実家の安心感
館で1泊し、朝食をごちそうになると、俺は部屋で荷物をまとめ帰る準備をしていた。
荷物をまとめ終え、部屋を出ると廊下で待っていたメイドさんに俺は声をかけ、鍵を返す。
「お待たせしました、あと鍵ありがとうございました。お返しします」
「確かにお受け取りしました。それでは馬車の用意ができているのでご案内します」
そう言われメイドさんの案内で俺は館の玄関まで向かい、玄関の外には他にもメイドさんや護衛の兵士、そして使用人長のバンさんがいて、バンさんが俺に声をかける。
「ミヤシタ様、昨日はお疲れ様でした。ごゆっくりお休みできましたでしょうか?」
「はい、食事も美味しかったですし、いろいろありがとうございました」
「お喜びいただけて、私共もうれしゅうございます」
その言葉を聞いて、俺は馬車に案内される。おっと、もう1つのミミがくれた飴をなめないとな、うんうまいな。これは少しすーーっとするな。
まるでのど飴みたいなスッキリ感があるが、これもミミの魔法のおかげか?
飴をなめながら馬車に乗り込み、長時間の移動になるが、今回も俺は馬車酔いしなかった。
すげえよミミ!治療だけでなく予防効果の魔法まで使えるなんて。
そして馬車は診療所の前に到着する。多分今は午前の診療が終わって、午後の診療が始まるまでの休憩時間だな。
そんな事を考え、俺は馬車を降りると御者さんに声をかける。
「ありがとうございました」
「いえ、これは仕事ですからね、それでは失礼します」
そう言って御者さんは馬車を御して診療所の前から姿を消す。
まず俺は扉をノックする。扉をノックしてしばらくすると診療所の中からミミが出てきて俺に声をかける。
「ユーイチ様、お帰りなさい」
「ただいま、ミーザは?」
「いますよ、ミーザさん、ユーイチ様がお帰りになりましたよ」
ミミが奥にいるであろうミーザに声をかけに行っている間に、俺も診療所に入っていく。
診療所に入ると今度はミーザもやってきて、俺に声をかける。
「ユーイチ、お帰り、偉い人を怒らせなかった?診療所は大丈夫なの?」
「大丈夫だ、心配するな。それより俺がいない間に重症の患者は来なかったか?」
「来ていないよ」
「そうか」
安堵の声を漏らした俺に再度ミミが声をかける。
「そういえばユーイチ様、昼食は召しあがりましたか?」
「いや、まだだけど」
「それじゃあ、私が用意しますからユーイチ様は少しお休みになってください長時間の移動でお疲れでしょう」
「それじゃあお願いするよ」
この感じ、まるで実家に帰ったような安心感だ。そうか、今はこの診療所がこの世界の俺の実家なんだな。




