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往診の為に

 午前の診療を終え、昼食を摂った俺はミミを診療所に残し、往診すべく診療所を出た。


 まずは詰所に行き、アレフさんから情報を得られないかだな。


 徒歩で詰所に行き、詰所の入り口にいる兵士に声をかける。


「あ、すいません。あのユーイチ・ミヤシタですが……」

「おお、ミヤシタ殿か?本日はいかがした?」

「あの、アレフさんにご用があって来たのですが……」

「アレフ様にか、しばらく待たれよ」


 そう言って兵士は奥に向かっていく。アレフさんに確認に行ったんだろう。


 しばらく待って戻って来た兵士が俺に声をかける。


「執務室で話を聞こうとの事だ、案内しよう」

「は、はい、ありがとうございます」


 兵士の案内で俺は恐る恐る執務室へと向かっていく。やっぱりまだ武装した人との関りは慣れないな。いくら俺に敵意がないと分かっていても。


 そんな事を考えていると執務室の前に到着し、兵士が中にいるアレフさんに呼びかける。


「アレフ様、ユーイチ・ミヤシタ殿をお連れしました!」

「お通ししろ」

「はっ!」


 アレフさんの命令で、兵士が扉を開けると俺は執務室に入り、アレフさんは俺に声をかける。


「ミヤシタ殿、確か今日から診療所を開いたのではなかったのか?まあ、とりあえず座るがよい。お前はもう下がっていいぞ」

「はっ!」


 アレフさんの命で、兵士が執務室から退室し、俺はアレフさんに促されてソファーに座ると、改めてアレフさんが俺に尋ねてくる。


「それで診療所を開いたはずのミヤシタ殿が何故ここに来たかを聞かせてもらうか?」

「はい、午前の診療は終わり、午後の診療は夕方頃にしようと思っているんです」

「それで私に何の用なのだ?」

「実はこの空いた時間を往診の時間にしようと思っているんです。病気やケガで家から出られない方の情報を教えていただけたらと思いまして」


 俺の話を聞いて、アレフさんもしばらく考え、考えがまとまったのか、俺に対して返答をする。


「なるほど、二コラ様の件を考えるとミヤシタ殿が赴く必要もありという事だな」

「はい、特に長期で後遺症に悩んでいたら改めてリハビリ用のメニューを作る必要がありますからね」

「さすがに現段階でそういった所帯全ての情報を提供するわけにはいかんが、近場にそういった所帯があるから兵士を同行させるし行ってくるがよい」

「いいんですか?」


 俺の問いにアレフさんが返答をする。


「今回、兵士を同行させるのはミヤシタ殿が治せるのが二コラ様のみでない事を確かめる為だ。今回の件が上手くいきそうなら、私の権限でミヤシタ殿に他の所帯の情報も提供する」


 この世界も個人情報に厳しいようだが、ここで俺の信頼を得ないとな。

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