緊急対応案
アレフさんに詰所に呼ばれた俺は、そこでザリアンというコーロ地方で最も優れた治癒士が俺のリハビリの教本と俺自身が持つ知識や技術に興味を持ったと聞かされる。
領主様が俺の教本を買い取る条件としてザリアン氏が俺の話の内容に満足いく事だというのだ。
もしかしてまたプレゼンをしないといけないのか?大変なことになったな、教本作成だけでも相当きつかったのに。
「ミヤシタ殿、領主様は3日後に来てほしいとおっしゃっている、その日しかザリアン殿をはじめとしたコーロ内の治癒士全員を揃えられる日がないのだ」
「え?待ってください、ザリアンさんさえ満足させればいいんじゃないんですか?」
「治癒士達もザリアン殿が君の知識にどういう反応を示すかを見届けたいそうだ、あの方はあらゆる治癒士にとって指針になるお方だからな」
どうやらザリアン氏は相当な尊敬を集めているようだな、もし俺がザリアン氏を怒らせてしまえば、コーロ内の治癒士全員を敵に回すことになるのか?
それは避けないと変な噂が広がり、俺の診療所に患者が来なくなるかもしれないし、廃業すればまた別の仕事を探さないといけないし、ミミやミーザにも迷惑をかけてしまう。
「分かりました、3日後領主様の館に参ります」
「では当日迎えに行こう、悪いがその日と翌日は診療所は休んでもらおう」
「いえ、診療所は休みません」
「何?」
俺が診療所を休まないと言うと、不思議そうな顔をしたアレフさんに俺がいなくても休まなくていい理由を話す。
「ミミとミーザに診療所は任せます。それなら休む必要はありません」
「しかし、後遺症を取り除くスキルは君しか使えないはずだが」
「もらいもんですが、最近ベッドが2つ手に入ったので、俺がいない間はそこで寝てもらい、帰ってきたら後遺症を取り除きます、1日2日ならそこまで筋力は弱りませんから」
「だが、それほどの後遺症を持った患者が多く押し寄せたらどうするつもりだ?」
アレフさんはどうも俺の行動に疑問があるようだが、逆に俺はアレフさんに尋ね返す。
「アレフさん、今回はアレフさんも館に同行してくれるんですか?」
「いや、使いの者に君を送らせるだけだが」
「街に残るなら、アレフさんのおっしゃることがおきたら館まで使いをよこしてください、その時は診療所に戻ります」
「ふう、自分の技術が売れるかどうかという時も診療所優先なのだな」
「俺は診療所があってこそですからね、それにそんな事態は領内でも緊急事態じゃないんですか?」
俺の問いかけに、アレフさんはほくそ笑みながら答える。
「ふっ、君に1本とられたようだ、そのような事態になれば治癒士の派遣も必須だろう。よかろう君の希望通り使いはよこそう」
どうにか俺がいなくても診療所は休まずにすみそうだ。




