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技術の体系化

 領主様が以前俺が息子の二コラ君にしたリハビリメニューを治癒士に公開する事をアレフさんから聞かされ、俺はそれについての考えをアレフさんに告げる。


「ちょっと待って下さい、それって前に俺が二コラく……、様にしたリハビリメニューを治癒士に公開するという事ですか?」

「そうだ、領内にいる治癒士にはまず領主として公開する義務があるとおっしゃっていた」

「だけどあれは二コラ様のケースに合わせたメニューを作成しただけで、人によって違ったやり方になるんです」

「しかしまだ領主様の手元にある資料はあれしかないのだ」


 ここが俺の新たな活躍の場になるかもしれない。あまり自信はないがやるしかないな。


「アレフさん、それなら俺が本を書きましょうか?」

「本?まさかそのリハビリメニューとやらの教本を君が書くのか?」

「はい、スキルの伝授は無理ですが、このリハビリの方法の基礎的な動き方なら他の人に教えられますし、教本とすれば治癒士の方々に読んでいただければご理解していただけると思います」


 おそらく今まで会った人達の反応からこの世界の治癒士という人達は俺が元いた世界で言うところの医師のような役割を担っているようだからな。多分医学的な事なら相当呑み込みが早いはずだ。


「ですが、本来は専門機関で学ばなければいけない事なのでただというわけにはいきません」

「何?」

「まずは俺が書いた1冊を領主様に買い取っていただきたいんです、そして領主様が治癒士様に公開したうえで本を手元に置きたいという方がいらっしゃったら俺個人に依頼をしていただければ教本を作成しお売りいたします」


 俺がリハビリ専門の教本を書いて売りたいと告げると、それを聞いたアレフさんはしばらく考えほくそ笑みながら声を発する。


「ふっ」

「アレフさん?」

「いや失礼、なるほど技術を体系化したものを発表しそれを売りたいという考えか。確かにそれは先駆者の特権といえよう」

「それって……」


 期待と不安、半々の俺にアレフさんが言葉を発した。


「とりあえず君の考えは私から領主様に伝えよう、新しい技術というのは喉から手が出る程欲しい者も多くいるだろうし、悪い反応はないと思う」

「あ、ありがとうございます」

「それから先程の言葉は訂正しよう、君も思った以上に強かなようだし、己が技術を売る商魂は大したものだ」


 何となくだが俺の世界で言う特許のようなものを考えていたら、本という形が一番いいかなって思っただけなんだけどな。

実は日本の特許法では医療行為そのものを特許として申請する事はできないので、ユーイチも苦肉の策として教本の作成という形をとったのです。


異世界にいても日本の法律に縛られるのが彼らしいですね。

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