救われし家族

　アレフさんよりボッズの街という傭兵ギルドが存在する街へ行き、診療所の護衛の為の傭兵を雇えばいいという提案をされた俺は、アレフさんが紹介所を書いてくれている間に例の祖母と孫の家に往診へと向かっていた。

　昨日は診療所を休んで、往診も休んでいたからお婆さんの状態は気になっている。

　そして2人の家にたどり着き、俺が扉をノックをして声をかける。

「すいません、ユーイチ・ミヤシタです！本日の往診にうかがいました」

　俺がそう言うと扉が開き、孫が俺に声をかける。

「あ、ミヤシタさんこんにちは」

「こんにちはユーリ君、お婆さんはどうしてる？」

　彼の名前はユーリ君といい、この間名前を教えてもらったのだ。そしてユーリ君がお婆さんの元に案内してくれる。

「どうぞ、こちらへ」

　ユーリ君の案内でお婆さんの所に行くとなんとお婆さんは椅子に座って俺を待っていたのだ。

「椅子に座って待って下さったんですか？ご無理をしてまで丁寧にお出迎えして頂かなくても大丈夫ですよ」

「違いますよ、ミヤシタさん、祖母は今日はずっと椅子からの立ち座りを繰り返していたんですよ」

「それって前に俺が作ったリハビリメニューの一つなんじゃ？」

「そうですよ、朝さすがにベッドから椅子までは僕がついたんですがそこからはずっと椅子からの立ち座りの訓練をしていたんです」

　お婆さんがかなり、リハビリに対して意欲的になっているのがユーリ君の発言からうかがえ、更にお婆さんも言葉を発する。

「ミヤシタさんがスキルで私の足を動かせるようにしていただいたおかげで、私も頑張らないとって思えるようになったんですよ。私もせめて自分の事は自分でできるようになるまではこの訓練メニューを頑張りますよ」

「それからミヤシタさん、僕も昼から夜の間だけですけど仕事が決まりました。近くのパン屋で雇ってもらえることになりました！」

「おめでとうユーリ君！あ、もしかしてあそこのパン屋か？俺あそこでたまにパン買うんだよ」

「そうなんですね！是非またいらしてください」

　ユーリ君の仕事が決まった事は俺も嬉しい。俺が得たスキルが1つの家族を救ったと思うと、さあ、今日のリハビリを始めないとな。

「また給金が入ればミヤシタさんにも報酬を支払わせていただきます」

「ユーリ君、お婆さんの往診分は領主様より頂いているから、そのお金は君とお婆さんのこれからの生活の為に使ってくれ」

「だけど、それじゃあ……」

「その代わり、いつかユーリ君の作ったパンをおごってもらうつもりだからな」

「ミヤシタさん……はい、その日を待っててください」

　まだこういう家族は多くいる、その家族を守る為にも診療所のボディーガードは必要だ。