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治癒士長ザリアン

 領主様の館で使用人長のバンさんとメイドさんに出迎えられた俺は早速領主様と治癒士達が待つ部屋に案内され、その部屋に入室する。


 入室した瞬間、俺はとんでもなく圧巻される思いになった。


 何故なら、まず部屋自体がとても広く、机が長い。俺が勤めていた病院の会議室並みの広さだ。


 一番奥の席にコーロ地方領主のバートン氏がいて、他はみな同じ服を着た人達だ。治癒士のいわば制服のようなものだろう。


 ただその中に1人だけ治癒士達の制服に加えマントを羽織っている男性、おそらく50代くらいと思われるが多分あの人が……。


「我が館までご足労をかけたなミヤシタ殿、貴殿も空いている椅子に座るがよい」

「は、はい」


 空いている椅子って言っても、遠いが俺は真っすぐ領主様、そしてマントの男と思いきり向かい合っているうえに、その向きに俺1人なんですけど。


 それから治癒士達にまるで囲まれている感じが、まるで裁判の被告人のような気分だよ。


 そして、横の席から突如治癒士の1人が言葉を発した。


「それではこれより、ユーイチ・ミヤシタ氏には教本並びにリハビリについての説明並びにそれに関する我らからの質疑応答を始めたいと思います。この会の進行は僭越ながら私、治癒士のゴルが務めさせていただきます」


 結構若いのにこの会の進行を任せられるとは相当優秀なのかもしれないな。


「それではまずは領主様より開会の挨拶をお願いします」


 あ、領主様の挨拶があるのね、歓迎会で挨拶長いよって突っ込まれた俺が思うのもなんだけど、手短にお願いします。


「まずは我が館までご足労であった、治癒士の皆、そしてミヤシタ殿。だがまさかミヤシタ殿が教本を買い取ってほしいと願い出た時はどうするかと思い、治癒士長であるザリアンに相談し、このような会を設けさせてもらった。ではザリアン、お前の考えをミヤシタ殿に伝えよ」


 領主様に促されて隣の男性が立ち上がった。やはりあの人が……。


「お初お目にかかるなユーイチ・ミヤシタ殿、私はコーロの治癒士長であるザリアンだ」

「お初お目にかかりますザリアン殿、私はキッコの街で『ミヤシタ・リハビリ・クリニック』という診療所を領主様のご厚意でさせていただいているユーイチ・ミヤシタです」

「貴殿の事は治癒士の間でも話題になっている。我らが治しきれなかった二コラ様が足の怪我によって足が動かなくなったのを貴殿が治したことをな」

「いえ、それは皆様がまずお怪我を治したからです。私1人では不可能でした」


 さて、ザリアン氏が俺に何を聞きたいのかな?

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