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似顔絵を描いて

 診療所の留守をつけ狙われ、泥棒に侵入を許し、泥棒と鉢合わせたが逃げられてしまう。


 現在、俺とミミは荒らされた診療室の片づけをしていた。盗られたものがないかの確認も兼ねて。とりあえず、見たところ現金や詰所に提出する申請書類は盗られていないようだ。


 奴らの逃げていくときの身軽ぶりから食料も盗られていないようだし、ひとまずはホッとした。


 そんな時にミミが呼んできてくれた兵士が俺に声をかけてきた。


「ところでミヤシタ殿、診療所に侵入した者達に心当たりはあるか?」

「いえ、ありません。この街に住んでいたら顔を見れば思い出すかもしれませんが、それは多分ないですよね」

「そうか、だがこちらとしても手配書の作成の必要がある。ミヤシタ殿、似顔絵を描いてもらえるか?」

「でも、俺は絵は下手ですよ」


 俺が絵を下手な話をするが、兵士は更に言葉を続ける。


「構わぬ、この紙に描いてくれ」


 兵士より紙を渡され、俺は診療所のテーブルで泥棒の似顔絵を描く。あんまし自信はないが、これでいいかな。


 完成した絵を兵士に渡すと、兵士は確認するように何度も見直し、遠い目をしてから俺に尋ねる。


「ミヤシタ殿、本当に貴殿が見たのは、人間だったのか?」

「はい……そうですが……」

「はあ……」


 え、ちょっと何その反応?俺もしかして呆れられている?そんな事を考えているとミミが覗き込んで俺の書いた絵を見ると絶句した表情をして、俺の方に顔を向いて言葉を放つ。


「あ、あのユーイチ様……」


 言うな!今の俺にフォローの言葉はかえって傷つく、俺中学の時の美術の成績5段階評価の2だったんだぞ!実技だけなら1もあり得たくらいひどいんだぞ!


 頼むミミ!俺に言葉をかけるな!そんな事を今直接言えるわけがないから俺はもう目で訴える他なかった。


 俺がミミにそんな眼差しを送っていると、その俺に兵士の人が気を取り直そうと声をかける。


「そ、それならミヤシタ殿、侵入した者の特徴を話してくれ。自分が似顔絵を描こう」

「はい……それじゃあまずは1人目の特徴ですが……」


 まだかなりヘコンでいるが、とりあえず俺は一瞬の記憶を呼び起こし、なんとか兵士に泥棒達の特徴を一生懸命伝える。


 泥棒2人組の特徴を話し、兵士が絵を描き終えると俺に確認を促す。


「こんな感じでよろしいか?」

「はい、そうですね」

「これから詰所に戻り、同じ絵を描いて街中に至る所に貼りつけ、犯人を捜しておく。協力感謝する」


 そう言って兵士は俺達の前から姿を消していった。


 傷ついた俺の心と診療所のこれからはどうなるんだろうか?

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