午後からの動き
診療所初日の患者さんはミミの簡単な魔法と包帯での治療のみで終了し、俺のスキルは特に必要なかった。
その後も患者さんは診療所へとやって来るが、俺のスキルが必要な程の後遺症が残った患者さんは現れなかった。
もちろんその間だって何もしていないわけじゃない、簡単な手当なら俺にもできるし、この診療所は人手が俺とミミしかいないから、事務的な事も慣れた俺がやっている。
いつかはミミにも覚えてもらいたいが、とりあえず今はミミには治療に専念してもらおう。
そうしている内に午前の診療が終わり、俺はミミに声をかける。
「なあ、ミミ、そろそろ休憩にして昼飯にしないか?」
「そうですね、朝ご飯はユーイチ様が用意して下さったので、お昼は私が用意しますね。キッチン借りますね」
「ああ頼むよ」
そう言ってミミはキッチンに向かい、料理の準備を始める。
何となくだが聖女見習いのミミが作るものだと薄味を覚悟していたがそれはいい意味で裏切られた。
ミミが用意した昼食は俺が朝用意したものとほぼ同じで、パンとサラダとスープであった。
スープを一口スプーンですくって口に入れてみたが、薄味とはいいがたく、とても口当たりが良かった。
「おいしいよ、ミミ。一体何をしたんだ?」
「何って、少しお塩を加えただけですよ。朝のユーイチ様のスープが美味しかったので、その味に近づけようと思いまして」
「そうだったのか」
なるほどさっきの俺のスープの味を参考にしてその味に近づくよう塩の量を調整していたのか。
そして俺は午後の診療予定についてミミに話した。
「さて昼からの診療だけど、俺のいた世界では夕方頃に診察を始める所が多かったんだがどう思う?」
「確かにお昼過ぎは働いていらっしゃる方が多いですし、それでもいいとは思いますが、それまで私達はどうすればいいんですか?」
「ちょっと考えたんだが、俺はこの時間を利用して往診をしようと思っている」
「それって私達が直接治療を必要されている方のところに赴くんですよね」
ミミはそう言うが、俺は違う考えを伝える。
「いや、今日はとりあえず後遺症が残った人がいたりしないかを確かめたい。ミミはここで留守番を頼む」
「お留守番ですか?」
「そうだ、急患に備えて欲しい。もし後遺症が残ってそうな人が来たら、ベッドで寝させておいてくれ、俺が戻り次第スキルで何とかするから」
「分かりました、ユーイチ様もお気をつけて」
ミミの言葉を受けて、俺は往診の為に身支度を行い、診療所をあとにした。




