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王都からコーロへ

 アレフさんより3日後に領主様の館で領内に常駐する治癒士、特に最も優れた治癒士であるザリアン氏が満足する知識でなければ、教本を買い取らないと言われた俺は、詰所から診療所に戻っていった。


 診療所の扉をノックすると、ミミが出てきて俺に声をかける。


「お帰りなさいませ、ユーイチ様」

「ただいま」

「それでアレフ様は何の御用だったんですか?」

「まだ午後の診療時刻まで時間があるし、2人にも話すよ」


 そう言って、俺は診察室にミミとミーザを呼んで、2人椅子に座って俺も椅子に座るとアレフさんから聞かされた話をする。


「まず2人に聞いてほしいのは3日後に俺は領主様の館に呼ばれたことだ」

「ちょっと待って?あんたもしかして何か悪いことしたの?」

「するかーーー!教本を買い取ってもらおうと思ったら、少し思わぬ事態になってさ」

「思わぬ事態?」


 ミーザの疑問に対し、俺はザリアンという名の治癒士が俺の教本の内容に興味を持ち、俺から直接話を聞きたいとアレフさんから聞かされた話をすると、ザリアン氏の名にミミが反応をする。


「ザリアン様がユーイチ様の教本にご興味を持たれたんですか?」

「その前にミミ、ザリアンさんを知っているのか?」

「ええ、実はもともとザリアン様は王都で治癒士をなさっていたんです」

「何だって⁉」


 ザリアン氏が王都で治癒士をしていた事実に俺は驚きを隠せないでいたが、そんな俺を尻目にミミはザリアン氏について話し始めた。


「ザリアン様はお若い頃より、王都で名を馳せた治癒士で私達聖女見習いに対しても教会までいらしてご教授くださることがありました」

「そんな人がなんでコーロに?」

「お年を召されてからは王都の治癒士をお辞めになって、ご縁のあったコーロの領主様に仕え、そのままコーロの治癒士になったとしか分かりません」

「そうか」


 まさかザリアン氏が元王都の治癒士で、コーロに移住していたなんてな、辞めた理由はいったい何だ?勤続疲労か?もしくはコーロで何かやりたいことがあるのか?


 まあいい、そこは俺が考えることじゃないな。そう思った瞬間、ミーザが別の疑問をぶつけてきた。


「じゃあ、その日は診療所は休むの?」

「いや、2人だけでやってくれるか」

「でもユーイチがいないと後遺症は取り除けないじゃん」

「新しいベッドで寝かしてくれれば俺が戻り次第、後遺症は取り除く。食事とかの世話も2人に任せる」


 それから俺は念の為、いくつかのケースの足等が不自由になった場合の付き添い方のメモを残し、2人に告げる。


「もし分からなかったら、このメモを参考にしてくれ」

「はい」

「分かったよ」


 とりあえず2人にも話したし、あとはプレゼン資料を作りながら当日を待つだけだ。

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