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103/125

103:記者会見

『僕、ずっと考えてた。みんなに君との交際を公表しようって……君さえよければ、記者会見するよ。一緒じゃなくていい。僕がやる』

「ユウ……」

『正直言うと、公表したからどうってことじゃないと思うんだ。仕事にだって影響するかもしれない。だけど、このまま隠し通すよりは、僕は公表したい。隠れてコソコソ会うんじゃなくて、君とちゃんと向き合いたいんだ。公表すれば悪いこともあるかもしれないけど、少なくともマスコミはしばらくすれば引くと思うし、もう隠す必要もなくなる。君さえよければ、すぐにでも記者会見を開こうと思ってる』

 ユウの言葉に、沙織は泣けてきた。

「うん、私も……もう、隠れて会うのは嫌……」

 沙織はやっとそう口にした。

 隠れて会うのは当たり前だと思い込んでいた。ユウはみんなのユウであると思っていた。しかし、ユウから公表したいと言ってきたのは、沙織を愛してくれている証拠だと思う。

『じゃあ、今夜にでも記者会見を開くと思う。しばらくは沙織のところにもマスコミが行くと思うけど、沙織はあんまりマスコミ慣れしてないんだし、無理はしないで。またしばらくは会えなくなるかもしれないけど……すぐに会えるよ』

「うん……」

『じゃあ、また……』

「ユウ。ありがとう……」

『ううん。じゃあね』

 二人は静かに電話を切った。

 それから沙織は、自分の不甲斐なさを恥じた。自分はユウのように強くもない。実際、自分が記者会見などを出来る度量ではないことは、よくわかっている。また迷惑をかけ通しだった事務所の人たちは、一言も沙織を責めることなく、沙織を全力で支えてくれている。そんな中で沙織も、もっと成長しなければならないと、焦りを感じていた。


 その夜。夕方のニュースで、ユウの記者会見が映し出された。

「それでは、あの記事のことは本当なんですね?」

 記者の一人がそう尋ねた。ユウは頷くと、静かに口を開く。

「はい。書いてあることはデタラメばかりですが、僕は写真の女性とおつき合いさせていただいています」

「その女性とは、以前噂になったモデルで活躍されている、小澤沙織さんというのは、間違いないですか?」

「……そうです」

「何年くらいのおつき合いになりますか?」

「一年ちょっとだと思いますけど……」

「結婚は考えていらっしゃるのですか?」

「まだそこまでは……でも、真剣におつき合いさせていただいています」

 ユウはハッキリと記者の質問に答えていった。そんな中で、事務所の人間が割り込む。

「それでは、そろそろ時間のほうが押してまいりましたので、この辺で終わらせていただきたいと思います」

 その言葉に、ユウは立ち上がる。

 そんなユウに、記者がもう一つ質問をぶつける。

「ユウさん。ファンの方々に一言!」

「……僕もプライベートでは普通の男です。どうか応援してください。僕も仕事でみなさんにそれを返したいと思います」

 ユウはそう言うと、記者会見場を出ていった。

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