもしれないからな」
ミミ達への気遣いがないわけではないが、俺の言葉は本心からのものだ、馬車酔いで治癒士の人達の手を煩わせてしまうと俺の言葉の説得力がなくなるからな。
そういう意味でも今回は、いや今回もミミ達に助けられたな。
「だから、今回もミミとミーザのおかげで上手くいったんだ。本当にありがとう」
「ユーイチ様、いえ、頑張っていらしたし、努力を無駄にはさせたくなかったんです」
「そうだよ、あんた診療所の診療時間が終わってもいろいろやっているようだったしさ」
「2人共、そこまで俺の為に、よし!本の買い取りも確約したし、今日は診療所が終わったら2人にごちそうする!」
俺が2人に夕食をごちそうすると声高らかに宣言するとミーザは喜び、ミミは少し心配そうに声をかける。
「やった!それで今日は残りの時間頑張れそうだよ!」
「でもユーイチ様、大丈夫なんですか?まだ教本の代金はいただいていないんですよね」
「実は今回の意見交換の会は領主様の仕事の依頼という事にもなっているからその報酬ももらえるし、たまには少しでもいいものを2人にも食べてもらいたくてさ」
「そういう事でしたら、お言葉に甘えます。午後の診療も頑張りましょう」
ミミからも笑顔が見られ、俺も疲れているはずなのに自然と気合が入る。
「よし!午後の診療時間までゆっくり休んで、無事に乗り切ろう。午後からは俺も診療する!」
「でも、お帰りになったばかりでお疲れじゃないんですか?」
「いつまでも後遺症の残らない患者ばかりとは限らないし、ここで俺も診療しないとな」
「正直助かるよ、あたしとミミじゃあ、その診療報酬の為の書類作成が大変でさ」
ミーザが書類作成の大変さを訴え、俺が声をかける。
「まあ、そっちの方はゆっくりでいいさ。とりあえずミーザは怪しい奴から診療所を守りながら簡単な治療をしてくれ」
「はいよ!」
さあ、午後の診療がもうすぐ始まる。それが終われば少しばかりの豪勢な夕飯が待っているぞ!




