表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/125

73:合否結果

 そこに鷹緒が帰ってきた。すかさず広樹が声をかける。

「早いな、鷹緒」

「打ち合わせだけだから。おう、おかえり。どうだった? 二次審査は」

 鷹緒は沙織を見て尋ねる。

「やるだけのことはやったつもり……」

 沙織の言葉に、鷹緒が微笑む。

「上出来じゃん。広樹、飯でも食いに行こうぜ」

「今、それ話してたところだよ」

 一同は近くの料理屋へと足を運んだ。沙織の労いの意味も含め、その日の夕食会は楽しいものとなった。


 終わってから、鷹緒は沙織を連れて、車で家へと戻っていった。

「部屋が隣ってのも、いいもんだな。送る手間が省ける」

 鷹緒が言う。

「うん……」

「疲れたろ? 今日はゆっくり寝ろよ」

「うん……」

 さすがに疲れきった様子の沙織に、鷹緒は優しく微笑む。沙織は部屋まで送ってもらうと、そのまま倒れるように眠ってしまった。

 鷹緒は沙織を送り届けると、自室へと入っていく。沙織の頑張りに、鷹緒も感心していた。自分にもいつかあったであろう情熱を、少しばかり沙織が思い出させてくれたような気がした。



 数日後。事務所に、シンデレラコンテスト二次審査合格通知が届いた。次は三次審査のカメラテストがある。そこには鷹緒もカメラマンの一人として、参加することになっていた。

「なんか嘘みたい。本当に三次審査まで行けるなんて……」

 事務所で、合格通知を見ながら沙織が言った。隣りには理恵がいて、同じように胸を撫で下ろしている。

「まだまだ、これからよ」

「はい……でも三次審査は鷹緒さんがいるんですよね? 私、鷹緒さんと同じ事務所だし、ひいきだって失格にならないのかな……」

 少し心配そうに、沙織が疑問をぶつける。理恵は軽く首を振った。

「それなら大丈夫よ。カメラマンは三人。一人はフリーカメラマンだけど、もう一人は大手プロダクション所属のカメラマンよ。二次審査に合格している子の中には、その大手プロ所属の子も何人かいるはずだもの。先方もわかっていることだし、何の問題もないわ。被写体がしっかりしていればね」

「それが問題なんですよ……みんな可愛い子ばっかりで、びっくりしました」

 二次審査の様子を思い出し、沙織が俯いて言う。

「天下のシンデレラコンテストだからね。でも大丈夫よ。沙織ちゃんだって負けてないんだから。美形なのは、家系なのかしら」

 理恵がそう言った時、鷹緒と助手の俊二が戻ってきた。

 帰るなり、鷹緒は沙織に気がつき、近付いていく。

「おう。受かったって? さすがじゃん。あとは最終審査まで一気だから、三次もその勢いで頑張れよ」

「うん!」

 真っ先に鷹緒が声をかけてくれたので、沙織は嬉しそうに返事をする。

「こんにちは……」

 その時、入口からそんな声が聞こえ、一同は振り向いた。

「あ、鷹緒さーん!」

 鷹緒に向かってそう叫んだのは、若い女性であった。派手なTシャツにGパン姿というラフな格好だが、そのふくよかな胸は隠しきれない。

「おまえ……!」

 鷹緒は、声にならないといった様子で驚いている。

「茜ちゃん!」

 それに続いて、理恵と牧が同時に叫んだ。数年前まで広樹の事務所にいた、鷹緒の元助手である、三崎茜みさきあかねだ。

 茜の父親は、カメラマンとしての鷹緒を育てたような、鷹緒の尊敬する写真家である。そんな人物の娘である茜は、数年前にアメリカでカメラマンを続ける父を追って、事務所を辞めたはずだった。

「あ、牧ちゃん、久しぶり。あれ? 理恵さんまで!」

 茜は驚いたように、鷹緒と理恵を交互に見つめる。

「ふうん……楽しそうですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ